DS3クロスバックEテンスがピュアEVとかBEV(Bはバッテリーの意)と呼ばれる内燃機関のない純然たる電気自動車なのに対し、DS7クロスバックの電動化モデル、Eテンス4×4は1.6ℓ直4ターボに2つのモーターを加えたプラグイン・ハイブリッドを採用している。PSAは、DS3クロスバックのようなBセグメント・サイズのスモール・カーは電気自動車、DS7が属するCセグメント・サイズのコンパクトにはプラグイン・ハイブリッドといったように、クルマのサイズによって電気自動車とプラグイン・ハイブリッドを使い分けているのだ。
スモール・カーは市街地を中心に短距離移動で使われることが多いため、まったく排出ガスを出さない電気自動車が適している。一方、コンパクト・カーはドライブや旅行など、1回の走行距離が長くなる機会が多くなることが考えられるためプラグイン・ハイブリッドがその用途に相応しい。これがクルマの大きさで戦略を分けている理由だという。もちろん今後、電動車が普及し、ラインナップも増えれば、スモール・カーにプラグイン・ハイブリッドを、またコンパクト・カーを電気自動車にしたモデルも登場するはずだ。
DS7クロスバックEテンスも基本的にはDS3クロスバックEテンス同様、ガソリンやディーゼルと大きな差別化は行われていない。ハイブリッド車の場合、自らの存在を主張するためにバッヂをはじめ、いろいろなところにエコをイメージさせる青や緑のアクセントが配されることが多い。しかし、ブランドの美学に反するということで、DSは青や緑を使った差別化を一切行っていないのだ。リア・ゲートに配された"ETENSE 4×4"のエンブレムが電動化モデルを示す数少ない判別点なのだが、それすら青や緑ではなく通常モデルと同じクローム仕立てとなっている。いかにもデザインにこだわるDSらしい話だ。
しかし、違いのない外観とは裏腹に、DS7もまた、ガソリンやディーゼルにはない魅力が詰まっていた。
一番印象的だったのはパワートレインの力強さだ。1.6ℓ直4直噴ターボと前後に1つずつ、計2つのモーターによるシステム総合出力は300ps/53.0kgm。最大トルク40.8kgmを発生する2.0ℓ直4ディーゼル・ターボもかなりトルキーでスポーティな走りを楽しむことができる。しかし、ハイブリッドの方が車両重量は344㎏重いにもかかわらず、Eテンスにはディーゼルを上回る速さと力強さが備わっている。さらに、モーターのおかげでアクセレレーターの操作に対するレスポンスが速く、また、ガソリン・ベースだから高回転域まで使える上に300psもあるのでパワー感も抜群。アウディのSラインとか、BMWのMパフォーマンスのように通常モデルとは別扱いのスポーティ・グレードとして売り出した方がいいと思うくらい速くて刺激的なのだ。にもかかわらず必要とあれば、13.2kWhのリチウム・イオン電池によるモーターのみでの走行も可能なのだから感心するしかない。そのときの航続距離は最大で58㎞(WLTPモード計測)。電池の充電状況や走り方にもよるが、モーターだけで135㎞/hまで出すことができるという。
前輪だけでなく後輪にもモーターを付けたおかげで、念願の4WDを実現できたのもこのハイブリッド・システムの大きなメリット。PSAに自社製の4WDがラインナップされるのは2012年から数年に亘って販売されたハイブリッド4以来。リア・モーターの出力は110ps/17.2kgmとそこそこ力強いので、ちょっとした悪路なら朝飯前。降雪地帯に住んでいるなど4WDが必須な人には朗報だ。ちなみに同じPSAのブランドでも、プジョーやシトロエンにはリア・モーターのないFFモデルも設定されることになる。
DS7クロスバックEテンスもガソリンやディーゼルと同じEMP2プラットフォームを用いているが、モーターを収めるために床面だけでなく、サスペンションもまったく新しいものに変更している。ダンパーをかなり寝かせるなどけっこう複雑な機構を用いているのだが、走りへの影響は感じられない。可変ダンパーのおかげで乗り心地はDS3よりも上質で、二重ガラスなどDS3以上の遮音技術で騒音対策も万全だ。
プラグイン・ハイブリッドを採用した一番の目的は二酸化炭素排出量の削減である。しかし、DS7クロスバックEテンスの場合、それ以外の利点、すなわち力強いパワートレインや4WDを手にすることができた恩恵もまたとても大きい。燃費よりもむしろこちらの方に魅力を感じる人が多いのではないだろうか。
■DS7 クロスバック E-テンス 4×4
駆動方式 フロント横置きエンジン+前後モーター4輪駆動
全長×全幅×全高 4573×1906×1625㎜
ホイールベース 2738㎜
トレッド 前/後 1621/1598㎜
車両重量 1825㎏
動力形式 直列4気筒DOHC16V直噴ターボ+モーター×2
総排気量 1598cc
ボア×ストローク 77.0×83.0㎜
エンジン最高出力 200ps/6000rpm
エンジン最大トルク 30.6kgm/3000rpm
モーター最高出力 最大トルク 110ps/17.2kgm(前) 110ps/17.2kgm(後)
変速機 8段AT
サスペンション形式 前/後 ストラット式/マルチリンク式
ブレーキ 前/後 通気冷却式ディスク/ディスク
タイヤ 前後 235/45R20 100V
文=新井一樹(ENGINE編集部) 写真=DSオートモビルズ
(ENGINE2020年2月号)
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
PR | 2025.02.27
CARS
これが最後の"天使の分け前" 純内燃エンジンのコンチネンタル GT…
PR | 2025.03.03
CARS
解良さん、アルカナの調子はどうですか? トミーカイラZZの生みの親…
2025.03.01
LIFESTYLE
ライカ史上最速! 最大30コマ/秒で追随するAF搭載の新機種、ライ…
2025.02.28
LIFESTYLE
フード・ライター小松めぐみが見つけた美味しいお店「日本料理 山崎」…
PR | 2025.02.26
CARS
これがレクサスLMの本命 6人乗りのversion Lにモータージ…
2025.02.26
LIFESTYLE
McLaren 750S SPIDER × HERMÈS スタイリ…
advertisement
2025.02.27
一泊6200円から! 宿泊値段が急騰するビジネスホテルの代わりは、コンテナホテルだ! ただいま各地に急増中
2025.02.26
80歳と90歳の女性が愛用していたRX-7とロードスター マツダの古いクルマへの取り組みの象徴として活用
2025.02.14
「私なら門前払い」 ホンダと日産の経営統合破談会見を見て、国沢光宏氏(モータージャーナリスト)は何を思ったか
2025.02.27
日産プリメーラの先祖、初代バイオレットの極上車も登場 旧車専門誌の読者が選んだベスト10+1台
PR | 2025.02.26
これがレクサスLMの本命 6人乗りのversion Lにモータージャーナリストの島下泰久氏が試乗 そのかけがえのない価値とは?