昨年の日本市場の新車受注台数が2万台を突破して、ますます好調のボルボ。2万台超えは22年ぶりだという。売れるのはクルマのデキがいいからという話もあるが、日本市場向けに全モデルの全グレードに同一仕様の安全システムを標準で装備するなど、インポーターの確固とした戦略と努力がなければ達成できなかったに違いない。今回V60に追加されたプラグイン・ハイブリッド・モデル、V60T6ツイン・エンジンAWDのインスクリプションとモメンタムも間違いなくそうした戦略モデルと言える。何が戦略的かというと、価格設定が絶妙なのだ。豪華内装のインスクリプションで749万円。ファブリック・シートのモメンタムの659万円は、ボルボのプラグイン・ハイブリッドのラインナップのなかでも一番お買い得な価格設定になっている。
これまでボルボのプラグイン・ハイブリッドと言えば、各モデルの最上級グレードに用意されるのが普通だった。たとえばXC90でもV90でも、最もパワフルなT8エンジンと組み合わされるのが当たりまえで、V90T8ツイン・エンジンが964万円。XC90T8ツイン・エンジンは1084万円もした。
そんな具合でこれまでボルボのプラグイン・ハイブリッドは高嶺の花だったわけだが、V60にT6を組み合わせたモデルが登場したことで、グッと身近になったことは間違いない。これ、実は2017年に発表した、2019年以降はすべてのモデルにEVまたはプラグイン・ハイブリッド、マイルド・ハイブリッドをラインナップするという戦略にもとづくもので、来年中には48ボルトのマイルド・ハイブリッドも登場するはずだ。
話をV60T6ツイン・エンジンに戻そう。インスクリプションとモメンタムの違いは何かといえば、モメンタムでは電動シートのマッサージ機能が省かれていたり、オーディオが簡素化されたりと贅沢装備が削られている。一番の違いはシートがファブリックになったことだろう。なんと試乗車は豪華仕様のインスクリプションだったのでお見せできないのが残念だが、モメンタムのインテリアは意外と爽やかで若々しく、好印象だった。一部の豪華装備が省かれているとは言え、見た目は立派なもので、ほとんど見劣りすることはない。
さらに冒頭で述べたように、安全装備はすべてのモデルでほぼ同一の仕様となっている。さらに動力性能もまったく同じ。2リッターの4気筒をスーパーチャージャーとターボで過給するT6エンジンの最高出力は253馬力で、最大トルクは35・7kgm。これにフロントにはスターターとオルタネーターの役目もする45馬力のモーターが組み合わされ、さらに87馬力のモーターがリアを駆動する。安全装備も動力性能も同じで、インテリアが革かファブリックかの選択というのは、ファッションの服選びと同じような感覚で、面白いと思った。
さて、これが乗ってどうかというと、乗り味が大人っぽいので驚いた。普段長期リポート車として乗っているV60T5は、乗り心地が硬めで若々しくてスポーティな感じだが、プラグイン・ハイブリッドのT6は重厚で落ち着いた感じだ。モーターや電池を積んでいるので車重が2050kgもあるからだと思うが、おかげで車格が上のクルマに乗っているような気がしてくる。
走りはいたって滑らか。走行モードでハイブリッドを選んで走ってみたが、リア・モーターでスッと走り出したかと思えば間髪入れずにエンジンが始動してアッという間にグングンと加速する。エンジンが始動するときのショックは皆無で、上質な感じがした。試すことはできなかったが、EVのみで走行できるのは満充電で30km程度。速度は状況にもよるが125km/hくらいまでだということだった。
FFのV60T5インスクリプションは599万円。T6ツイン・エンジンAWDのモメンタムとの差はわずか60万円だ。プラス60万円で4駆のハイブリッドが手に入る。これははっきり言ってお買い得です。
インテリアのデザインは基本的にほかのV60と同じだが、PHEVはセンターコンソールのシフト・ノブがクリスタルになっている。
ドライブ・モードはAWDオート、モーターで走るピュア、ノーマル(ハイブリッド)、スポーツのほかにエンジンやステアリングの特性を任意に選ぶことができるインディビデュアルがある。
ガソリンの給油口は右後ろ、充電口は左側のフロント・フェンダーにある。
荷室容量は変わらないが、床下収納のスペースは少ない。
試乗車のホイールはオプションの19インチ(10万円)だ。
ボルボV60 T6ツイン・エンジンAWDインスクリプション
文=塩澤則浩(ENGINE編集部) 写真=望月浩彦
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