先月はハイランダーで磨いてもらって、ボディについてはきわめて保管状態が良いことがわかり、「これは当たりのクルマだ!」という田中社長のお墨付きをもらった79号車。とはいえ、どんなに見かけが良くても、中身がダメだったら、単なるキレイな中古車ということになってしまう。自分で乗っている限りでは、ブレーキの効きが最近のポルシェに比べると少々弱いかな、と思う時があるものの、ほかにはとりたてて気になる点はないどころか、エンジンの吹け上がりなどほとんど絶好調とさえ思うのだけれど、果たして本当に大丈夫なのか。こればっかりはプロの目で見てもらわなければ何とも言えない。
そこで今度は、ポルシェ・センター銀座の小石川サービス工場に入れて、徹底的に中身をチェックしてもらうことにした。その結果、2日後に、「現状では特に大きな問題の箇所はございませんでした」というメールをもらった時には、ホッと胸を撫で下ろした。とりわけ気になっていたコンピューターによる履歴診断でも、若干のオーバーレブは記録されていたものの、それは認定中古車としてお墨付きを与える際にも問題にならないレベルだという結果が出た。そのほか、フロント・ディフのシールにオイル滲みが発見されたそうだが、それはあくまで滲みのレベルで、重大な問題につながりかねないエンジン・オイルや冷却水の漏れはなし。ということで、こりゃ本当に当たりのクルマだったのかな、とほくそ笑みながら添付された見積書を開いて、ギョッとさせられることになった。
なんと見積もり金額は39万円弱。想像していたものの倍以上だ。しかし、よくよく内容を確認してみると、かなり念には念を入れた整備をした場合の見積もりになっていることがわかった。なにしろ、ブレーキのホースやフルードのほかにマスターシリンダーの交換まで提案されていたのだ。その結果、諸々のパーツ代だけで27万円近くになっていたのだから、金額がかさむのは当然だ。ブレーキ・マスターシリンダーについてはポルシェでは12年ごとの交換を推奨しているという。
79号車はまさに12年落ちだが、とはいえ、今そんなに慌てて交換する必要があるとは思えない。すべての項目を細かく検討した結果、今回はエンジン・オイルやブレーキとクラッチのフルードといった液体類を中心に、6年ごとに交換推奨なのにまだ交換されていないブレーキホース、切れているバルブ、汚れたエア・フィルターや拭き取りの悪いワイパーブレードなど、中古車に新たに乗り出すのに是非とも必要と思われる項目のみに絞って整備してもらうことにした。その結果、ブレーキ・マスターシリンダーや、異音がするという右ラジエター・ファンの交換は見送った。最終的にかかった金額は、工賃8万5536円、パーツ代10万5976円の計19万1512円。決して安いとは言えないが、中古の911に乗り出すための費用としては、このくらいで済めばいい方だと思う。というわけで、いよいよ走りを満喫するための準備が整ってきた。あとは、もっか使えないナビをなんとかしたいと考えているところだ。
■79号車/ポルシェ911 カレラ4S(996型)
PORSCHE 911 CARRERA 4S
購入価格(新車時) 340万円(1244万2500円)
導入時期 2017年4月
走行距離(購入後) 8万3424km(1039km)
文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=山下亮一
(ENGINE 2017年9月号)
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