2026.02.28

LIFESTYLE

柄本佑のはまり役にも注目!直木賞&山本周五郎賞をW受賞した『木挽町のあだ討ち』の映画化が成功した理由

加瀬総一郎と森田座の面々。手前正面から反時計まわりに、渡辺謙、正名僕蔵、瀬戸康史、柄本佑、高橋和也、滝藤賢一。

全ての画像を見る
その巧みなストーリーテリングで、数々の文学賞で評価された永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』。江戸の歌舞伎小屋を舞台にした極上のミステリーを劇場の大スクリーンで堪能する。

大胆な脚色と役者陣の力

2023年に単行本が刊行され、直木賞と山本周五郎賞をW受賞した『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫刊)。数々のミステリー賞でも高い評価を獲得した本作は、江戸の歌舞伎小屋を舞台にした、謎解きの面白さも楽しめる現代的な時代小説だ。本作は昨年、歌舞伎座で舞台化され好評を博したが、その映画化作品がこのほど完成した。

時は文化七年(1810年)。歌舞伎小屋、森田座の舞台がはねた直後、その近くの通りで、後に江戸の語り草となる仇討ちが行われた。雪が舞う中、若き美濃遠山藩士・伊納菊之助が、父を殺害し逃亡していた男、作兵衛の首を討ち取ったのである。それから約1年半後、同じ遠山藩で、菊之助の縁者を名乗る加瀬総一郎という人物が森田座を訪ねてくる。総一郎にとってこの仇討ちは、あまりに腑に落ちぬ点が多く、それを解明したいと思っていたのだ。

原作ではこの総一郎を聞き手に、森田座の関係者6人それぞれが、モノローグ形式で質問に答える構成となっている。だが映画が見事なのは、総一郎を単なる聞き手にせず、関係者への“聞き込み”を行う探偵、つまり主人公に昇格させたことだ。この大胆な脚色が、映像化にあたっても原作の持つ緊張感を持続させ、テンポよく話を進ませていく。

加瀬総一郎を演じる柄本佑。自身の出演作の中では、本作の脚本も手掛けた源孝志監督の作品が一番多いそうだ。

武士の世界に生まれるも、刀を捨てて芝居の世界に飛び込んだ森田座の重鎮、篠田金治。演じる渡辺謙は、原作を読んだ時からこの作品を映画でやりたいと思ったという。

また総一郎を演じる柄本佑が素晴らしい。優れた探偵映画には、かつて石坂浩二が演じた金田一耕助のような、説得力のある探偵が必要だ。突然の訪問に疑心暗鬼となる森田座の面々に対し、飄々とした態度で接しながら、気づけば相手の懐に入り込んでいる。そんな魅力的でチャーミングなキャラクターを柄本が見事に作り出しているのだ。

渡辺謙をはじめとする、森田座の面々に扮した役者たちもいい。それぞれのキャラクターにしっかり奥行きを持たせ、森田座にたどりつくまでの一筋縄ではない人生をしっかり感じさせる。

優れた小説の映画化を成功させるのは難しいが、今回は脚本と役者陣の力で、活字の世界観を見事、映像世界に蘇らせた。その采配を振り、見事な決断を下したベテラン、源孝志監督の力量に脱帽する。東映京都撮影場内に再現された歌舞伎小屋の雰囲気もリアルな本作。虚実入り混じる芝居の世界も大いに堪能したい。

■「木挽町のあだ討ち」は2月27日より全国公開。配給:東映

(C)2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 (C)2023 永井紗耶子/新潮社

文=永野正雄(ENGINE編集部)

◆【映画『木挽町のあだ討ち』公開記念】山本周五郎賞と直木賞をW受賞した作家、永井紗耶子さんの愛犬と愛車を初公開

永井紗耶子著『木挽町のあだ討ち』(新潮文庫刊)

(ENGINE2026年4月号)

advertisement



RELATED

advertisement