2025.07.20

CARS

ルノーが大統領専用車に返り咲き 「プレジテンシャル・ラファール」は職人技とセキュリティ技術の結晶

これが最新のフランス大統領専用車!

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ルノーのDセグメント級クーペSUV、「ラファール」がフランス大統領の専用車を務めることとなった。

過去の大統領専用車はPSA車両のイメージが強いが……


ベースとなるのは、ハイパー・ハイブリッドE-テック4x4 300hp。仏ギュイヤンクールのデザイン・センターが手がけたそれは、外観の識別点はトリコロールで彩ったグリルやフロント・ドアのバッジ、脱着式フラッグ・ホルダー程度にとどまる。しかし、ブルー・プレジデンスと銘打ったボディ・カラーは、熱吸収を10℃まで抑えるハイテク塗料に、トリコロールに輝くグリッターを組み合わせている。



とはいえ、中身は市販車から大きく改修。まずは装甲車両のエキスパートであるセンチゴン・フランス社が、外観を変えることなく防御性能を高めた。それに伴い、増加した重量を支えつつもスムースで安定した乗り心地を実現するようシャシーをチューニング。20インチのミシュラン製オール・ウェザー・タイヤや、4輪操舵を採用し、乗員保護性能や快適性、取り回しや安定性などを妥協なく追求した。



ソフト・クローズ化したドアから乗り込む後席は、走るオフィスとしても機能するよう、センター・コンソールなどを専用設計。内装には、ピレネー山脈で産出した大理石のトリムや、トリコロールのスティッチなど、フランスの職人技を活かした仕上げが施された。フロント・シートにはフランス共和国を示すイニシャル、後席には国の紋章であるリクトルの束桿が記されている。





ところで、フランスの大統領専用車といえば、有名なのはシャルル・ド・ゴールのシトロエンDS19だろう。1962年8月、テロリストの襲撃を受け、およそ20もの銃弾をその身に受けながら、ド・ゴールを含む乗員は無事。後輪を左右とも撃ち抜かれながら危機を脱し、FWDレイアウトの優位性を思わぬかたちで証明したこのDS19は、彼が永眠する村にあるド・ゴール記念館に展示されている。

ド・ゴールはそのほかにトラクシオン・アヴァンやDS21と、シトロエンを愛用。ド・ゴール主義者ジャック・シラクがシトロエンを選んだのも、その影響が大きいだろう。引退時に乗っていたのはC6だった。

最近では就任パレードで、フランソワ・オランドがDS5、エマニュエル・マクロンがDS7、ニコラ・サルコジがプジョー607ベースのオープン・リムジンであるパラディーヌを使用するなど、ステランティス(PSA)系モデルの印象が強い。



とはいえ、もちろんルノーも選定されている。フランソワ・ミッテランは、30や25、サフランを乗り継いだ。また、遡れば1920年にポール・デシャネルが40CV、1936年にアルベール・ルブランがレナステラに乗るなど、歴史は古い。

2025年5月にはBEVの「DS N°8」が発表されていることからもわかるように、フランス大統領の専用車は必ずしも一車種に限られていない。これまでの例を見る限り、エリゼ宮の大統領府が管轄する複数の車両を、TPOや大統領の意向に応じて使い分けているようだ。



はたして今後、マクロンとともに晴れ舞台へ姿を見せる機会を多く得るのは、はたしてルノーかDSか、それともさらなる大統領専用車が今後も登場するのだろうか。

文=関 耕一郎

(ENGINE Webオリジナル)
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