心踊るホリデーシーズン。この秋冬は、逸話あふれる一生モノの腕時計を、大切な人や自分への贈り物として選びませんか。“時計愛&好!”を持って任ずるENGINE時計委員会9名が、知見・体験や思い入れをふまえて「推し時計の歴史やストーリー」、「時計と自信の物語(ナラティブ)」エモーショナルに紡ぎます!
今回取り上げるのは、ヴァシュロン・コンスタンタン「フィフティーシックス・デイ/デイト」。創業270年。世界で最も歴史ある進化するメゾンのひとつの象徴。 服装を選ばず、日常使いにも好適だ。
名門メゾンのマイルストーン
メゾンの創業270周年を祝す、パリのルーヴル美術館とジュネーブの本社ファクトリーでの記念イベントに参加した。そこでは絢爛たる芸術と文化を後世に伝える意思とともに、時計作りに携わる一人ひとりが伝統を担い、革新していく矜持を明らかにしたのだった。その歴史から見れば、「フィフティーシックス」はまだ若造といったところか。しかしその佇まいからは、ブランド初の自動巻き式を搭載した気概が伝わる。こうした一つひとつのモデルがマイルストーンとなり、メゾンはさらに先へと前進していくのだろう。それをいま手にするということは、その歩みを共に体験するということだ。クラシックとモダンを融合したスタイルはそんな未来を感じさせる。
(柴田 充/時計ライター)
ロンドンで魅力を堪能した
「フィフティーシックス」がデビューしたのは2018年。そのローンチイベントがロンドンで開催され、現地に招かれた。会場はあのアビイロード・スタジオ(もちろん例の横断歩道写真は撮りました)。その中にある大きな録音スタジオで行われた盛大なパーティに参加したのは、今でもいい思い出だ。ロンドン滞在中はフィフティーシックスが貸与され、数日間ずっと身に着けていた。40mm径のサイズ感がよく腕馴染みに優れ、ドレッシーすぎず、さりとてカジュアルすぎないレトロモダンなデザインは、昼のライダーズジャケットから夜のタキシードまでオールマイティにこなしてくれた。日常使いにいい時計に間違いない。それがロンドンでの発見だった。
(篠田哲生/時計ジャーナリスト)
フィフティーシックス・デイ/デイト
「フィフティーシックス」は、ヴァシュロン・コンスタンタンが1956年に発表した時計から想を得て、当時のラグに用いられた特徴的なマルタ十字の4枝を再解釈して現代のケースにデザイン。このデイ/デイトのダイアルは、指針式の曜日表示(9時位置)と日付表示(3時位置)をシンメトリーに配し、6時位置にパワーリザーブ表示を加える。二重のミニッツトラックや、ゴールド製のアラビア数字とバーインデックスも、シルバートーンのダイアルを美しく引き立てる。自動巻き。ピンクゴールド、ケース直径40mm、3気圧防水。717万2000円。
問い合わせ=ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755
写真=奥山栄一
(ENGINE2026年1月号)