2020.03.22

CARS

【試乗記】ポルシェ・マカンSに小川フミオらが試乗! 「ポルシェのアレンジ能力が高い」

ポルシェ・マカンSとは、どんなクルマ?

カイエンの弟分として、アウディが開発したプラットフォームを使って作られたポルシェのSUV第2弾がマカン。マイナーチェンジを機に搭載されるエンジン群が全機種アウディ製となった。外観は最新世代のポルシェのラインナップに共通するモチーフがライト類などに取り入れられたほか、装備ではインフォテインメント系がやはり最新世代のものに入れかえられている。マカンSが搭載するのはシングル・ターボ過給の3ℓV6。変速機は7段PDK。全長×全幅×全高=4684×1926×1624㎜。ホイールベース=2807㎜。価格は859万円(税込)


小川フミオの意見! ポルシェのアレンジ能力が高い

音楽の楽しみはアレンジにある。たとえばポール・マッカートニーがザ・ビートルズ時代に作った「ブラックバード」。ジャズ・ピアニストのブラッド・メルダウは美しいメロディを活かしたアレンジをし、プリンス・ファミリーだったシーラEは意味をアレンジ。黒人の権利と読み替えて美しい歌に仕上げている、というぐあい。ポルシェもアレンジ力が高い。カイエンやパナメーラなどスポーツカー以外のモデルだって"ポルシェならどう仕上げるか"というアレンジ力で興味を引いた。


マカンも例にもれず、全長4.7mのSUVをポルシェならどう解釈するか。そこに関心が。結果はポルシェならではの剛性感と操縦性が印象的だ。脚を少し前に投げ出すような運転姿勢にはじまり、重めの操舵感、ダイレクトな反応のエンジンと、いまも他と一線を画すスポーツ(的)カーなのだ。2019年にマカンSはV6エンジンが新しくなり、乗り心地が向上。音楽ならメロディアスになった感じ。そうそう、静粛性が上がったので実際に「ブラックバード」を聴くのも楽しい。


岡崎五朗の意見! 走りはクラスの頂点

ポルシェの最量販車種であるマカン。次期モデルはEVになるとアナウンスされているが、そんな博打が成立するはずもなく、エンジンを積んだ現行モデルも継続販売することになっている。そういう意味で、先日のマイナーチェンジは将来登場するであろうEVマカンが軌道に乗るまで(いったいいつになるというのだろう?)の間、現行マカンを延命するための非常に重要なアップデートと言える。が、実のところメカはそんなに変わっていない。


サスペンションの一部がアルミ化されたほか、液晶モニターの大型化やテール・ライト周りのアップデートがメインだ。とはいえ、登場から6年経ったというのにマカンのパフォーマンスは依然としてこのクラスの頂点に君臨する。21インチ・タイヤを苦もなく履きこなす脅威のボディ剛性、ソリッドなステアリング・レスポンス、それでいて上質な乗り心地。これらはまさに911に代表されるポルシェ味そのもの。走りでSUVを選ぶならマカン一択という状況は、まだしばらく続きそうだ。


河村康彦の意見! SUVのスポーツカー

正式名称発表以前、"ベイビー・カイエン"なるフレーズで「カイエンの弟分」という立ち位置がアピールされたのがこのモデル。しかし、いざ蓋が開くと、全幅は当時のカイエンとほとんど変わらず。一方、全長と全高は明確に縮小されたことで、結果としてSUVながらも兄貴分に対して"ロー&ワイド"の傾向がグッと強くなっていた。実際、着座位置も低くなったドライビング・ポジションを筆頭に、あらゆる面でカイエンよりもさらにスポーティに変貌。もちろん、その効果はロールの減少や接地性の向上など、"走りの実利面"においても明確だった。


今回テストしたSグレードは、シリーズの中堅どころ。上位にはGTSやターボといったさらなる"強者"も用意されるが、それでも354psという最高出力や5.3秒の0-100㎞/h加速のスペックに不足があろうはずもない。その走りを表現するには、まさに"SUVのスポーツカー"という一節がピッタリ!「ウチのモデルは"全てがスポーツカー"」という謳い文句が強い説得力を持つ。何とも凄い1台なのだ!


藤島知子の意見! 最も馴染むSUV

独自のブランド価値をクロスオーバーSUVに投影し、カイエンでその成功例を作り出してみせたポルシェ。いまでは世界の名だたるプレミアム・ブランドが追従し、多種多様なSUVが登場している。そうした中、ドライバーの身体に最も馴染むSUVといえるのがポルシェ・マカンSだ。4点照射で照らすLEDヘッド・ライト、リヤをシャープに横切るテール・ランプなど、そのスタイリングには最新世代のポルシェの先進性を表現することも忘れていない。


V6 3ℓエンジンを搭載するマカンSだが、その走りはスポーツカーとして「鋭さ」を表現するのではなく、タイヤの状態を確実に伝えるステアリングの手応え、タイヤが路面を捉えて駆け出すトラクション、ブレーキ・パッドがディスクを掴む効き具合など、それぞれの「感触」をドライバーに伝えてくる。匠が磨き上げた精緻な道具を使いこなすような心地よさは、どのポルシェに乗っても変わらない。それが最低地上高230㎜の背が高いSUVでも同じということに、驚きを感じずにはいられないのだ。


藤野太一の意見! ポルシェが作れば!

これまでSUVを購入したことはないのだけれど、どれか1台をと言われれば、きっとマカンを選ぶ。初代が登場した2014年頃、VWグループのMLBプラットフォームを使用し、アウディQ5とは従兄弟関係にあると事前に聞かされ、あまり期待することなく試乗して衝撃を受けた。ポルシェが作ればこんなにも気持ちよく走るSUVができるのかと。


あれから約5年がたち、昨年マカンはモデルチェンジした。従兄弟のQ5がMLBevoを採用するなど代替わりするなか、プラットフォームやパワートレインは基本的に先代を踏襲。主な変更点は、いまどきのADAS系やインフォテインメント・システムの強化というから、またそれほど期待せずに乗り込むことになる。Sではなくて素のモデルでも十分だとは思うけれども、かくしてマカンの魅力は今もまったく色褪せていなかった。そしてエクステリア・デザインのフェイスリフトを手掛けたのが、ポルシェAGに在籍する日本人デザイナーの山下周一氏だと聞けば、よりこのマカンに親近感がわくというものだ。


(ENGINE2020年4月号)

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