レンジローバー・スポーツに加わったプラグイン・ハイブリッド・モデル。300psを発揮する2ℓ4気筒ユニットと116psを発揮するモーターを組み合わせ、8段ATを介して4輪を駆動する。フロント・グリルに組み込まれた給電口は200Vの普通充電に対応しており、フル充電時であればモーターのみで48㎞走行することが可能。0-100㎞/h加速は6.7秒、最高速は220㎞/hに達する。全長×全幅×全高=4855×1985×1800㎜。ホイールベース=2320㎜。車両重量=2600㎏。車両価格=1276万円。
レンジローバーにもプラグイン・ハイブリッドの波!レンジローバー・スポーツは2ℓ直列4気筒のガソリン・エンジンとモーターの組み合わせで404ps。そして実は、エコロジーにも積極的に取り組んでいます。レンジローバー・スポーツのアルミボディ構造はリサイクル素材を活用し、軽量化と燃費、CO2排出の低減、パフォーマンスの向上に貢献していますが、さらに車両の85%がリサイクル可能、95%が回収可能となるように設計されています。そしてエコといえば、車内の温度上昇を防いでエアコンの稼働を抑えるため、乗員が車を降りてドアがロックされると、オート・サンブラインドが自動で閉まります。
しかもジェスチャーでも動くので、車内で前後に手を動かして操作が可能。そして今、タイムリーな嬉しい機能としてイオン空気洗浄テクノロジー。これによってアレルギー物質やバクテリア、車内の臭いを取るだけではなく、イオン化した微粒子が物質の表面に吸着して空気を洗浄してくれるそう。もはや車はシェルターにもなるかもしれません。
この日の私は朝一番にアストン12気筒に「内燃機関スゴイ!」と洗脳された直後、今度はこのクルマによって「電気スゴイ!」との感情が脳内を走った。あまりの落差に耳がキーンとなった。英国高級車ブランドがついに投入したPHEVは、いつもの2ℓ4気筒ターボ(300ps)に、わずか116psのモーターを1個だけ追加したものだ。こうしてスペックを羅列するだけだと、さほど見るべきものはない気がしてしまうが、実車はこれら文字から得られる先入観の数倍はスゴイ!
このクルマは"スポーツ"というカジュアルラインといっても、あのレンジ・ローバーの兄弟車。どう見ても巨体であり、複雑なハイテク動力システムを抱えた車重は2.6t超。それなのに、たかが2ℓ、しょせん4気筒にモーターをつけただけで、ここまで静かに滑るごとく、やんごとなく上品に、そして乗り手のケツを蹴り上げるがごとく力強く走るとは、やっぱり電気スゴイ…というか、これをつくったランドローバーがスゴイ!!
2ℓエンジンでも、ターボとモーターという2つのパワー・サプリを与えると、びっくり仰天するほどの加速が味わえる。私のマイカー(山荘往復用)もレンジローバー・スポーツで、奇跡的に13万㎞をほとんどノー・トラブルで走っていた。昔の英国車では考えられないことなのだ。唯一の問題はフロントガラスを3回も交換したこと。レンジローバーが使うガラス・メーカーの耐久性の問題だと思う。
今回テストしたのはプラグイン・ハイブリットなので、バッテリーだけでどれだけ走れるのかが気になるところ。カタログでは48㎞と記載されている。まあまあの距離だ。お買い物など日常で使うならEVのみで走れそうだ。最大トルクはV6スーパーチャージャーのエンジンを上回るが、V6以上の好燃費だ。加速はその巨大なトルクが背中をシートバックに押し付ける。サスもSUVとは思えないほど、しっかりとしている。このパワー・プラントは近い将来、ディーゼルに取って代わる役割なのかもしれないので、将来の主役エンジンとなるだろう。
レンジローバー・スポーツは万能選手だと思っている。オフロードの走破性の高さはあらためて言うに及ばず。おそらく普通に生活していれば死ぬまで遭遇しないだろうと思うくらい過酷な路面状況でも頼もしく走ってくれる。いっぽうで、エアサスがもたらす乗り心地は"レンジローバー"の名に恥じないもので、下手なセダンよりもずっと快適だ。加えて、サーキットを走っても音を上げないレベルのスポーティな走りまで堪能できる。
ディーゼルなら936万円からという、レンジローバーよりちょっとお安い価格設定も魅力的である。そしてここに満を持してPHEVが加わった。2.6トンもあるのに、EVモードで50㎞近くも走行できるという。エンジンとモーターを併せたシステム出力/トルクは404ps/65.3kgmで、3ℓ直6ターボよりもパワフルだ。普通充電のみの対応だが、自宅に充電設備が用意できれば、近場の外出ならガソリンを一滴も使わずにすむかもしれない。万能選手の"万能"に、またひとつあらたな能力が加わった。
このガイシャ、「電気自動車にもガソリン・エンジン車にもなる」ところがスゴイ ! 日常シーンを考えれば30kmも走れれば十分だから、クリーンでスムース、そしてトルキーな走りの電気自動車は魅力的。とはいえ、たまには遠出もしたい。でも、ロング・ドライブとなると電欠が心配だし、充電もストレスになってくる。そんなライフスタイルに強い味方なのがPHEV。普段は外部充電により電気を使用。レジャーや旅行はガソリン・エンジンがあるからバッテリーが空になっても止まる心配もストレスなし! と見事にそれぞれのメリットを使い分けられる。
私が試乗した時、すでにバッテリー容量はわずかだった。エンジンを発電機としての充電は行わないので、セーブ・モードにして回生ブレーキで地味に電気を貯め、EVモードを試してみたり。そもそもレンジローバー・スポーツは、オンロードからオフロードまであらゆる環境下で頼もしいパフォーマンスを発揮するSUV。そこに新たな動力源が加わることで、さらに魅力が増した。
(ENGINE2020年4月号)
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