ポルシェAGは3月15日、ドイツ・シュトゥットガルトで年次記者会見を開き2018年の業績について発表した。グローバル販売台数は4%増の25万6255台、売上高は285億ユーロ、営業利益43億ユーロと8年連続で成長を遂げており、営業利益率は16.6%を誇る。こうした好業績を背景に近年ポルシェが推し進めているのが、電動化とデジタル化だ。電動化施策としてはブランド初のBEV(バッテリー電気自動車)「タイカン」を年内に発売。すでに欧州では予約の数が2万台を超えたという。また派生車種の「タイカン・クロスツーリスモ」を2020年に発売することも正式にアナウンスした。
さらに次期型「マカン」が、アウディと共同開発を進めている電動車両用プラットフォーム「PPE」(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)を使用したBEVになることも発表した。オリバー・ブルーメ会長は「2023年までに新製品に約150億ユーロを投資し、将来的にポルシェは、純粋なエレクトリック・ドライブ・システムでも知られるようになる」と話し、2025年までに販売台数の半分がBEVまたはプラグイン・ハイブリッド・モデルに、2030年にはポルシェ・モデルの9割以上が電動モデルになる見通しを示した。
また、財務およびITを担当するルッツ・メシュケ副会長は、CASE戦略を念頭に「コネクティビティは100%なくてはならないものになっていく。近い将来、デジタル化できていないがゆえに、ポルシェといえどもプレミアム・ブランドでなくなってしまう可能性もある」と述べた。メシュケ副会長の主導のもと、ポルシェは2016年に米国シリコンバレーのIT企業、ガートナーの元副社長ティロ・コスロフスキー氏をCEOに据え「ポルシェデジタル社(PorscheDigitalGmbH)」を設立している。これはシュトゥットガルト近郊のルートヴィヒスブルクに置かれたデジタル戦略を担当する子会社だ。巨大なレンガづくりの倉庫を改装したオフィスはまさにITベンチャーさながら。主にアプリやウェブを通じた独自サービスの開発をはじめ、新技術を保有する企業や新技術を開発するベンチャー企業などとの連携を推し進めている。3名でスタートした同社は約3年で、シリコンバレー、イスラエルのテルアビブ、中国の上海、ドイツのベルリンにもオフィスを構え、従業員数は80名にまで増えた。
そしてすでにデジタルを活用したカー・シェアリングやサブスクリプション・サービスを手掛けている。2017年に米国アトランタで開始された月額制のサブスクリプション・サービス「PorschePassport」を皮切りに、2018年には、米国ロサンゼルスとサンフランシスコでTuro(トゥーロ)の「ピア・ツー・ピア(P2P)」方式のプラットフォームを利用した、個人間のカー・シェアリング・サービス「PorscheHost」を開始。また今年から、ドイツ国内でもポルシェの認定中古車を活用したサブスクリプション・サービス「PorscheinFlow」が始まっている。メシュケ副会長は「数年以内にデジタルサービスの売上が全体の10%以上を占めると見込んでいる」と話す。日本にいると気づかないが、米国、中国、欧州を主戦場とするポルシェにおいて電動化&デジタル化は、喫緊の課題なのだ。
文・写真=藤野太一 写真=Porsche AG
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