ここ数年の旧車価格の高騰により、クラシック・スーパーカーが8000万円とか9000万円で流通していても驚かなくなったが、さすがに1億円を超えると話は別で、いまでも少しビックリしてしまう。
稀少性が高まり、以前のようなハンドル位置による格差はない!
イタリア車好き、フランス車好きに価値ある一台をパートナーとした満足度が高い自動車趣味生活を提案しているコレツィオーネがオートモビルカウンシル2026において展示した1972年型の「フェラーリ365GTB/4デイトナ」は1億2000万円。プライス・ボードにゼロが7つも並んでいたので、つい指差し確認でひとつずつ数えてしまった。

おぉー、すげぇ〜価格だなぁ〜と感動しつつピニンファリーナがデザインしたフロント・エンジン・フェラーリならではの繊細かつ美しいプロポーションを鑑賞していると、サクッと売れてしまったのでさらに驚いたのだが、フロント・ウインド・シールド越しに室内を見たら、右ハンドルだったので驚きを通り越し、思わず仰天してしまった。

スーパーカーの世界では昔から左ハンドル信仰が強く、右ハンドルは敬遠されてきたような印象があるが、コレツィオーネの成瀬代表によると昨今は右ハンドルの稀少性が高まり、以前のような格差がなくなったのだという。

前オーナーが現車を海外から買い、それをコレツィオーネが縁あって預かったことで今回のカウンシルでの展示販売につながったそうだが、1億2000万円で売却されたこの365GTB/4デイトナはイギリス仕様で、フロント・バンパーに見慣れない二重のバー型のバンパーが付いていた。筆者は仕事柄、数多くの365GTB/4デイトナを見てきたが、右ハンドル仕様に遭遇したのは今回が初めてである。

成瀬代表は、海外のオークションで少し安価な365GTB/4デイトナを買っても税金や輸送代などが加算されることで1億オーバーになるケースがあるので、1億2000万円は海外モノと同じぐらいの価格設定である、とも話してくれた。なるほど、そういうことか! と頭の中で思いながら改めて365GTB/4デイトナのディテールを再度じっくり観察してみたのだが、本当にカッコよかった。


365GTB/4デイトナは、275GTB/4の後継モデルとして1968年にデビュー。6基のツインチョーク・ウェーバー・キャブレターによって燃料が供給されるパワフルな4.4リットルV型12気筒エンジンの咆哮や、トランスアクスルによる理想的な重量配分がもたらす操縦性のよさで、数多くのファンを魅了した。
とはいえ、筆者は1971年生まれなので、スーパーカーブーム全盛時にミドシップではなくフロント・エンジン方式を採用していた365GTB/4デイトナの魅力が分からず、正直に告白すると高校生になってから長距離耐久レースのGTクラスにおいて好成績を収めていたことを知り、一気に好きになった。

FRフェラーリの傑出である365GTB/4デイトナといえば、フロント・セクション先端部のプレキシガラスが特徴で、その奥に4灯式ヘッドライトが備わっていた。このプレキシガラスはボディのサイドにも回り込み、車幅灯および方向指示器を形成するというスタイリングだった。
その後、主要なマーケットであったアメリカの安全基準変更に対応するため、1970年にまず北米仕様車が4灯式のリトラクタブル・ヘッドライトを採用。その翌年から、すべての365GTB/4デイトナがそれに準じた。

フェラーリ・ファンの間では、一般的にプレキシグラス仕様を前期型、リトラクタブル・ヘッドライト仕様を後期型として区別している。コレツィオーネのブースで1972年型の365GTB/4デイトナを見ながら、いまや貴重なリトラクタブル・ヘッドライト仕様も悪くないな、とシミジミ思っていた。

いわゆるデイトナ・シートの色合いも外装色とマッチし、エンジン・ルーム内までピッカピカだったので、見れば見るほど次期オーナーのことが羨ましくなってしまった。
文と写真=高桑秀典 編集=上田純一郎
(ENGINE Webオリジナル)