先月から本誌長期リポート艦隊に加わったジープ・ラングラー・アンリミテッドは、ハードトップの5ドア・モデルである。本国仕様と同じように、前席のルーフ・パネル、リア・ウィンドウを含むボディ後半のトップ&サイド・パネル、さらには前後ドアを取り外すことができる。また、フロント・スクリーンも前へ倒すことが可能だ。オープンカー特集にコレを登場させない手はない、というわけで、分厚い取扱説明書とにらめっこしながら、初めてハードトップを取り外してみることにした。ボディ後半のトップ&サイド・パネルは一体型で大きく、重そう。編集部員4名態勢で作業にとりかかる。

前席のルーフ・パネルを取り外すことからオープン化は始まった。前席のルーフ・パネルは運転席側と助手席側の2枚で構成されていて、この2枚の脱着に工具は必要ない。ルーフはグラスファイバー製なので、ひとりで持ち上げることもできる。後席及び荷室は大きな1枚屋根で、これにリア・ウィンドウとリア・クォーター・パネルがくっついている。ジープの後ろ半分を覆うジェット・ヘルみたいなパネルは、ボディに8本のボルトで止められている。専用工具を使ってボルトを外し、リア・ワイパー用のハーネスをボディ側から抜き取れば脱帽の準備完了。問題はここからだ。大人4人が大きな一体型パネルの4隅を持って、せーの!で持ち上げる。ガラス3枚が収まる後ろ側が重い!ガラスの重さを実感する。ジープ・ラングラーのオープン化は解体作業だ。リアのパネルがなくなったジープは、ピックアップ・トラックみたいだ。荷室から斜めに伸びた太いロールオーバー・バーがワイルドだ。

ドアを外すと公道を走れなくなってしまうので、前後ドアはそのままで千葉の海へ向かった。振り向かない限り、屋根を取り払ったことによる大きな視覚的変化はない。サイド・ウィンドウを閉めてしまえば、走行中でも風の巻き込みは気にならない。ガンガン入って来るのは光と音、そして匂いだ。東京湾アクアライン海底トンネルの壁に反響するトラックたちの走行音と排ガスには、正直参った。マスクが欲しい。つらい思いをした分、トンネルを抜けて海が見えたときの喜びは大きかった。春の柔らかい日差しが顔にあたり、潮の香りが鼻をくすぐる。気持ち良くてサイド・ウィンドウを開けたら、まだ冷たい風が頬を叩いた。オープンカーの楽しみは、外界の変化が容赦なく入って来ることかもしれない。

劇的に変わったと思ったことがもうひとつある。それはジープ・ラングラーの運転感覚だ。大人4 人が"せーの!"で持ち上げるほどの重量物がなくなったので、クルマの動きが軽快になった。クルマが若返ったと思うほど爽やかな乗り味になった。前後ドアも外したら、もっと気持ちがいいのかもしれない。屋根と後ろのパネルを取っ払って、ジープ・ラングラー本来の姿に近づいた気がした。ジープ・ラングラーにとっては屋根やドアすらも厚化粧なのだ。すっぴんで野山を駆け回る姿がやっぱり一番似合うクルマなのだと思った。
文=荒井寿彦(本誌) 写真=茂呂幸正
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