モーガンとBMWの技術的パートナーシップが、25周年の節目を迎えた。それを祝し、一堂に会したのはBMWのパワーユニットを搭載する14台のモーガンだ。
すべてはあの大胆なスタイリングの「エアロ8」からはじまった!
最初の組み合わせは、2000年のジュネーブ・ショーで公開された「エアロ8」で、搭載したのはM62型4.4リットルV8。


続く「エアロ8」のシリーズ2/3、そして「エアロマックス」に採用された4.8リットルV8のN62型は、その後のエアロ系モデルと、「プラス8」にも供給された。


2018年には50台限定の50thアニバーサリーを最後に、ピッカーズリー・ロード工場で量産される8気筒モデルは幕を閉じる。ただし、レースを想定して開発され、完成を見ずにいた9台の「プラス8 GTR」が、2021年に製造を再開。モーガン史上最強の380psに強化されたN62型を搭載した。
その後は、B58型3リットル直6と、B48型2リットル直4、ふたつのターボ・ユニットが主力の座に就く。まずは2019年の「プラス・シックス」で、これがモーガン初のターボ車となった。完全内製のCXプラットフォームは、従来のアルミ・アーキテクチャーに対し2倍のねじり剛性を発揮しつつ、重量は100kg未満。先進のパフォーマンスと洗練度、そしてタイムレスなシルエットを両立したモデルが誕生した。

このB58型は、2024年に発表されたピニンファリーナとの共作「ミッドサマー」にも搭載。チーク材をふんだんに使ったキャビンの前には、控えめなエアロ・スクリーンを備えるのみ。風とシルキーシックスのサウンドを存分に浴びながらドライブするバルケッタは50台限定で、2026年の早い時期に生産完了する予定だ。

2020年には、B48型を積む「プラス・フォー」もデビューする。75年の歴史を持つ4気筒モデルの最新版で、最高出力は258ps。8段AT のみだった「プラス・シックス」に対し、こちらは6段MTも設定した。速さを追求するというより、峠を攻めたり、ゆったり日常使いしたりといった、より身近なモーガンを目指した「プラス・フォー」に、適度なパワーで扱いやすいB48は適任といえる。
また2025年「プラス・フォー」はアメリカ市場へも投入された。2000年代初頭以来、モーガンの四輪モデルが正規導入されるのは初めてだ。25年以上前にアメリカで販売されていたクルマのレプリカという扱いで認可を受けているが、州ごとに異なる規制に対応するため、BMWの協力を得て、低排ガス仕様のB46型を積むバージョンを開発した。

こうして2020年以降、モーガンの四輪モデルはすべてパワードby BMWとなっており、そこには今年披露された最新作の「スーパー・スポーツ」も含まれる。昔ながらのフォルムを現代解釈したボディの下には、進化版プラットフォームのCXVと、340psを発揮するB58型を秘め、1170kgのウェイトを3.9秒で100km/hまで加速させる。
今回の14台にはこうした市販車のほか、2台のレーシング・カーが含まれる。1台は2004年の「エアロ8 LMGT」で、その名のとおりル・マン参戦マシン。「エアロ8」はこのほか、GT3マシンで欧州選手権なども戦っている。

もう1台は2020年に登場した「プラス・フォー」のレース仕様。モータスポーツ人材の育成コースを持つウォルバーハンプトン大学と協力し、将来のエンジニアたちが経験を積むとともに、コンポーネンツのテスト・ベッドとしても活用された。
これまでBMWから供給されたエンジンはおよそ5000基で、現在はオーストリアのシュタイア工場からB48型とB58型が、ピッカーズリー・ロードへ送り出されている。

欧州屈指の古豪スポーツカーメーカーと、エンジンに定評のある名門メーカーのコラボレーションが、今後いかに発展していくのか、興味は尽きない。
文=関 耕一郎
(ENGINE Webオリジナル)