2019.07.12

CARS

BMWが作る新型スープラに乗った 6気筒が素晴らしい!

いよいよ正式な市販型のトヨタGRスープラに乗る日が来た。伊豆修善寺の一般公道で全3モデルに試乗した印象を、レーシングドライバーであり、自動車ジャーナリストでもある、大井貴之が報告します。

BMWとのコラボによって生まれたGRスープラ。なんでトヨタ独自で作らないんだよ! とか、中身がBMWなら期待出来るね! など反応は様々。スバル製の86が登場した時にも同じ様な話題になった気がする。外見的に27型レビンとトレノ(古い?)程度の違いしかない86とBRZに対し、今回はBMW・Z4がオープンカーで、GRスープラはクローズド・ボディ。しかも、BMW・Z4をベースにクローズド・ボディのスポーツカーを開発したわけではなく、クルマの運動性能を決定付ける3大要素だというトレッド、ホイールベース、重心高はトヨタが提案して進めたという根本からの共同開発。


しかし、エンジンやトランスミッションを始めとする"具"はすべてBMW製。マセラティがフェラーリ製エンジンを搭載しているのは大きな価値となっているし、F1だって自前のエンジンを使って走っているチームは少ない。自前に拘っていられる時代ではないし、そのお陰でGRスープラは復活を果たし、ベース・モデルが490万円で購入出来るというありがたい現実があるのだ。


6発は大人のスポーツカー

最初に試乗したのは、349ps/500Nmを発揮する3lの直列6気筒+ツインスクロール・ターボ過給エンジンを搭載するGRスープラの看板モデル、690万円のRZ。


インテリアはまるっきりZ4……だと思っていたが、実際は随分と違った。Z4はフルデジタル・メーターパネルを採用しているが、GRスープラはド真ん中にレヴカウンターを配しスポーツ・モデルであることを主張したデザインだ。ビックリするほど高いサイドシルはボディ剛性に拘った証。ウインドスクリーンの縦方向の狭さもあって開放感は感じられないが、スポーツカーのコクピットに潜り込んだ的な安心感はある。ボンネットは視界に入らないが、狭いワインディング・ロードを走っても車両感覚的に不安を感じるようなことはなかった。


室内の意匠はBMW Z4とは別物。スイッチ類の共用はあるが、全体の印象はだいぶ異なる。


驚いたのは、乗り心地だ。試乗会場の周辺は荒れた路面のタイトなワインディング。スポーツカーの試乗には厳しい環境だったのだが、19インチの極太タイヤを装着したRZは想定外と言える快適さ。86の2.5倍というボディ剛性に加え、モンロー&オーリンズの電子制御ダンパーが相当に良い仕事をしているようで、上質な乗り味。でっかいホイール&タイヤが勝手に暴れ出すような様子はなく、しっかりと路面を捕らえている。ステアリング・ワークに対するレスポンスは鋭く、狙ったラインを正確にトレースしてくれる。


BMW製の6発エンジンは期待通りのシルキー・テイスト。のんびり走っていればちょっとした高級車。しかし、ステアリング・レスポンスと同様、アクセル・ワークに対しターボ・ラグなど感じないリニアな加速をする。もう、完璧! 究極のクルマが登場した的な表現になってしまったが、これはあくまで一般道の低速ワインディング・ロードを走った印象での話。GRスープラが本領を発揮すべきニュルのような高速ワインディング路でのハンドリングがどうなのかはコメント出来ないが、公道でのドライブ・フィールはとても好印象。大人の高級スポーツカーが欲しいなら選択肢に入れるべきだ。


6気筒(写真上)がアクスル上にオーバーハングするのに対して、4気筒(写真下)は完全なフロント・ミドシップ搭載になる。鼻先の軽さの違いは体感でも分かる。4発でもスムーズだ。


と言いながら、筆者が気に入ったのは4気筒の2lターボ・モデルだ。直列エンジンの前側の2気筒が無くなると、このクルマは完全なフロント・ミドシップになる。4気筒のスープラなんて……という声が聞こえてきそうだが、昔のトヨタにスープラを走らせるような4気筒エンジンなんか無かったんです。スポーツカーとしてGRスープラを選ぶなら筆者のイチオシはSZ-R。チューニングを前提とするならベース・モデルのSZがお買い得。


走りが良いと、乗る前には違和感を強く感じていたスタイリングも、試乗が終わる頃にはずいぶんと見え方が変わって来た。


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文=大井貴之 写真=望月浩彦

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