このクルマが欲しい! はじめて実車を見て試乗したときにそう思った。そんなふうに直観的に思った選考委員はほかにもいて、今尾直樹さんは「私のためにつくられたクルマだ、ビビッと弱電流が走った。これが買えないのだったら人生の意味はどこにある?」と言い、大乗フェラーリ教の教祖、清水草一さんなどは「現代のスーパー・スポーツはすべていらん! アルピーヌA110があればそれでいい!」とまで言い切る。
瞬間的にクルマ好きの心を鷲掴みにする理由は、オリジナルのA110を現代の基準に上手く適合させたデザインにあることは言うまでもない。とにかくカッコいい。私をはじめとしてラリー好きにはたまらない魅力がある。これで「ワンメイク・ラリーしたい」という高平高輝さんは間違いなくラリー好きだ。

しかし、恰好だけで1位になれるほどエンジンのHOT100は甘くない。A110は「"軽い"という素性の良さをルノー・スポールが完璧に調理」(新井一樹さん)した「コンベンショナルながら最高のシャシー性能」(石井昌道さん)を持ち、「ドライビングのアプローチによって自在に変えられるハンドリング特性」(松田秀士さん)を実現しているところが凄い。乗って驚くのは、ドライバーの腕次第でいかようにも走らせることができることだ。しかも「ポテンシャルは高いが決して気難しいところがなく」(島崎七生人さん)、「アマチュアでも振り回せる」(佐野弘宗さん)という懐の深さもある。渡辺敏史さんは「ミドシップの難しさを取り除き楽しさだけを抽出したかのような見事なシャシー・セットアップ」だと、チューニングを絶賛している。


そして一番大事なのは、藤原よしおさんが「誰がどんな状況で乗っても『楽しい』と感じた」ように、「明らかに速さではなく楽しさを基準に作られている」(斎藤聡さん)ことだろう。「サイズもパワーも足回りの限界も、すべてが公道で走るのにちょうどいいスポーツカー」だという大谷達也さんの言葉で思い出したのは、マツダ・ロードスターだ。ミドシップとFRという駆動方式こそ違うが、ライトウエイト・スポーツの楽しさという点では、2台はとても良く似ている。
「肥大化する欧州スポーツカー群の中にあって、まず愛しいのはボディのサイズ」と河村康彦さんが言うように、絶妙なサイズ感も支持される理由のひとつに違いない。値段はロードスターの倍以上だが、それでも「夢を叶えるギリギリの価格設定も素晴らしい」(山田弘樹さん)。
いまやスーパー・スポーツは600馬力オーバーが当たり前のようになっているが、その性能を存分に楽しめる場所はもはやサーキット以外にない。公道でその性能を試そうなんてもってのほかだ。比較的身近な存在だと思っていたポルシェのケイマン&ボクスターも、素のモデルはともかくオプションを加えるとアッという間に1000万円超えだ。なぜもっと性能も価格も身近で、普段乗りでも楽しく感じるクルマがないのか。桂委員はズバリこう言っている。「世界のスポーツカーに求められるすべてがこの1台に凝縮されている」と。僕らはA110のようなスポーツカーを待っていたのだ。

■全長×全幅×全高=4205×1800×1250mm。ホイールベース=2420mm。車両重量=1110kg。1.8L直4ターボは最高出力252ps/6000rpm、最大トルク32.6kgm/2000rpmを発生する。車両価格=790万円(ピュア)~
文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=郡大二郎
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
2026.02.01
CARS
ドライブは、一人旅に似ている 黄色いナロー・ポルシェに乗る皆川明の…
2026.02.06
CARS
ブライトリング×アストンマーティン降臨! クロノグラフ「ナビタイマ…
2026.02.06
CARS
酸いも甘いも噛み分けた者だけにわかる!? 地味色アルファの魅力! …
2026.01.31
CARS
18年間続けてきたポルシェ生活をやめました 国際的に評価の高い建築…
2026.01.18
LIFESTYLE
RENAULT CAPTUR × PRADA スタイリスト・祐真朋…
2025.12.24
CARS
フェラーリオーナーへの“最初の一歩”は、「フェラーリ・アプルーブド…
advertisement
2026.01.31
18年間続けてきたポルシェ生活をやめました 国際的に評価の高い建築家夫妻が911の代わりに選んだスポーツカーとは
2026.02.01
オシャレと言ったらフランス車でしょ! フランス車には上下の車格の概念がない 自由なところがいい
2026.02.07
「どうせ乗るならスパイダーにしろよ」北方謙三さんのひと言が背中を押した 作家・今村翔吾さんがマセラティMC20チェロに乗る理由
2026.01.30
日本市場への導入はあるのか? あの流星号の名を受け継いだ新型クロスオーバー「フィラント」はルノーの世界戦略車だ
2026.01.30
タイヤチェーンには制限速度がある!大雪や路面凍結のときに装着するチェーンの種類別の速度制限も解説