2019年12月に上陸したVWポロ・サイズのスモールSUV。ポロよりも全長は55㎜、全幅は10㎜、全高は55㎜大きく、全長×全幅×全高=4115×1760×1580㎜。ホイールベースはポロと同じ2550㎜。車両重量=1270㎏。エンジンは1リッター直3ターボで、最高出力116ps/5000~5500rpm、最大トルク200Nm/2000~3500rpmを発生、7段自動MTを介し、前輪を駆動する。内装もポロに似たデザイン。荷室は5名乗車で455リッターとポロより100リッター以上広く、使い勝手がいい。車両本体価格=335.9万円。
これだけSUVが多くなると、Aだと思っていたら実はBだったなんてことが出てきそう。でもTクロスならそんなことはなさそうだ。とにかく見た目がフォルクスワーゲンそのもの。適度な遊びもスタイリングに取り入れてはいるけれど、クールな表情を崩さないところがこのブランドらしい。そして日本車では絶対ありえない重厚極まるドアの閉まり音。インテリアはブルーとオレンジの2色使いのステッチで爽やかさを届けつつ、カチッとしたシートの掛け心地はフォルクスワーゲンそのものだ。
だったらゴルフやポロでいいじゃないかという人もいるだろうが、個人的には積極的にTクロスを選びたくなる部分があった。高さに余裕があるキャビンはゴルフやポロのような窓の狭さからくる圧迫感がなく、ターボ・エンジンとデュアルクラッチ・トランスミッションのコンビに唐突感はなく、脚も大径タイヤの当たりの硬さの奥におおらかなストロークを感じる。生産を終えてしまったビートルを思わせるほのぼの感が心地よかった。
昨年秋の消費増税以降、国内自動車販売が全体的に落ち込む中で、発表からの2カ月で1800台以上を受注したというからなかなかの人気だ。扱いやすいサイズのコンパクトSUVに注目が集まっている上に、VWとしては久々の新型モデルなのだからそうでなければ困る。ちょっと強面だが、きりっと引き締まった律儀で実直な内外装は、整理整頓されたキッチンのように清潔でVWらしい。ポロと同じホイールベースながら、背の高さを活かした室内スペースは外観から想像するよりずっと余裕があり、アイ・ポイントの高さもあってルーミーだ。
今のところ日本仕様は1ℓターボFFの導入記念仕様のみだが、ポロに搭載されるユニットよりも強力な116psと200Nmを生み出す1ℓ3気筒直噴ターボ・エンジンは軽やかに健康的に回る。さすがに高いギヤのまま穏やかに加速するような場合は3気筒らしいくぐもった振動が若干伝わってくるが、それ以外は小さな3気筒エンジンのハンディを感じさせないほど洗練されている。安心できるスタビリティ、充実した安全運転支援システムなど実用車として隙なし。
コンパクト・ハッチ、ポロの魅力をさらに高めるべくシートの着座位置を100㎜上げたのが、VW最小のSUV、Tクロスだ。背の高さ、つまり視界の広さで人気を博すSUVだが、それでいてコンパクトなボディ・サイズは、さらに支持を集めるのは間違いなし。ポロと比べると、2550㎜のホイールベースは同値だが、4115×1760×1580㎜のスリー・サイズはわずかに大きく、車重は1270㎏で約110㎏重い。
ポロと同じ1.0ℓ3気筒ターボは116ps/20.4kgmへと出力が引き上げられ、7段DSGを介して前輪を駆動する。本格SUVというよりもシティ派SUVといった感じで、高い着座姿勢と四角いボディにより、ポロよりも四隅の車幅感が掴みやすい点もいい。後席は前席よりさらに高く、前席による圧迫感がない快適な座り心地。140㎜のスライド機能を使うことでミニバンのような広々とした足元空間を得られるのも嬉しい。背が高くても操縦性はVWのそれ。アメリカのフリーウェイで操縦安定性の高さも確認済みだ。
"ホワイト・スプレマシー白色優越主義"はつまらない。世のなかには、白だけでなく、さまざまな色があってこそ楽しい。私が、T-クロスに初めて接したのは、ほぼ1年前。2019年3月のマヨルカ島だった。そのときフォルクスワーゲンは、パルマ空港に受付けを設置。飾り付けに使われた、赤や青や黄色の装飾が目に飛び込んできた。
T-クロスは内外装ともに、カラフルなのがセリング・ポイント。そこが魅力的である。操縦感覚も"無彩色"ではない。ハンドリングはいいし、エンジンもマニュアル・シフトを使って3000rpmから上を使うように走れば、かなり活発で、ぱっと明るい気分になれるだろう。私なら、ホイールを含めた外装色もダッシュボードも同系色になる「オレンジ」や「マケナターコイズ」にも惹かれる。ブラックやホワイトにしてもオレンジなど差し色の使いかたがうまい。気分が浮き立つ。日本をはじめ西欧の多くの都市で、ニュートラル・カラーの車体色が流行りだけど、このクルマでもって、ホワイト・スプレマシーを吹き飛ばそう。
フォルクスワーゲンの"TさいSUV"、T-クロスは、同社のポロをはやりのクロスオーバーに仕立て直したニュー・モデル。エンジンもポロと同じ1ℓ直3ガソリン・ターボだけれど、これがなぜかポロと違って3気筒くささが皆無。特に低回転域では直4に引けを取らない滑らかさにくわえてたっぷりとしたトルクを生み出してくれるので軽快な走りが楽しめる。5000rpm付近では3気筒特有のバイブレーションが顔をのぞかせるものの、その程度は軽く、6000rpmまできれいに回るのだから立派なもの。
足まわりの仕上がりにも安っぽさはなく、身のこなしはどっしりと安定しているのに路面の段差をガツンとは伝えない優しさも持ち合わせている。だから高速道路ではクラスを超えた快適性を味わえる。アダプティブ・クルーズ・コントロールやアクティブ・レーンキーピングの仕上がりはフォルクスワーゲンのなかでも特上の部類。ちなみに身長172㎝の私が前後に腰掛けて後席のニールームは25㎝ほどもあったから、室内は「全然Tさくない」と思います。
(ENGINE2020年4月号)
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