2025.10.19

CARS

イタリア製5リッター V型12気筒ガソリン・エンジンを水素で走らせる! 鳴り響く快音 これがEVではないスーパーカーのもうひとつの未来だ!!【動画あり】

奥山清行氏自らのドライブで、F61H Birdcageの走行シーンを披露した。マフラーからは水滴を排出するが、サウンドはV型12気筒の快音そのものだった。

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KEN OKUYAMA DESIGNが、来る12月のF1アブダビGPでのワールド・プレミアを前に1台のワンオフ・カーを披露した。単なる新型車発表ではない、奥山氏が秘めた想いとは?

世界的工業デザイナー、奥山清行氏率いるKEN OKUYAMA DESIGNは9月1日、水素燃料車のワンオフ・モデル「F61HBirdcage」の国内プレビューを袖ヶ浦フォレスト・レースウェイで開催した。





奥山氏はプレゼンテーションの冒頭で「今日伝えたいことはたった一つだけ」だと話す。それは内燃機関の自動車文化を残し、次世代に継ぐための提案である。

奥山氏は電気自動車について「効率が良く、加速も素晴らしい」と評価しながらも「リチウムイオン電池も全固体電池も、自動車で使えるのはおおよそ10年間。その先に必ず寿命がやってくる」と指摘する。さらに、バッテリーパックは車種ごとに形状や冷却システムなどの仕様が異なる専用設計であることから、メーカーが供給を続けない限り、たとえ100年間所有したいと思っても、そのクルマは10年で寿命を迎えてしまうという。

水素は燃焼速度が速くトルクが低下する傾向にあるため、水素燃料化は大排気量エンジンの方が向いているそうだ。5.0リッターのV12水素エンジンは、300hp/7000rpm・31.3kgm/5800rpmを発生。

航続距離は現状で約50kmだが、水素タンクを追加で搭載する余地は十分にあるという。大手自動車メーカーが開発を進める水素燃料車は液体水素を筒内直接噴射するのに対し、F61Hは気体水素をポート噴射するため技術的ハードルが低く、他の車両にも広く適応できるのが特徴である。

そこで奥山氏が注目したのが、水素を直接燃焼させる方法だ。「F61H」が搭載するエンジンは「イタリア製5リッター V型12気筒ガソリン・エンジンのインジェクターをボルグワーナー製に変更。ガソリンタンクは韓国・イルジン製の水素タンクに載せ替え、燃料ラインを引き直し、マネジメント・システムはモーテックに書き換えた」と説明する。そこで強調したのは「使用するパーツはすべて、誰でも購入できる」という点だ。多少のノウハウは必要だが、同じ手法によりあらゆるガソリン車の水素燃料化が可能だという。



奥山氏は「私たちが次の世代に残したいと思うスーパーカーは、20世紀に人類が創り出した文化遺産である」と語る一方で「今後、使えるガソリンの量は徐々に減り、金額も高くなる。スーパーカーを所有するクラスの富裕層は、大排気量ガソリン・エンジンを動かすことの社会的イメージも意識し始めている」とも分析。つまり「F61H」の発表を通じて主張したい最大のメッセージは「私たちが大好きな素晴らしいスーパーカーを、地球環境に配慮しながら次世代に継ぐための方法が実現できた」ということなのだ。そのうえ「大手メーカーではない、社員50人程度の中小企業でも可能なシンプルな方法であること」が重要だと述べた。「エンジンの音や振動。自分でシフトする感覚。これらは確実に次世代に残せます。これが僕の夢、もう現実です。電気も素晴らしい。でも、それが唯一ではない。こんな方法もあるんですよ、というのを広めていきたいと思っています」

文=村山雄哉 (ENGINE編集部) 写真=KEN OKUYAMA DESIGN



(ENGINE2025年11月号)

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