2025.08.05

CARS

今やカイエンあってこそのポルシェだ! 911じゃないほうのポルシェにモータージャーナリストの高平高輝がイッキ乗り!!

タイカン、カイエン、パナメーラの注目グレード3台に試乗。モータージャーナリストの高平高輝がリポートする。

全ての画像を見る

無理を通せばカイエンになる

初代カイエン・ターボに裏磐梯で乗って怒涛のパフォーマンスに圧倒されたのは、もう20年以上も前のことだ。それでも当時は乗り心地や各部のフィニッシュなど、明らかな短所も見て取れた。ポルシェに本当に必要なクルマなのだろうか、と完全には腑に落ちなかったことを思い出す。だがその後はご存知の通り、今やカイエンあってこそのポルシェである。

advertisement




2023年4月の上海ショーでお披露目された新型カイエンは、通算3代目のアップデート版だが、外観はともかく中身は大きく生まれ変わった。これまで通りボディは通常タイプとクーペ・ボディの2種類。パワートレインはガソリン・ターボとプラグイン・ハイブリッドだが、グレードによって何種類も用意されている。以前は自然吸気エンジン車の最上級グレードに位置づけられたのがGTSグレードだったが、ポルシェのパワーユニットがほぼすべてターボ付きとなった今は、豪華高性能モデル、という立ち位置だ。要するに昨年春に国内発表された日本仕様のカイエンGTSは、純エンジン車の最高性能モデルで、試乗車はそのクーペ版である。

全体的に明るくクリーンなタイカンとは対照的な、クラシカルでスポーティな雰囲気が漂うカイエンGTSクーペ。基本黒一色のインストゥルメント・パネルにナローの911などを偲ばせる格子柄のレザー/ファブリックのシート(ヒーター内蔵)を組み合わせている。

よりスクエアでシャープになったヘッドライトやボンネットまわりを除けば、ほとんど変わっていないように見えるエクステリアとは対照的に、ダッシュボードの眺めは大きく変更された。メーターもセンターディスプレイもすべてBEVのタイカン同様、フルデジタル化され(助手席前ディスプレイを装備可能)、シフト・セレクターもセンター・コンソールではなく、ダッシュに小型のものが装備されている。

ドライバー視点で撮影しているため分かりにくいが、助手席前方にもディスプレイが備わっている。

GTSのパワーユニットは従来通りの4リッターV8ツインターボだが、50 0psと6 6 0Nmへ、40psと20Nmもパワーアップされた。2・9リッターV6ツインターボから同じく4リッターV8ツインターボに換装された新型カイエンS(474ps/600Nm)との差は大きくないとはいえ、長幼の序は崩れていない。

GTSの0-100km/h加速は4.4秒、最高速は275km/hと発表されており(従来型は4.5秒と270km/h)、4.7秒と273km/hというその下のSに対しても、わずかだがちゃんと差が付けられている。ポルシェのラインナップのヒエラルキーは絶対である。

新型カイエンもパナメーラ同様に新しいPASMに変更。加えてGTSはよりスポーティなサスペンションの仕立てな上、シャシー制御系のオプションは満載だ。おかげで2260kgもの車重と強力なそのパワーをまったく持て余すことがない。しかも22インチという巨大なタイヤを履きながら、野蛮なハーシュネスや突き上げを感じさせないのはこれまで通りで、ビシッと引き締まった感覚はスピードが増すにつれてさらに明確になっていく。ハンドリングはこれまでに増して文句なし。巨体を道幅ぎりぎりに寄せてもまったく不安がない正確なステアリング、うねりのあるコーナーを突破してもまるで揺るがないスタビリティ、例によって強力無比なブレーキなど、やはりさすがと唸らざるを得ない。

タイカン、パナメーラ、カイエンの今回試乗した上位モデルたちは、いずれも当然高価ではあるが、どれもポルシェが作る高性能車とはこういうものだ、と納得させられる。本当ならスポーツカーと呼ぶのは無理筋なのに、911同様に、意地と技術でここまで引き上げることができるという見本だ。

もはや気軽に“911じゃないほう”のモデル、なんて言えないのである。

文=高平高輝 写真=阿部昌也

前篇【0-100km/h加速2.2秒のタイカンターボ・クロスツーリスモ ローンチ・コントロールは軽々しく試さない方がいい】では、満を持して2019年に登場したスーパーEV、タイカン4、4S、そしてターボという、すべて前後アクスルにそれぞれ一基のモーターを搭載する4WDに試乗した。



■ポルシェ・タイカン・ターボ・クロスツーリスモ
駆動方式 前後2モーター4輪駆動  
全長×全幅×全高 4974×1990×1988mm  
ホイールベース 2904mm  
トレッド(前/後) 1710/1672mm  
車両重量(前軸重量:後軸重量) 2390kg(1170kg:1220kg)  
モーター(エンジン)形式 永久磁石同期モーター  
電池容量(排気量) 105kWh  
最高出力 884ps  
最大トルク 890Nm  
トランスミッション(前/後) 1段/2段  
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+エア  
サスペンション(後) マルチリンク+エア  
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク(炭素繊維複合素材製)  
タイヤ(前/後) 265/35R21/305/30R21  
車両本体価格(OP装着時) 2308万円(3121万円)  

■カイエンGTSクーペ
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動  
全長×全幅×全高 4930×1989×1648mm  
ホイールベース 2896mm  
トレッド(前/後) N/A  
車両重量(前軸重量:後軸重量) 2260kg(1270kg:990kg)  
モーター(エンジン)形式 水冷V型8気筒DOHCターボ  
電池容量(排気量) 3996cc  
最高出力 500ps/6800rpm  
最大トルク 660Nm/2100-4500rpm  
トランスミッション(前/後) 8段AT  
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+エア  
サスペンション(後) マルチリンク+エア  
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク  
タイヤ(前/後) 285/40ZR22/315/35ZR22  
車両本体価格(OP装着時) 1923万円(2240万6000円)  

■パナメーラGTS
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動  
全長×全幅×全高 5052×1937×1415mm  
ホイールベース 2950mm  
トレッド(前/後) 1666/1639mm  
車両重量(前軸重量:後軸重量) 2130kg(1130kg:1000kg)  
モーター(エンジン)形式 水冷V型8気筒DOHCターボ  
電池容量(排気量) 3996cc  
最高出力 500ps/6500rpm  
最大トルク 660Nm/2100-4000rpm  
トランスミッション(前/後) 8段デュアルクラッチ式自動MT  
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン+エア  
サスペンション(後) マルチリンク+エア  
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク(炭素繊維複合素材製)  
タイヤ(前/後) 275/35ZR21/325/30ZR21  
車両本体価格(OP装着時) 2267万円(3001万7000円)  

(ENGINE2025年6月号)
タグ:

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement

advertisement

PICK UP

advertisement