そんな彼が自らの監督作で10 年ぶりに主演を務めたのが『運び屋』である。今年で89歳を迎えるイーストウッドが演じるのは、メキシコの犯罪組織のために大量のコカインをクルマで運んでいた87 歳の老人。モデルとなるのは、5年前に逮捕された実在の人物だ。
アメリカ中西部の田舎町でユリの生産者としてビジネスを営むアール。だがネットの普及と共に仕事は立ち行かなくなり、長年、蔑ろにしてきた妻や娘からも愛想をつかされている。そんな彼に声をかけてきた見知らぬ男から、ある仕事の話が転がり込む。何も聞かずにクルマで荷物を運べば、それだけで大金が手に入るというのだ。
この作品、見所はやはりイーストウッドである。いつの間にか麻薬の運び屋となっていたアールは、次第に深みにはまっていくのだが、そこに犯罪組織に利用される哀れな老人という雰囲気はない。本人はどんな強面に恫喝されてもどこ吹く風。上からの命令も平気で無視し、モーテルに2人の女性を連れ込んで乱痴気騒ぎを起こす図太さである。それでいて大金を手にしても自分のために散財するわけではなく(おんぼろのフォード・トラックを新車のリンカーンに買い替えるが)、娘の結婚パーティの資金にしたり、退役軍人の施設に寄付したりする。もはや富に対する欲望もなければ、生への執着もない。自由気ままに生きてきた男の、最後の心残りは家族だけなのだ。
そんな主人公をユーモアたっぷりに演じるイーストウッドが神々しいまでにかっこよく、90歳を前にして今なお銀幕のヒーローであることを証明するのである。
116分。ワーナー・ブラザース映画。
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文=永野正雄(ENGINE編集部)
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