限定999台、価格は1億超え。アストンマーティンの新型ハイパーカー「ヴァルハラ」。F1で培った技術を投入した最新鋭のPHEVスポーツの実力を、モータージャーナリストの小川フミオがリポートする。
1000馬力超えとは思えないナチュラルなハンドリング
アストンマーティン肝煎りの新作ハイパーカー「ヴァルハラ」の試乗がかなった。「F1の技術と方法論を適用した」とプレスリリースに書かれ、「アストンマーティン新時代のはじまり」と、CEOが誇らしげに語るモデルだ。
今回の試乗の舞台は、スペインのナバラ・サーキット。早速、全長3.933kmのコースへ1079馬力を誇るV8プラグイン・ハイブリッド・ハイパーカーで繰り出してゆく。

全高はわずか1161mmしかないが、前ヒンジで跳ね上がるディヘドラル・ドアのおかげでコクピットへは難なく乗り込めた。炭素樹脂の薄いシートに腰を落ち着けるとヒップ・ポイントよりペダルに載せた足のほうが上にあり、まさにレースカーの雰囲気だ。
走り出すととにかく速いが、同時に超ナチュラルなドライブ・フィールが印象的だった。ファインチューニングが施されたメルセデスAMG製V8と、8段DCTのあいだにモーターを組み込んでいる。基本は後輪駆動だが、フロントには2基のモーターが備わり、トルクベクタリングとして働く。さらにはアクティブ・エアロなども装備され、超大なパワーを感じさせないハンドリングを実現しているのだろう。

「このさき、ハイパーカー市場のおおきな拡大は見込めません。そこでどう戦っていくか。これが重要なテーマでした」
プロダクト開発を統括するアストンマーティンのニール・ヒューズ氏はそう言う。
「市場の競合を相手にして、会社が存続していく利益を確保するために、F1の技術を活かした本気のハイパーカーを手がけていこうと考えています」
そう語るのは、アストンマーティンのエイドリアン・ホールマークCEOだ。現オーナーのローレンス・ストロール氏からの指示もあり、F1とのつながりを、車体色から空力処理にいたるまで、随所で印象づけるのも重要だったという。

「コクピット背後から突きだしている2本のエグゾースト・パイプからの排気が、ルーフからの空気の流れに干渉されないよう、風洞のスタッフとともに周囲の形状も徹底的に検討しました」
空力処理について、デザインを担当したプラハ出身のオンドレイ・イレツ氏は、そう説明してくれた。