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これから1年ほどはコンパクト・アウディの当たり年になりそうだ。前項のQ3スポーツバック以外にも、A1スポーツバックやQ2の高性能バージョンであるSQ2、ディーゼルのQ2 TDIが続々と上陸を果たすと見られているからだ。
その筆頭株が新型A1スポーツバックで、初のフルモデルチェンジを受けて新型VWポロと同じMQBベースに生まれ変わった。試乗車は40TFSISトロニック。200psの2リッター4気筒エンジンを積む、現時点でのトップ・グレードである。
外観はやや丸みを帯びていた先代から一転、シャープでスポーティな装いを得た。前後にブリスター・フェンダーを配したサイドの造形も筋肉質で力強い。いっぽう、インフォテイメント系にはQ3スポーツバックと同じMMIタッチディスプレイを採用。メーターパネルはフルデジタルのバーチャル・コックピットが選べるほか、ダッシュボード上のタッチディスプレイは取り付け位置が比較的高いうえにドライバー側に傾けられているので、この種の操作系にしては扱い易いといえる。
1260㎏の車重に200psのエンジンであれば力強さは十分と思うだろうが、やはり低速域がチト物足りなかった。ヨーロッパの排ガス規制への取り組み方が、アウディはやや慎重すぎるのかもしれない。
足まわりはダンピングがよく効いており、どっしりした乗り心地。これまでの少し浮き上がったかのような軽快感とはひと味違っているものの、フラット感が強調されていて好ましい。ハンドリングはあいかわらずシャープだが、ゲインの立ち上がりは自然で、接地性も高く不安はない。ミュンヘン郊外の一般道ではときに強い雨が降ったが、FWDモデルでも優れたスタビリティを発揮してくれた点は特筆したい。
SQ2のエンジンも2リッター4気筒ガソリンだが、こちらは実に300psを発揮。レッド・ゾーンは6800rpmから始まる高回転型だ。その回り方はまるで自然吸気のように伸びやかで刺激的。クワトロのおかげで0-100㎞/h加速を4.8秒でクリアするスプリンターだ。
これを受け止めるシャシーはもちろんスタンダードなQ2よりも強化されているが、アウディSモデルの伝統に従い、ただ硬いだけでなく洗練された乗り心地も提供してくれる。標準モデルよりも質の高いダンパーが取り付けられているのは間違いないだろう。結果として、SQ2はスポーティな味わいを持ちながら、Q2に比べて一段上質なクルマに仕上げられているように思う。
現行モデルに比べてA1スポーツバックはスタイリングやエンジン・サウンドがいくぶんアグレッシブで、乗り心地も硬めに感じられる。ひょっとすると、コンパクト・カーに強い個性を求める市場の声に応える形で、アウディは従来より“スパイス”がいくぶん多めのクルマ作りに方針を改めたのかもしれない。ビジネス面の成否はマーケットの判断に任せるとして、アンダーステートメントなキャラクターを備えたかつてのアウディを愛する者としては、一抹の寂しさを禁じ得ない。
文=大谷達也
アウディSQ2/AUDI A1 SPORTBACK
アウディA1スポーツバック40TFSI/AUDI SQ2
(ENGINE2019年11月号)
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