数年前の雪上試乗会で味わった、4WDのジャガーXEの身のこなしが今も忘れられない。普段は頑として滑るそぶりを見せないのに、スラローム・コースでモードをダイナミックに切り替え、トラクション・コントロールを解除したとたん、一気にテール・スライドを許容する。慣れると思うままに向きを変えられるのが、面白くてたまらない。
ただその代わり、ドライ路面のステアリング・フィールは後輪駆動モデルにわずかに及ばないな、と思った。ややスロウに感じられるが、決して反応が鈍いわけではなく、操舵の量とノーズの動きの関係がきちんと同期していて、飛ばせば飛ばすほど、道路の曲率が小さくなればなるほど、その特性がありがたく感じられるステアリングの味つけは、後輪駆動のジャガーの美点であり、エントリー・モデルのXEにもきちんと受け継がれている。低μ路で安定している上に、時にスリリングさも楽しめる4WDを取るか、それともオンロードでのステアリング・フィールを重視し、後輪駆動にするか。それはかなり悩ましい選択だったのだ。
ところが最新のXEディーゼル4WDに乗ったら、そんな迷いはすっかり晴れた。巡航速度が高く強い雨の降る第二東名や、路面温度が氷点下になる深夜の箱根越えも、4輪駆動らしくなんなくこなすいっぽうで、ステージがワインディングになれば、ステアリングを切ったら切っただけ、まさに意のままに鼻先が動くのである。
2ℓディーゼルはサウンドとフィールはもう少し色気があってもいいかな、とは思うものの、力強さにかけては申し分ないし、制御が緻密な8段ATとの相性もよく、1.8トン近い車体を余裕を持って引っ張っていく。それでいて、小食なところも素晴らしい。意図的に省燃費走行をすることはまったくなかったけれど、約500㎞走って積算燃費計の数値が15㎞/ℓを下回ることはなかった。
これぞオールマイティなGTサルーンだ。機会があればぜひ、もう一度雪上でお相手したいものである。
文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=阿部昌也
無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。
無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。
advertisement
2024.11.23
LIFESTYLE
森に飲み込まれた家が『住んでくれよ』と訴えてきた 見事に生まれ変わ…
PR | 2024.11.21
LIFESTYLE
冬のオープンエアのお供にするなら、小ぶりショルダー! エティアムか…
2024.11.21
CARS
日本市場のためだけに4台が特別に製作されたマセラティMC20チェロ…
PR | 2024.11.06
WATCHES
移ろいゆく時の美しさがここにある! ザ・シチズン の新作は、土佐和…
2024.10.25
LIFESTYLE
LANCIA DELTA HF INTEGRALE × ONITS…
2024.11.22
WATCHES
パテック フィリップ 25年ぶり話題の新作「キュビタス」を徹底解説…
advertisement
2024.11.16
こんなの、もう出てこない トヨタ・ランドクルーザー70とマツダ2 自動車評論家の渡辺敏史が推すのは日本市場ならではの、ディーゼル搭載実用車だ!
2024.11.15
自動車評論家の国沢光宏が買ったアガリのクルマ! 内燃エンジンのスポーツカーと泥んこOKの軽自動車、これは最高の組み合わせです!
2024.11.20
抽選販売の日時でネットがざわつく 独学で時計づくりを学んだ片山次朗氏の大塚ローテック「7.5号」 世界が注目する日本時計の傑作!
2024.11.19
エンジン時計委員、菅原茂のイチオシ 世界限定1200本! グランドセイコー ヘリテージコレクション 45GS 復刻デザイン限定モデル
2024.11.23
森に飲み込まれた家が『住んでくれよ』と訴えてきた 見事に生まれ変わった築74年の祖父母の日本家屋 建築家と文筆家の夫妻が目指した心地いい暮らしとは?