村上 今、平成から令和に変わる時代の大きな節目にある。デジタル化や電動化の波が押し寄せて、元号だけではなく、クルマを巡る状況も転換期を迎えている。その背景には、数年前に起きたディーゼル・ゲート事件をはじめとする環境問題があり、あるいは、昨年から起こっている日産とルノーの問題なんかも影響しているかもしれない。
さらに言えば、アメリカと中国の関係など、世界情勢までもが大きな節目を迎えている感がある。こういうなかで令和最初のホット100を行ったわけだけれど、正直言って、このホット100からも時代は大きく変わっているんだという印象を持たざるを得ない結果になった。ホット10を見ると、なんと昨年と重複しているクルマは3台しかない。
荒井 4位のポルシェ911GT3/GT3RS、5位のマクラーレン720S、7位のマツダ・ロードスターの3台です。
村上 しかも、1位と2位はまったくの新規車種。
齋藤 プジョー508とメガーヌとBMW3シリーズも世代が変わっているから新規車種と考えていい。
上田 BMW・M2とベントレー・コンチネンタルGTは下位からのランク・アップ組です。
荒井 つまり10台中5台が新規車種ということになる。
村上 サブ・タイトルでも「大異変、勃発!」と謳ったけれど、文字通り大異変が起こった。
塩澤 時々あるんだよね。衝撃を与えるクルマが登場すると、パパパッと順位が入れ替わるってことが。
新井 911が切り換え時期で718系もモデル末期といったように、いつも上位のポルシェが谷間にあったという影響も大きいでしょう。
塩澤 「常勝ポルシェがお休みの隙に」ってことね。
村上 僕は必ずしもそうは思わない。この結果を見てすごく考えさせられたんだけど、1位がアルピーヌA110ということもさることながら、2位がジャガーIペイスになったことが時代の変わり目を象徴していると思う。これまで完全な電気自動車がこんなに上位に来たことあった?
新井 BMW・i3が1位になったことはありました。ただ、あれはレンジエクステンダーありきの評価ですからね。
荒井 自分が本当に欲しいと思う20台をそれぞれの人が個人的に選んだ。その寄せ集めがこの結果なんだけど、より個性的なモデルというか、よりパーソナルなクルマが選ばれる傾向が強くなったんだなと思った。ポルシェ911とかメルセデスCクラスとか、いわゆる王道じゃなくて、「この手があったんだ」というクルマが票を集めたような気がする。
村上 僕も今回の結果を見て、時代が変わったんじゃないかと思った。クルマ好きの気持ちのありようが、定番志向ではなくなった。みんなが支持するものイコール正しいという論理ではなくなって、ささやかなものや特殊なものであっても、本当に欲しいものをよしとする時代になった。僕も票を投じたけれども、1位のアルピーヌは台数もそんなに売れるわけではないし、世の中のクルマ好き全体の主張からすれば、ほとんど端っこの方にいるクルマ。しかし、ホット100委員の琴線には響いた。
荒井 44人のうち31人が選んでいる。しかも1位と2位のポイント差は倍近い。まさにブッチギリ。
村上 普通のクルマ好きでアルピーヌを知っている人がどれだけいる?
新井 1%もいないでしょう。
村上 そんなニッチの中のニッチみたいなクルマを44人のうち31人が選んで、しかもダントツのスコアで1位になっている。さらに2位のIペイスだって世の中の大勢とは何の関係もないクルマだ。
齋藤 アルピーヌ以上に知られていないよね。
村上 2003年のホット100の結果を見ると、1位がレンジ・ローバーで2位がボクスターといったようにクルマ好きのみんなが知っているクルマが上位に来ていた。
塩澤 普通は王道なクルマが票を集めるもんだよな。だからこそポルシェはずっと上位に居続けた。
村上 そのときとは明らかに潮目が変わった。もうひとつは、44人の委員がクルマが変わろうとしている時代の節目を物凄く感じている。具体的には内燃機関をはじめとするアナログ的な古き佳きものを愛する気持ちが強くなっているような気がする。その象徴が1位になったA110だよね。逆に2位にIペイスが来ているということは、新しいものへの興味も失われていない。そのあたりにも過渡期であることが表れている。
今回のホット100には「今しか乗れない」と、「新しいものがいち早く欲しい」というキーワードが2つ上位2台が時代の変わり目を象徴しているあると思う。それがせめぎ合っている時代だというのが1位と2位に象徴されている。
荒井 メルセデス、BMW、アウディの凋落ぶりにも拍車が掛かっている。メルセデスのトップは24位のSクラス、Gクラスが42位……。
村上 僕のCクラスはどこ行った?
荒井 54位。で、Aクラスが94位。AMG系を入れても100位までに7モデル。BMWも同じ7モデルだけど、トップ20に4車種入っている。
村上 そういう中ではBMWはかなり健闘しているね。クルマ好きの琴線に触れるところが多いからか。
齋藤 ランク・インしているBMWって全部ニッチ・モデルじゃん。今回3シリーズが大きく飛躍しているけど、これは実質的にはM2と同じ捉えられ方だよね。なぜならサーキットだけを走るような仕様の脚を組み合わせた試乗車にだけ乗って投票されたものだから。
村上 定番ものとしての3シリーズの評価ではない。走りに特化した少数の人のためのクルマとして票を集めた。つまり、クルマ好きの誰もが良しとする太鼓判のクルマがトップ10にはないってことだよ。
齋藤 つぶしの利くようなクルマや、円満に使えるようなファミリー・セダンは上位にいない。
村上 508があるけどね。
齋藤 あれは2+2クーペだから。この手のセダンとしては後席を捨てている。それを選ぶということは、毒を食らわば皿までの覚悟になっちゃっているんだよ、みんな。カッコがいいとか、楽しいセダンが欲しいとなったら後ろに人がまともに乗れなくてもいいという覚悟ができているということ。Bセグメントのコンパクト・ハッチで何が1位かというとシトロエンC3。VWポロじゃない。
村上 もっと言えば、一般的なクルマ好きがいいよねと思うミニも50位までにはいない。
齋藤 誰が見ても本当にいいクルマだと納得するVWゴルフだって51位。
荒井 一方、ラングラーは20位。
新井 一般的とは真逆のクルマです。
荒井 Iペイスを除くとラングラーがSUVの1位……あっ、ウルスが居た!
村上 SUV人気のこの世の中で、エンジンが選ぶSUVは1位がIペイスで2位がウルス(笑)。本当に極端だよな。
齋藤 真っ当な正しいセダンの代表みたいなSクラスが上位にいるのも実は6発ディーゼルのおかげ。選考理由はセダンそのものの魅力ではなかったりするんだよ、実は。
村上 で、編集部のみんなはどういう風に選んだの?
塩澤 ラリー・カーにしたら楽しいんじゃないかという視点は例年通り。ただ、1位がスバルWRXからアルピーヌに変わった。さすがにWRXはもう古いから。あとモーガンとケータハムを新たに加えた。
村上 これはラリー・カーにはならないぞ。
塩澤 この間乗ってヤラれた(笑)。歳を考えるとあと何台乗り替えられるかというなかで、一度でいいから経験したいなと思った。
村上 齋藤さんは?
齋藤 いままでずっと上位はスーパーカーだったんだけど、2シーターのミドシップはすべて排除した。現実の道路との整合性がなくなりすぎたから。今回は一緒に暮らせそうなクルマにした。1位がジュリアで2位がA4、3位がアテンザ。
塩澤 人格が変わったみたい。
村上 やっぱり時代の変わり目だ。
一同 (笑)。
荒井 僕は全然変わっていない。2人乗りのオープン・カー。
齋藤 荒井さんは子供も独立して人生上がっているから。
村上 それが深まった、と。1位は?
荒井 コルベット。さよならコルベット。2位はi8で、3位はZ4。
齋藤 Z4は後輪駆動のコンパクト・スポーツカーとしてはベストなんじゃないの。
新井 ボクスターよりも上位です。
齋藤 ボクスターより安くて出来がいいんだから当然でしょ。
村上 そういう新井くんは?
新井 スーパースポーツ系を排除しようかと思ったのですが、結局いつも通り、ワインディング路でこれはスゴイ、楽しいと思ったスポーツカーを中心に選びました。1位はアルピーヌです。
村上 編集部では塩澤さんと新井くんの2人がアルピーヌ1位か。
齋藤 僕は5位。
村上 僕も荒井さんも上田くんも入れているから全員か。上田くんは。
上田 いつもどおりオンリー・ワン・カー、今買っておかないと、といったクルマです。1位は720S。これは変わらずです。
荒井 村上さんは? 相変わらず上位に911って文字がずっと並んでるけど。
一同 (笑)。
村上 選評には走って楽しいクルマと書いたけど、今回の裏テーマは今だから乗れるクルマに乗っておきたいというのがある。それともう1つは新しいものでもアナログな味が色濃く残っているクルマがいいなと思って選んだ。古臭いと言われるかもしれないけど、それは捨てられない。
荒井 ポルシェの中で、でしょ(笑)。
村上 以前から言っているように、今まさにクルマの在り方自体が問われているのだろうと思う。この先何年間か、我々もそのことを真剣に考えながら仕事をしていかなくてはけない気がする。
塩澤 電気系のクルマがどんな進化を遂げるのか。アナログ的なクルマからも新しいカタチが出てくるかもしれない。今は曖昧な状況だけど、それでどういう新しいクルマが出てくるかと考えるとワクワクする。
荒井 結局44人みんな、自分でクルマを操るのが好きで、そういうクルマを選んでいる。その結果がこれ。
村上 文化というのは、好きな人がいて、それをちゃんと守ろうとしないとなくなっちゃう。少なくとも今はまだ、たくさんはっきりといいクルマがあるし、クルマ文化もあるけど、この先どうなるかはわからない。だからこそ、我々は常に声を大にして、クルマへの“愛”を叫んでいかなければいけないのだと思うよ。
語る人=村上 政(ENGINE編集長)+塩澤則浩+齋藤浩之+荒井寿彦+新井一樹+上田純一郎(すべてENGINE編集部)
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