往年の映画ファンであれば、ジュディ・ガーランドと聞いて、すぐさま『オズの魔法使』(39)の少女ドロシーを思い浮かべることだろう。彼女が歌った劇中歌『虹の彼方に』は、アメリカ映画史に残る最も有名な曲のひとつで、2001年には全米レコード協会による「20世紀の名曲」第1位にも選ばれている。
この作品で人気を得たガーランドは当時17歳。その後も『若草の頃』(44)や『イースター・パレード』(48)、『スタア誕生』(54)といった主演映画で1940年代、50年代を代表する大スターとなった。だが、私生活はめちゃくちゃで、薬物依存やアルコール中毒による周囲との衝突はしばしば。生涯で5回の結婚を繰り返したものの(女優のライザ・ミネリは2番目の夫、ヴィンセント・ミネリとの子供)、1960年代には宿泊したホテル代が払えないほど生活が困窮。そして1969年の6月に、鎮静剤の過剰摂取により47歳の短い生涯を閉じることになったのである。
舞台劇『End of the Rainbow』をベースにした映画『ジュディ 虹の彼方に』で描かれるのは、彼女が亡くなる半年前の物語である。生活を立て直すために、ロンドンのナイトクラブで行われる長期間のコンサートを引きうけたガーランド。開幕当初こそ観客を魅了したものの、次第に薬物の量が増え、ステージにも酩酊状態で現れるようになる。そんな彼女の精神不安の基となったのが、子役時代の過酷な体験である。子役スターとしての華やかさは表向きだけのもので、実際には過密なスケジュールをこなすため、興奮剤や睡眠薬、減量剤を大量に投与されていた。まさに大人の操り人形として、普通に青春を謳歌することも許されなかった、孤独な少女の姿が浮き彫りにされていくのである。
だが心に闇を抱えた、ワガママなトラブルメーカーとしてのガーランドを描きながらも、映画の彼女は不思議なほど魅力にあふれている。それは本作でアカデミー賞主演女優賞を獲得した、レネー・ゼルウィガーの力に負うところが大きい。伝説の女優を見事に現代に甦らせた彼女は、ガーランドのカリスマ性や気難しさだけでなく、時にユーモラスで愛情深い一面を表現しているからだ。だが何より驚くのは、全編を彩る名曲の数々をゼルウィガー本人が歌っていること。もともとゼルウィガーの声は高めだったが、1年間の猛特訓の末、独特の哀愁を帯びた、あのガーランドの低くて深みのある歌声を習得したのだという。とりわけ彼女が最後のステージで歌う『虹の彼方に』が素晴らしい。その圧巻の名唱は、絶望を繰り返しながらも、幸せをあきらめなかったガーランドの人生そのものを象徴している。
『ジュディ 虹の彼方に』は3月6日(金)全国ロードショー。118分。配給:ギャガ
文=永野正雄(ENGINE編集部)
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