「フォードGT」のサーキット専用モデルで、67台限定で販売予定のGT“マークIV”が、ニュルブルクリンク北コースで6分15秒977というラップタイムを記録。アメリカのメーカーが生産するクルマの、最速レコードを更新した。
コルベットZR1Xの記録を破った!
2026年は、ル・マン24時間で現行世代の「フォードGT」が初参戦にしてクラス優勝を飾ってから10年、またモチーフである「GT40」が参戦開始して60年という節目に当たる。その記念すべき年に、初代「GT40」のレーシング・カーと同じ名を持つ第3世代GTの最終進化形が樹立した記録も、また誇るべきものだ。

同じプロトタイプ・クラスで、ハイブリッド4WDの「シボレー・コルベットZR1X」を破ったラップタイムはまた、現時点で購入可能なクルマとしても、電動化技術を用いない純内燃エンジン車としても最速。レーシング・カーや電動プロトタイプを含む総合順位でも、3位に食い込んだ。

そのレコード・ホルダーであるGT“マークIV”は、通常のGTより長いホイールベースに、ダンフォースを最大化するカーボンのロング・テール・ボディをまとう。エンジンは特別開発のツインターボ・ユニットで、800馬力オーバーのパワーを実現。専用のレーシング・ギアボックスや、技術パートナーであるカナダのマルチマティックが提供するアダプティブ・スプール・バルブ(ASV)サスペンションも採用している。

コックピットに収まったのは、フォード・レーシングのファクトリー・ドライバーであるフレデリック・ヴァーヴィシュ。2019年と2022年にニュルブルクリンク24時間を制し、グリーン・ヘルを熟知している乗り手だが、彼をしてGT“マークIV”でのニュル・アタックは「ほかの何ものにも似ていない経験」と言わしめた。
「このクルマは究極の武器で、まさしく自分の意志の延長だ。すべての入力に対し、瞬時に正確なレスポンスで応えてくれる」とヴァーヴィシュは語る。高速コーナーのケッセルヒェンや、ジャンプ・スポットのあるフルークプラッツといった難所でも「ただただ自信を与えてくれて、どんどんハードにプッシュさせてくれる」のだとか。

フォード・レーシングではこれまでも、モンスター・マシンによってノルドシュライフェで幾度となく7分切りのタイムを叩き出している。しかし、6分43秒482の「F-150ライトニング・スーパートラック」は1428馬力、6分48秒393の「トランジット・スーパーバン4.2」は2039馬力のパイクス・ピークに挑むいわばレーシングBEVで、6分52秒072の「マスタングGTD」はGT3レーシング・カーを公道仕様に仕立てたような826馬力 のマシン。それらの記録も、GT“マークIV”は退けてみせた。
ちなみに、現在のニュル最速タイムは「ポルシェ919ハイブリッド・エボ」がマークした5分19秒546で、この奇跡のような記録は2018年以来いまだ破るものが現れない。これに次ぐのが2019年の「フォルクスワーゲンID.R」で6分5秒336。プロトタイプ/プリプロダクション・モデルのクラスだと、前述の「スーパートラック」は6位、「スーパーバン4.2」は8位で、4位と7位は中国のシャオミSU7ウルトラ・プロトタイプ、5位がロータス・エヴァイヤXと純電気自動車が並ぶ。

9〜11位がコルベットのZR1X/ZR1/Z06なので、つまりトップ10の純内燃エンジン車はGT“マークIV”を含め「ZR1」と「Z06」で3台のみだ。また、今回のチャレンジを除くフォードとシボレーのアタックは、いずれも2025年に実施されている。相手はロード・カーとはいえ、ハイブリッドの「ZR1X」には約33秒、V8ツインターボの「ZR1」には35秒弱の差をつけたフォードに対し、シボレーの逆襲はあるのか。アメ車最速争いの今後にも、期待が高まるところだ。
文=関 耕一郎 写真=フォード 編集=上田純一郎
(ENGINE Webオリジナル)