2025年5月に英ロータスは2座ミドシップ・スポーツカー、エミーラの2026年モデルを公開。このたびその日本仕様の詳細が発表された。
イメージ・リーダーがアップデート
完全電動化を明言し、エミーラを最後の内燃エンジン搭載車に、といったんはアナウンスしていたロータス。だが、純バッテリー・カーの普及速度が想定に比べてずっと遅いこと、さらにはトランプ関税によるダメージも大きいようで、SUVのエレトレやサルーンのエメヤにハイブリッド・ユニットが搭載されるという噂も出ている。

現行ロータスにおけるフラッグシップはハイパー・カーのエヴァイヤだが、台数限定の特殊なモデルということもあり、事実上のイメージ・リーダーを担っているのはエミーラということになる。

そんな重要な立ち位置にあるエミーラ。2026年モデルは非常に地道かつ丁寧なアップデートを受けた印象を受ける。
注目は新たに加わったグレードのV6 SEだ。トヨタ製の3.5リットルV6搭載モデルで、エミーラのラインナップ中では最上位に位置する。変速機は6段MTないしは6段ATで、このパワートレインそのものは先代のエヴォーラから踏襲したもの。ただし今回の改良では、マニュアル・ギアボックスのマウントに新たに圧縮式のタイプを導入。シフト・フィールの改善を行ったという。

同時に、ダンパーの最適なキャリブレーションと、アライメントを再セッティング。ロータスらしい素直なハンドリングとしなやかな足さばきがもたらす快適な乗り心地の両立を実現した。

V6 SEは標準ボディ・カラーはでジンク・グレーとなる。専用の V6 SEエンブム、拡大したブラック・パック、20 インチの鍛造アルミ・ホイール(8種)、4つの仕上げから選択可能なブレーキ・キャリパー(標準は赤)、アルカンターラ仕上げのインテリアやスポーツ・ペダルなどが特別装備となる。
加えて15 色の外装色と7 種の内装テーマを設定。きめ細かなパーソナライゼーションに対応する。
価格は2085万6000円〜で、トヨタV6搭載モデルはこのV6 SEのみとなる。

いっぽう、AMG製の2リットル直列4気筒ターボと8段のデュアルクラッチ式自動MTを搭載するモデルたちに関しても、アップデートを行っている。具体的には、冷却システム、エアコン制御システム、デュアルクラッチ式変速機の3カ所だ。
クーリング系は冷却水のラインの配管取り回しを変更し最適化。トランスミッションのオイル・クーラーとメイン・ラジエーターへの冷却水の流れが改善されている。冷却性能の向上と、車両重量の軽量化に繋がったという。
空調の制御は高温時でもインテリアの温度を安定できるよう再調整。サーモスタットの開弁温度は従来の 65度から 75度となり、過酷な条件下でも暖房性能と走行性能が引き上げている。
変速機についても再調整され、より素早い変速速度と滑らかさを実現。エミーラとドライバーの一体感がさらに高められたという。
安全面では、先進運転支援システム(ADAS)が標準装備化。これには自動緊急ブレーキ(AEB)、 車線逸脱警報、 ブラインド・スポット警告、 交通標識認識(TSR)、運転手疲労検知が含まれる。さらに「拡張コ・ドライバーパック(Extended Co-Driver Pack)」を設定。このドライバーをより強力に補助するオプションには、アダプティブ・クルーズ・コントロール、後方交差車両警告、ドア開放警告、ハイ・ビーム・アシスト機能が追加される。

さらにV6モデル、4気筒モデルに共通の、新たなSEグレード専用のデザイン・オプション、“レーシングライン”も加わった。ボディ下部のイエロー、レッド、またはシルバーのピン・ストライプが特徴で、ブレーキ・キャリパーのカラー、ドア・ミラーのカバーとともにトータルでコーディネイトされる。

さらに、アクセント・カラーがあしらわれたレーシングライン専用エンブレム、ハイグロスのブラック・ホイール、そしてブラック&シルバーの外装ロータス・エンブレムを装備。

加えてインテリアも特別仕立てとなり、アクセント・カラーによるスティッチと、専用のエンブレムを採用する。
価格はAMG製2リットル直列4気筒搭載モデルのターボ、ターボSE、ターボSEレーシングラインがそれぞれ1822万7000円〜、1886万5000円〜、1928万3000円〜、トヨタ製3.5リットルV6搭載モデルのV6 SEレーシングラインが2127万4000円〜。

完全電動化モデルへのハイブリッド・ユニットの噂に加え、エミーラのさらなる延命も検討されているのか、なんとV8ユニット搭載の噂も聞こえてきている。まるでかつてのエスプリの再来だ。試行錯誤が続くロータスだが、彼らのきめ細かなアップデート能力には定評がある。厳しい市況を考えると、当初予定していたニュー・モデルとなる完全電動の2座スポーツカーの市販化はなかなか厳しいだろう。そちらを推し進めるだけでなく、エミーラがより長く改良され、エリーゼやエキシージのような、真の意味でのロータスを代表されるモデルとなっていくことを期待したい。
文=上田純一郎(本誌)
(ENGINE Webオリジナル)