2025.11.10

CARS

「マセラティ・グレカーレ」のエントリー・モデル“エッセンツァ”はシックな装いながら迫力もある通好みな1台

立ち寄った諏訪大社にて。シックな内外装の仕立てはこうしたシーンにもよく似合う。

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前回マセラティのSUV、グレカーレに乗ったのは上陸直後の2023年夏ごろだったという編集部ウエダ。おろしたての漆黒のグレカーレとともに600kmほど走って戻ってきた彼の表情は、試乗前と打って変わって喜々としたものだった。

本質的な迫力がある


マセラティのエントリーSUVであるグレカーレの中でも、ボディ・カラーやオプションの選択肢を減らすことで、1000万円を切るプライスを実現したという“エッセンツァ”。

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そんな“エッセンツァ”とはじめて対面したのは、都内のビルの地下駐車場。エレベーターを降り、ホールから駐車場に入ると、すぐ目についた。周囲の真っ赤なグレカーレやグレーのグランカブリオと比べても、やけに迫力というか、威圧感がある。クルマの中も外も、かなりの範囲を漆黒の部分が占めていたからだ。

A4用紙一枚に簡単にまとめられたスペック・シートによれば、外装色はネロ・テンペスタ(=Nero Tempesta)、つまり黒い嵐だという。名は体を表す、とはいうけれど、妙にしっくりくる感じだ。



それにしても、もうちょっと色気のある色だったらなぁ、と思わずにはいられなかった。撮影日の明日の天気予報は曇りから雨となっている。嵐とまではならないだろうが、雨の中の漆黒のマセラティでは、さぞ写真映えしないだろう。せめて以前乗ったことのあるブロンズだとか、パール・ピンクのようなカラフルさが欲しい。



とはいえ“エッセンツァ(=Essenza)”とは、イタリア語で“本質”を意味する言葉だ。実際レザー・シートやシート・ヒーターなどを備えつつも、内外装色の選択肢を抑えることで価格を抑えたグレードだという。色味に左右されず、本質的な部分で判断せよ、ということか。メタリック塗装となるネロ・テンペスタ分の21万円が付加されているだけで、オプションの類いは一切付いてないのも、そういう意図かと推測できる。

それにグレカーレは、マセラティの属するステランティス・グループ内で開発された、ジョルジオ・プラットフォームの採用車両でもある。後輪駆動が基本で4WDの設定もあり、縦置きでディーゼルから500馬力を越えるV6ターボまでを許容する、もともとはアルファ・ロメオの北米進出用スペシャルだ。

レヴァンテやギブリ、クワトロポルテなどのマセラティ独自シャシーのM156/157がかなり歳月を重ねていたことや、コスト削減のために、アルファだけとならずマセラティにも与えられたという経緯がある。グレカーレに続いてグランツトゥーリズモやグランカブリオも採用。つまり骨格もなかなか素性はいい、というわけだ。

乗り込んで見ると、見事にインテリアも真っ黒だ。



シートも、シート・ベルトも、カーペットもすべて黒。



センター・コンソールやドアのトリムについてはオープン・ポア・ラディカ・ウッド(=Open Pore Radica Wood)と書いてある。薄墨が塗られているかのようで、木目はうっすらと見えるが、やっぱり黒い。

とはいえあちこちに入る白のスティッチと、横方向のラインが基調となるエア・アウトレット・ダクトのシルバーと相まって、シンプルだけど、地味じゃない。



意匠は凝っているけど、無駄なものや余計な装飾はない。デジタル表示になるのは少々興ざめだけど、インパネの中央にはマセラティお約束の時計もちゃんとある。



やや色気が足りないようにも思えたけれど、こういう仕立てこそが、本来のイタリアン・シックというべきなのかもしれない。



ステアリングはジュリアやステルヴィオのような明確なD字型ではなく、より真円に近い。右ハンドルとはいえ、シートとペダルの相互関係はよくフットレストもけっこう大きい。適切なドライビング・ポジションがすっと出る。ステアリング・コラム固定式の巨大なシフト・パドルはいかにも強固そうな見た目の印象通り、カチリカチリと硬質な操作感が指先に伝わってくる。

駐車場出口のゲートは狭く、その後もぐるぐると狭いカーブを回っていかなければならないが、取り回しはさほど苦にならない。鼻先は見えないが、おおよそ全長4.85m、全幅1.95mものおおがらなサイズとは、ちょっと思えないくらい気楽にすいすいと動かせる。ステアリングの操舵感覚は軽めだが、とはいえ急すぎることもなく、ほどよい感じだ。



2年前とイメージはさほど変わらない。以前この“エッセンツァ”のベースの“GT”というグレードに乗った時も、内外のスタイリングや大いに色使いには感銘を受けたことをよく憶えている。そうだそうだ、こういう感じだった、と思い出したのは、車体がとにかく強固でガッチリしてることと、都内の荒れた道や継ぎ目の多い高速道路では足の仕立てがややラバリーで、路面のコンディションに対して素直だという印象だった。

今回の試乗車はそれから数年を経て生産されているはずだから、足の仕立ては基本的にこうした方向性なのだろう。



ただし試乗車はおろしたてのほやほやで、積算計の数字はまだ1000kmちょっとだし、足元を見れば、以前乗った20インチ仕様だった“GT”に比べ、ずっとタイヤは穏やかなはずの19インチの、しかもM+Sタイヤである。見た目のインパクトや華やかさより、オールラウンダーな方向性を狙っているのだろう。ここも、車名にちなんで本質的なクルマの良さを引き出そうという意図が感じられる。これはもう少し乗ってみないと、路面との相性はちょっと判断はできない。

まもなく雨が落ちてきたのでそうそうに自宅の車庫へしまい込み、翌日、早朝から中央道で北へ向かうことにした。東方面も西方面もなかなかの勢いで雨雲が近づいてきそうだったけれど、北方面だけはその進み具合が、ちょっとだけゆっくりだったからだ。

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