先月も書いたように、79号車に乗り始めてはや1年以上になるのに、サーキットを走ったのはたったの1度。それもドライビング・レッスンにロードスターで参加した時に、筑波コース1000をほんの数周試しに走ってみただけだった。長い間、レースの友としてきたロードスターがいなくなった今、そろそろ79号車でもサーキットを走ろうではないか、というわけで、7月26日に開かれたドライビング・レッスンで本格デビューすることにした次第である。
なんと驚いたことに、この日のレッスンには同じ996型カレラ4Sがもう1台参加していた。はるばる宮崎県からやってきて下さった佐々木達郎さんの赤いC4Sで、2003年型の右ハンドル、ティプトロニック仕様。走行距離3万4000kmに満たない大切に乗られてきた個体だった。長年参加したかったこのレッスンのためにクルマをトランスポーターで運び、ご自身は飛行機でお見えになったのだとか。感謝、多謝。
さて、赤とシルバーの2台の996C4Sが勢ぞろいして、まずはいつも通りにジムカーナ場でのオーバル・レッスンからスタートしたわけだが、走り始めてすぐに感じたのは、これまで長年走ってきたロードスターとの大きな乗り味の違いだった。一言でいえば「軽快」と「重厚」ということになるのだが、コーナーでブレーキとアクセレレーターのコントロールで自在に向きが変えられるような身軽さを持つロードスターに対して、ポルシェはとにかくドスンと重たい感じが走っている間ずっと付きまとっていて、とりわけコーナーの進入時にアンダーステアを感じることが多い。4WDであることも大きく影響しているのだろうが、よく言えば飛びきり安定感が高い代わりに、あまり曲がるのが得意ではないようなのだ。どうやったらリアが程よく外にスライドして、うまくコーナーをトレースできるようになるか、オーバル・コースを何度も何度も走って試した。その結果分かってきたのは、ステアリングを切り込んでいくときにタメが必要で、リアがステアし始めるのを一瞬手を止めて待ってやらなければいけないということだった。うまく曲がれてさえしまえばあとはこっちのもので、圧倒的なトラクション性能を生かしてドーンと加速していけばいいのだ。
ところが、そうやって午前中のオーバルで学んだはずのことが、午後にコース1000に行ってみるとうまく実践できなくて、最初は本当に戸惑った。とにかく曲がらない感じがするのだ。それなのに我慢できなくて中途半端にスロットルを開けてしまうから、ますます曲がらなくなる。タイムは45秒台。これではロードスターより遥かに遅いではないか。
試行錯誤を繰り返し、そのうちにどうやらロードスターの時のように振り回して走っていてはうまくいかないことが分かってきた。止まる時は止まることに専念し、曲がる時は曲がることに専念する。そして、向きが変わったら、ドーンと踏んで加速して行く。ロードスターより400kgも重いのだから振り回せないのは当然で、それよりも150馬力も多いあり余るパワーやリア・エンジン+4WDの圧倒的なトラクション性能をどう生かすかが重要なのである。そうと分かれば走り方を修正していくしかない。徐々にクルマに慣れてきてタイムも44秒台に入るようになってきた。
結局、この日のベスト・タイムは43秒678。猛暑の中を走っていたことを考えれば、十分に納得できるタイムだ。これまでのロードスターのベストをもあっさりと超えてしまったのだから、やはりポルシェは凄いと脱帽するしかない。
翌週、今度は筑波コース2000に挑戦した。コース1000を走った時よりもさらに暑い、サーキット日和とは言い難いとんでもない日だったが、それでも豪雨よりはましだと思うしかなかった。最初はやはり苦戦した。あまりに暑いのでエアコンをオンにしたまま走っていたせいもあったのだろうが、まるでタイムが伸びない。1分12秒台後半がせいぜいだ。結局、コース2000でもコース1000を走り始めた時と同じ失敗を繰り返していたことが、やがて分かってきた。止まること曲がることに専念しないで中途半端に振り回そうとしているから、かえってタイムが出ないのだ。ロードスターよりもずっとメリハリのある運転をしないと、重くパワーのあるポルシェは速く走らせられないのである。この日のベスト・タイムは1分11秒956。また近いうちに挑戦したい。
■79号車/ポルシェ911カレラ4S(996型)
PORSCHE 911 CARRERA 4S
購入価格(新車時) 340万円(1244万2500円)
導入時期 2017年4月
走行距離(購入後) 9万1419km(9034km)
文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=神村 聖
(ENGINE 2018年10月号)
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