2019.09.16

CARS

フランス随一の辛口ホットハッチ、ルノー・メガーヌR.S.を箱根で堪能する。 走るのが好きな人が作ってる。

ニュルブルクリンクFF最速の座をシビック・タイプRから奪還した新型メガーヌR.S.は、4輪操舵という新しい武器を得て、速さだけでなく快適性も向上させたフランスきってのホットハッチだ。今回は2ペダルの標準グレードと限定販売されたMT仕様の"カップ"の2台セットで山へと向かった。


齋藤 今回取り上げるのはルノー・メガーヌRS。


新井 ルノーのモータースポーツ部門で、スポーツ・モデルの開発も行っているルノー・スポールが手掛けたホットハッチです。


佐藤 ルノーって、改めて考えるとすごく特殊なメーカーだと思う。


齋藤 えっ、どこが?


佐藤 F1もやっているのにスーパースポーツを持ってないでしょ、それに高級車もない。


齋藤 ルノーのグループにはインフィニティがあるからね。高級車を別のブランドが担っているという意味ではフィアットに近い存在と言える。


佐藤 私は昔からルノーのFFって優秀だなと思っていた。初めて乗ったルノーは初代ルーテシアなんだけど、粘着質なグリップ感に衝撃を受けた。フロントが絶対に逃げない。それ以来、私は一目置いているの。


齋藤 2代目サンクで横置きになって以降、ルノーはずっとFFで一番まっとうな脚を作ってきた。乗り心地だけで言うとプジョーの方が路面の凹凸の逃がし方なんかは良かったけど、総合面でいったらずーっとルノーがダントツだった。


佐藤 そんな高い能力を持っていて、さらにモータースポーツもいろいろやっていて、しかもそのトップ・カテゴリーのF1にも参戦していていろいろノウハウがあるはずなのに、スーパースポーツを持っていないなんて独特な会社だな、と。


齋藤 最近復活したけど90年代頭まではアルピーヌを持っていたけどね。でも確かにブランド戦略から考えると、F1やるならインフィニティにすればいいと思う。レッドブルはインフィニティでやってたね。


新井 あれはスポンサーとして金を取られただけです。


齋藤 金だけか(笑)。ルノーがF1をやってるというのは、フィアット・グループがフェラーリやアルファ・ロメオじゃなくてフィアットでF1をやっているのと同じ。ルーテシアやメガーヌが主力のブランドがF1をやってどうする?って感じ。でも、FFをやらせたら一番。


佐藤 以前はリア駆動じゃなければスポーツカーじゃないって思われてたけど、ルノーに乗るとFFスポーツも有りじゃんって気になる。しかも、リアのブレーキがドラム式だったりと、スペックはそんなに過剰に奢っていないけど走るとスゴイ。そんなイメージがあった。


齋藤 スペックは過剰じゃないけど、コイル・スプリングの巻線が普通なら3周くらいで終わっちゃうようなストロークでも7回も8回も巻いてあるとか線径が太いとか、いちいち部品に金が掛かっている。正攻法なの。見えないところで手抜きをしていないの。むしろ見えるところで手を抜いている。


佐藤 リア・ゲート開けると雑だったりするもんね(笑)。




カップのインパネとシート。変速機関連以外での標準グレードとの大きな違いはパーキング・ブレーキ・レバーとステアリング。パーキング・ブレーキは電動式から手動式となり、ステアリングは上下の一部がアルカンターラ巻きになる。




シートも表皮を含め、標準グレードと変わらず。


メーター表示は走行モードによって4種類用意される。



"コンフォート"



"ノーマル"



"スポーツ"



"レース"


"レース"は表示を頻繁に見ないことが前提なのか、4つのモードの中で一番視認性が良くない。


4輪操舵の効果絶大

佐藤 このメガーヌRSはパワーもあるし、それなりのハイグリップ・タイヤも履いているし、サスペンションも硬い。それなのに、ほかと比べたら粘っこい感じがある。ソリッドな感覚ではない。


齋藤 ニュルブルクリンクでのタイムアタック合戦が激しくなり、先代のメガーヌRSはどんどんどんどん脚が硬くなって、最後はけっこうガチガチだった。ところが何年か前に初めて、ルノー・スポールの実験部隊の人たちは日本の道路を走ったんだって。その時、日本の道路のあまりの悪さに「やっぱりこんなに硬いとダメだ」と反省したと言ってた。そこでタイムアタックを続けながらも脚を柔らかくするにはどうしたらいいかと考えた結果が後輪操舵というわけ。


新井 脚を柔らかくしたもうひとつの理由は時代の変化です。メガーヌRSは先代で3ドアに特化し、ストイックに速さを追求し続けた。ところがふと気が付いたら、周りはみんな5ドアが選べて、2ペダル仕様も用意され、しかも速さだけでなく乗り心地といった実用性の高さも加味したオールマイティなものばかりになっていた。販売台数もライバルの方が断然多く、メガーヌRSはシェアを落としてしまった。


齋藤 世界最速は獲ったけど、誰も買わないクルマになっていたのね。


新井 これはマズイということでライバルに負けない乗り心地を得るため、脚を柔らかくしたそうです。


佐藤 普通に乗っているといい意味で4輪操舵と感じさせない。


齋藤 山に行かないとわかんない。


佐藤 最近、4輪操舵が増えているけど、これみよがしのクルマも多いじゃないですか。小回り利くのは良いけど、違和感が大きいみたいな。


齋藤 メガーヌの4輪操舵は速く走るためのものだから。


荒井 4輪操舵はクネクネした山道でコーナーの途中で思っていたよりも曲率が大きくなるようなところで効く。切り足しても"グィーン"って何事もなかったように曲って行く。


佐藤 大舵角時でもねちっこさが残っていて、路面を掴んで離さないのには感動した。乗り心地も全然許容範囲。「これなら我慢できる」じゃなくて普通にいい。でもなんで4輪操舵にすると乗り心地が良くなるの?


新井 4輪操舵ではステアリング操作したときの姿勢変化が少なくなるので、脚を柔らかくしても4輪操舵ナシと同じ速度で同じロール角を保つことができるんです。


■RENAULT MEGANE R.S.


■RENAULT MEGANE R.S. CUP



レーサーでもある佐藤久実さんはより硬派なカップを推すかと思いきや、「公道なら断然オレンジ」と標準グレードに太鼓判を押す。しかし、利きの強いLSDを備えるなど走りの性能を突き詰めているのにFFのネガティブな面が出ていないカップの出来の良さにも「作り分けが上手いよね」と感心していた。





どちらもルノー・スポールが手を加えた1.8ℓ直4ターボを搭載。出力も変わらない。前ブレーキは標準グレードがディスク、ハブとも鉄製なのに対し、カップはハブにアルミを用いることで軽量化。ブレンボ製のキャリパーは色が異なるものの仕様は同じ。


ゴルフGTIを超えた

佐藤 オレンジと白は何が違うの?


新井 オレンジは"シャシー・スポール"と呼ばれる街乗りを重視したサスペンションを備えたスタンダード・モデルで、日本仕様は2ペダルのデュアルクラッチ式6段自動MTとの組み合わせ。白い方は今年の5月に発売された"カップ"という限定車で、シャシーがサーキット走行に主眼を置いた硬めの脚を持つ"シャシー・カップ"になるほか、変速機が6段MTになります。


齋藤 カップは機械式LSDも付く。


新井 トルセン・タイプですね。


齋藤 やっぱり白のカップは脚が硬いね。山では気にならなかったけど、街中だと標準仕様との差は歴然。


佐藤 私はオレンジがいいと思った。


荒井 同感。


佐藤 白は公道だとトゥ・マッチな感じ。でもサーキットで走りたい人はマニュアルだしLSDも入っているから絶対カップがオススメ。


齋藤 ゴルフGTIを買っている人がオレンジに乗ったら、「ルノーってスゲーいいじゃん」って思うはず。公道で乗るならオレンジにしておいた方がいいけど、サーキット志向の人にはカップの上にさらに"トロフィー"とか"トロフィーR"というもっとハードコアなモデルの用意もある。トロフィーRは5ドアなのに軽量化のために後席を取っ払っちゃってる。


佐藤 えっ、4種類もあるの!?じゃあ、カップは誰のためにあるの?


齋藤 普段は何とかつぶしが効いて、でも休みの日にはサーキットへ行ってスポーツ走行とかをする人でしょ。


新井 あと、日本では標準のRSは2ペダル、カップはマニュアルといった棲み分けをしています。


佐藤 オレンジと白の違いは、脚でしょ、LSDでしょ、あとマニュアル。それで価格差は10万円。走りたい人にはお買い得だよね。


齋藤 でも自分で変速しなくちゃいけないから(笑)。


佐藤 齋藤さん、マニュアルがいい人はそれを望んでやるの!(笑)。でも、4段階の入り口のオレンジでも性能は十分だからね。感心しちゃう。


荒井 私はオレンジの方が速く走れる。だって白はマニュアルだから。あたふたしているうちに遅くなる(笑)。


齋藤 僕もそう(笑)


佐藤 (爆笑)


齋藤 少なくとも一般道で僕らくらいのレベルだったら圧倒的に2ペダルの方が速い。


荒井 でも、マニュアルの方がダイレクト感があるから速く感じる。


新井 速いのはオレンジだけど......。


齋藤 速く感じるのは白。


佐藤 マニュアルを否定しないし、この先、12気筒エンジンと同じようにいつまで乗れるかわからないからあるうちに楽しみたいと思うけど......。でも2ペダルの方がラクで速い。


荒井 メガーヌRSはポテンシャルが高過ぎちゃうから性能に腕が追い付かない。マツダ・ロードスターくらいならいいんだけど(笑)


佐藤 2ペダルだとステアリングとペダルに集中できる。だから、よりハンドリングを楽しめる。シフト操作にスポーツを感じるのも有りなんだけど、でも、2ペダルは2ペダルのスポーツがある。シフト操作がなくなって得られるものって実は大きい。この2台は変速比も違うのかな。


齋藤 デュアルクラッチ式の2ペダルの方が1速が低くてステップ比も小さい。マニュアルは全体的に上に寄っている。サーキットを走ることを考えているんだと思う。


佐藤 ギア比から違うのか。ニクイくらいにいろいろ考えているのね。


齋藤 ルノーの中でもとくにルノー・スポールの人たちは走るのが好きで好きでしょうがない人たちが作っているんだから。やらされている感がまったくない。


新井 上からはコストさえ合えば何をやってもいいと言われているらしいです。


佐藤 作る側もクルマが好きだからクルマ好きの気持ちがわかるのね。


荒井 クルマ好きのお眼鏡に適うメガーヌということで。


新井 車名の"MEGANE"に掛けてます?


荒井 オチをいちいち解説しない!


佐藤 お後がよろしいようで。


一同 (笑)



話す人=佐藤久実+齋藤浩之(以下ENGINE編集部)+荒井寿彦+新井一樹 写真=郡大二郎


■ルノー・メガーヌR.S.カップ


駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動全長×全幅×全高 4410×1875×1435mmホイールベース 2670mmトレッド 前/後 1620/1600mm車両重量 1460kg(前920kg:後540kg)エンジン形式 直列4気筒DOHC 16V直噴ターボ総排気量 1798ccボア×ストローク 79.7×90.1mm最高出力 279ps/6000rpm最大トルク 39.8kgm/2400rpm変速機 6段MTサスペンション形式 前/後 ストラット式/トーションビーム式ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスクタイヤ 前/後 245/35R19 93Y車両価格 450.0万円

■ルノー・メガーヌR.S.


駆動方式 フロント横置きエンジン前輪駆動全長×全幅×全高 4410×1875×1435mmホイールベース 2670mmトレッド 前/後 1620/1600mm車両重量 1480kg(前930kg:後550kg)エンジン形式 直列4気筒DOHC 16V直噴ターボ総排気量 1798ccボア×ストローク 79.7×90.1mm最高出力 279ps/6000rpm最大トルク 39.8kgm/2400rpm変速機 デュアルクラッチ式6段自動MTサスペンション形式 前/後 ストラット式/トーションビーム式ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスクタイヤ 前/後 245/35R19 93Y車両価格 440.0万円

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