2025.11.01

CARS

ダイハツの注目株は「コペン」だけじゃない!「ミゼットX」も次期「タント」もいるし「コペン」にも搭載されるかもしれない新型ハイブリッドも!【ジャパン・モビリティ・ショー2025】

コペンもミゼットもイイけど、ダイハツのダイハツメイの本命はこれだ!

全ての画像を見る
なんと後輪駆動になるという次期型コペンや、愛らしい「ミゼットX」、AI搭載というトヨタのKAYOIBAKO(カヨイバコ)シリーズに加わった「KAYOIBAKO-K」などのコンセプト群に目が行きがちのジャパン・モビリティ・ショー(以下JMS)2025のダイハツ・ブース。確かにどれもこれも気になる存在だけど、そのいっぽう詳しい解説もなく、しれっと飾られていた一基のパワーユニットと、それを搭載するであろう一台も、見た目が華やかなスタリング重視のコンセプトだらけだったJMS会場内において、地味だけど近未来の自分たちの生活に密着した、とても注目すべき存在だった。

デザインはすごくいいのだけれど……


事前に公開された4輪のコンセプト・カー「ミゼットX」と、前回のJMSで公開されていた「KAYOIBAKO」のシリーズ展開、そして隠し球としての次期型コペンたる「K-OPEN」までは、僕の中ではある程度想定内のものだった。けれどもう1台の隠し球である「K-VISION」コンセプトと、その前に簡素な説明用パネルとともに置かれていた一基のエンジンは、けっこうなサプライズだった。



とはいえ次期型コペンの出展も未知数だったから、「ミゼットX」の存在を知った時は、現行コペンと入れ替わるように市販型ミゼットが近々登場するのかもなぁ、と考えてもいた。



かつてのミゼットIIの、人の手を用いた小規模生産ラインで、いまのコペンは造られているからだ。



しかし「ミゼットX」はダイハツ・デザイン部の田辺竜司さんによれば、現状の軽自動車のレギュレーションでは、衝突安全基準などにより、あのデザインと中央+左右の3座レイアウトのままでは残念ながら日本の公道を走るものとしては成り立たないそうだ。



「ミゼットX」を走らせるには、欧州の街中を走り、速度制限があるものの、基本免許が不要でドライバーの年齢制限も引き下げられているシトロエン・アミのような別の枠組みとして、レギュレーションや免許制度も併せて考えなけれればいけない、という。そして、そうした点において「個人的にはレクサスの「LSマイクロ・コンセプト」や「トヨタ・コムス」といったような各ブランドと一緒に、グループ全体のアライアンスで考えないと……」とのことである。





初代ミゼット同様の、乗り降りのしやすさを狙った後ろ側ヒンジのドアだったり、親が子供を幼稚園や保育園に乗せて行く時に、目線が電動アシスト自転車とさほど変わらない感覚で乗ってもらえるようなシート・レイアウトだったり、フロント・ウインドウ両端の下側を広げて視界を確保していたり、いろいろとかなり凝っている上でこの愛らしさを成立させている意欲作なのに、非常に残念である。せめて「ミゼットX」のデザイン・テーマを少しでも用いた軽トラック、出してくれないかなぁ……。

ダイハツメイのパワートレイン


田辺さんは「コペンやミゼットはダイハツ内でもかなり尖った存在なんですよ」というので、それ以外にはどうなんですか? と尋ねると「ご紹介しますよ」といって笑みを浮かべ、電動パワートレイン開発部の平野佑亮さんのもとへ案内してくれた。ちょうどブースのいちばん右手の、いちばん最初に目に付くところに一基のパワートレインが置いてあり、その後ろに「K-VISION」と呼ばれる片側スライド・ドアのスクエアな軽乗用車のコンセプト・カーが展示されている。

実はこのペアこそが、もともとダイハツとしてのイチオシだったらしい。



「K-VISION」はヘッドライトLEDなどを次世代のハイゼットと想定される「KAYOIBAKO(カヨイバコ)K」のデザインと共用した、かなり実現化が近い状態のコンセプト・カーだ。公開された動画などでは“みんなの次世代軽自動車”であり“軽自動車のダイハツメイ”と紹介されている。



両側スライド・ドアで片側センター・ピラーレス(運転席側はピラーあり、助手席側はスライド内にピラー内蔵)の背高ワゴンという構造と、ダイハツのモデルチェンジのタイミングから推測すれば、これが次期型「タント」では? ということは容易に思いつく。けれど、肝はそこではないらしい。



注目すべきは「K-VISION」の前に置かれたe-SMART HYBRID(イー・スマート・ハイブリッド)というパワートレインだ。ダイハツ・ロッキーで先行していたシリーズ・ハイブリッド式、つまりエンジンは発電のみで、動力としての結合はまったくない、純粋に100%モーターで駆動するシステムの第二世代型である。

平野さんによればこのパワーユニットこそ「“ダイハツメイ”の具体的な一例」とのこと。もっとアピールしたほうがいいですよ、と僕は言ったのだが、実際まだ詳細を発表しておらず、ショー会場でのみ、案内をしているという。「おもろいこと、させてもらってます」とわざと関西弁で彼は答えてくれた。

驚きはなんといってもサイズである。直列3気筒のKF型エンジンの横に、電力変換を担うPCU(パワー・コントロール・ユニット)と2つのモーターが、とてもコンパクトに収まっている。現状の軽自動車のエンジン・ルーム内にそのまま収まるんじゃないですか? と驚くと「そうです。そこまでちっちゃくしました。まさに、軽の狭いエンジン・ルームに詰め込んでやったぞ! という思いです」とうれしそうに笑う。





「シリーズ・ハイブリッドとして考えれば「ロッキー」と同じなんですが、新開発となります。目的はサイズと価格を安価に抑えるため。PCUは富士電機さんとの共同開発、モーターはダイハツ内での開発です」



選択肢としてISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター=スターター兼オルタネーターとアシスト・モーター)によるマイルド・ハイブリッド化はなかったのだろうか?

「なかったですね。どうしても視野に入ってくるのは2030年の燃費基準です。今とは一段階も二段階も高いものに変わりますので、クリアしようとすると我々の選択肢の中ではISGでは厳しいだろう、という判断です」

では、完全にエンジンを発電専用のものへ切り替えることも考えなかったのだろうか?

「それも選択肢の一つなんですが、我々のお客様は、安価な従来のクルマを使いたい、という方が多くいらっしゃる。そうした需要に対し、これまで通りに供給することを考えると、発電専用にしてコストがかかってしまうより、既存のKF型エンジンをハイブリッド用として、極力お金をかけずに燃焼効率を上げるなどリファインする形で使います」



ハイブリッド・ユニット自体の重さに関しては、入れ替わるCVTと比べれば重くはなるが、ロッキーのものよりは軽いという。あとはバッテリー(ロッキーは後席床下に配置)をどれだけ搭載するかだが、まだここは未確定のようだ。

「軽自動車として必要十分な性能を担保できるようなバッテリーのサイズとモーターの出力を予定しています。容量は、具体的な数値は難しいですが、ロッキーに搭載していたサイズに近いぐらいあったらいいな、と思っています」

最終的な燃費目標はどのくらいだろう。

「従来のクルマ、タント、ムーブなどのD-CVT搭載車に比べて20%くらいの燃費向上です」

現行の自然吸気で2WDの「タント」でも実燃費に近いWLTCモードで22.7km/リットルだから、20%改善と言うことは27km/リットル台になる。

「お客様は今まで通りガソリンを入れて走るだけで何も変わりませんし、燃費は20%良くなる。その上外部への給電も可能なんです。これはISGによるハイブリッドではできないことですね。災害時にもガソリンさえ補給できれば圧倒的に強いですし、条例でアイドリング・ストップが禁止なところもありますが、それをクリアできるならアウトドアやレジャーでも電気を使えます」



数値的には、1回ガソリンをフルタンクにすれば、1時間あたり400Wの給電をした場合で、燃料警告灯が付くまでの丸4日間使うことができるそうだ。

話の終盤、平野さんは“おもろい”ことをもう1つ、教えてくれた。



「あと、FR車への搭載バージョン、つまり縦置きなども考えていないわけではありません。ただ、コペンの場合はエンジン・ルームのスペースがめちゃくちゃ狭いんです。現状の「K-OPENランニング・プロト」はかなりむりやり入れています。我々中の人間が見ても“むちゃくちゃくちゃしよるなぁ”というくらい(笑)」

おもろいダイハツからの、目立っているのと目立っていない、ダイハツメイたち。JMS2025において特に注目すべき存在です。

文・写真=上田純一郎(本誌) 写真=望月浩彦/ダイハツ

◆ジャパン・モビリティ・ショー2025最新情報はこちら!

(ENGINE Webオリジナル)

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement