2019.06.05

CARS

BEVのジャガーIペイス。新時代到来を実感させる見事な提案に驚嘆!

エンジン・ホット100の2位はジャガーが投入した意欲作、Iペイス。初登場で堂々の入賞だ。時代が内燃機関から電動へとシフトしつつあることを強烈に印象づける。搭載電池のみによる電力供給に徹した純電動カーは、どうあるべきなのか。この問いに果敢にチャレンジした結果が、多くの選考委員に評価された。

2位には電気自動車がランクイン

ジャガー初となるバッテリーEVのIペイスは、電気自動車としての革新性と魅力が詰め込まれたモデルで、「明るい未来を予見することのできるクルマ」(小川フミオさん)だ。従来、カッコ良いスタイリングの定義はロングノーズ+ショートデッキだったが、Iペイスのショート・オーバーハング+ロング・ホイールベースのキャブ・フォワード・デザインは、「セダンでもSUVでもない独特のスタイルに新しい時代を感じさせる」(日下部保雄さん)。そして、「BEVが今までのクルマと同じカタチであるという方が間違っていると教えてくれた」(西川淳さん)。「動力源が何か? は別として、乗ってみたいナ!」(河村康彦さん)と思わせるデザインは秀逸だ。また、ジャガー初となるデュアルスクリーン“タッチプロ・デュオ”が採用され、コクピット周りはスイッチ類が少なくスッキリしている。


乗り心地はどうか?

「インターフェイスでも新たな試みがいくつも見られ、“あたらしモノ好き”にはたまらない」(金子浩久さん)。そして、「ジャガー自身は“SUV”と謳うが、その実は立派なスポーツカー」(藤野太一さん)だ。「ひとたび走り出せばクルマ好きをも虜にするスポーティさにノックアウトされる」(生方聡さん)。アクセルペダルを踏み込むとモーター4WDのいきなり強烈加速が実にパワフル。大きなバッテリーと2モーターのなせる技だ。クリープの有無や回生ブレーキの強弱もチョイスでき、アクティブサウンド・デザインにより、ジャガーらしいサウンドすら演出される。しかも、速いだけじゃない。静かで滑らか。「往年のジャガー12気筒エンジンのような、ドラマチックな特性をEVで実現していることに驚いた」(石井昌道さん)。「モーターのトルク特性をここまで巧く管理している例は他の電気自動車にはない」(渡辺敏史さん)。一方、フロアにバッテリーを搭載した低重心パッケージと4WDの前後駆動力配分コントロールのおかげで俊敏なハンドリングが楽しめる。まるで、「EVレーシングカーのステアリングを握っているかのような興奮すら覚える」(藤島知子さん)。高いフラット感に軽やかな身のこなしも印象的で、乗り心地も良く、フットワークもダイナミズムに富んだ“ジャガーネス”になっているのに驚かされた。「電動になっても乗り味に“らしさ”がしっかり残っているのが嬉しい。真新しいけど“らしい”姿もあるのだ」(嶋田太一さん)。


EVでもジャガーはジャガーである

電気自動車に対して、まだまだ課題が多いと感じていた。ライフサイクル全体で炭酸ガス排出量が少ないのかどうかという点、航続距離、そして充電。だが、400kmを越す航続距離があれば十分で、充電にもそれほど神経質にならなくて済む。Iペイスは、そんな意味でもEVを前向きに捉えさせてくれる。Iペイスは、BEVならではのスタイリングとパッケージを具現しつつ、ジャガーらしい乗り味までもきちんと再現した“自動車”としての出来栄えが素晴らしい。ジャガーの技術力に脱帽。電動化の時代になってもジャガーはジャガー。EVの先進感とブランドの哲学が高次元で融合されており、「プレミアム・カーメーカーが作れば、EVはこうなるという回答」(島下泰久さん)が示されている。


 


■全長×全幅×全高=4695×1895×1565㎜。ホイールベース=2990㎜。車両(乾燥)重量=2240㎏〜。ACシンクロナス・モーター2基で4輪を駆動する。最高出力は400ps/4250-5000rpm。最大トルクは71kgm/1000-4000rpm。航続距離はWTLCモードで438㎞。車両価格=1312万円(ファースト・エディション) 1064万円(SE)


文=佐藤久実 写真=山田真人

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