2020.04.10

CARS

アルピーヌA110に加わった、よりスポーティなモデル"S" 違いは明確、あとはお好み次第で

ENGINE本誌で長期リポート87号車として毎日のように乗っているアルピーヌA110。そのスポーツ度をさらに高めたモデルが、新たに追加された"S"だ。筑波サーキットで試乗会が行なわれると聞き、喜び勇んで駆けつけた。

デビューした当初こそ話題性もあって爆発的に売れるが、年を経るとともに急速に萎んでいくスポーツカーが多い中にあって、このアルピーヌは逆に、売れ行きがどんどん増しているというから頼もしい限りだ。


一昨年9月にまずは初回限定車のプリュミエール・エディションから導入を開始し、その後カタログ・モデルのピュアとリネージを加えて、この2月までに日本で販売された数は約500台。


昨年は349台で、今年はもっかのところ昨年同期比を上回る成績を上げているというのだから、長期リポート87号車A110リネージ担当者としては、クルマは借り物だから何の貢献もしていないにもかかわらず、なんだか誇らしい気分になってくるのである。どやッ!


とはいうものの、実はこのところいささか気になる話題があった。このA110に新たに加わった"S"の評判がすこぶるいいのである。


先々月号では本誌アライ記者が「俊敏な動きがより際立つ」とベタぼめだったし、先月号のエンジン大試乗会で乗ったジャーナリストの面々も、「"S"はもっと良い」だの「スポーツカーの完成形」だのと囃し立てるものだから、本当にそんなに良くなっているのか、せっかく美人を口説き落としたら、あとからもっと評判の美人が現れたような感じで、モヤモヤした気分でいたのである。


と、そこへ届いたのがA110Sのサーキット試乗会を筑波で開催するという案内。もちろん行ったるでェ、と即座に手を挙げて、総走行距離1000㎞を目前にした87号車に乗って筑波を目指した次第だ。


ALPINE A110S

インテリアのステッチの色は、A110のブルーに対して、A110Sではオレンジとなる。また、ステアリングホイールの上端部には同じくオレンジ色のセンター・マーカーが入れられる。

シートはピュアと同じサベルト製の軽量モノコック・バケットだが、表皮はレザーのほかに滑りにくいディナミカ地を中央部に配している。ディナミカはそのほかにもステアリングホイールやルーフライニング、サンバイザー、ドア内張りなどに多用されており、レーシーな雰囲気を醸し出している。


サーキット仕様ではない

試乗前のプレゼンテーションを聞いてまず驚いたのは、この"S"はサーキット仕様として開発されたものではまったくない、という点だった。あくまで公道でのドライビングに焦点を合わせており、日常の使い勝手はそのまま、すなわち、乗り心地も遮音性も乗降性も、すべてを犠牲にしていないというのだ。


では、どう違うのかと言えば、ノーマルのA110がワインディングでのドライブをもっとも楽しめることに焦点を当てているのに対して、Sはそこにさらに究極のドライビング精度や効率を加えたものなのだという。具体的には、よりハイパワー化されたパワートレインと専用にチューニングされたシャシーによりスポーツ性能を大幅に高めているということだが、これについては数字を上げてもっと細かく見ていこう。


まず、パワートレインについては1.8ℓ直4ターボの過給圧を0.4バール高めるなどして、最高出力を40psアップの292psに引き上げ、その発生回転数も420rpm高い6420rpmになっている。


最大トルクは32.6kgmのままで、2000rpmからそれを発生するのも変わらないが、その持続回転数はこれまでの5000rpmから大幅に引き上げられて、6420rpmまでフラットに続くようになっている。すなわち、最高出力が発揮される回転数まで最大トルクが出続けるわけで、その分、高回転域でより伸びやかな加速を楽しむことができるという理屈になる。


グレーの鍛造アロイホイールにオレンジ色のキャリパー。

ルーフをFRPからカーボン製に変更して2㎏弱の軽量化。

フロント、リア、サイドのエンブレムはブラックになる。


一方、パワーアップにあわせてシャシーも大幅に強化されている。スプリング・レートが約1.5倍に高められ、ダンパーもそれに応じてチューニングされている他に、スタビライザーの太さが約2倍になり、これまた約1.5倍の強度を得ているのだそうだ。


さらに最低地上高も4㎜下げられ、重心を最適化。ホイールはピュアと同じデザインで色がグレーに塗られた18インチのフックス製鍛造アロイだが、タイヤは前後とも10㎜幅広のものを履いている。


そのほか、ルーフがFRPからカーボン製に変更され、2㎏弱の軽量化が図られている。ただし足回りの強化での重量増があるため、車検証上の車両重量は1110㎏でピュアと同じ。車検証は5㎏刻みなので、実際には若干重くなっているらしい。それでもパワー・ウェイト・レシオはピュアの4.3㎏/psから3.8㎏/psに向上している。



俊敏な走りと高回転域の伸び

試乗は、まずは途中にパイロン・スラロームを設けた本コースをピュアとSで先導走行付きで3周ずつ走り、そのあとパイロンを排除し、Sで自由に3周走る方式で行なわれた。


正直なところ、これだけでは違いはわからない、と思いきや、パイロン・スラロームを走っただけで違いは歴然。ステアリングの操作に対するクルマの動きが、Sの方が断然俊敏なのである。


ロールの大きさも随分と違っており、サーキットでなくてもコーナーを曲がればその違いは誰にでも分るはずだ。乗り心地に関しては、サーキットの路面ではわからなかったが、かなり固められた足を持っているのは一目瞭然だった。


さらに、ハンドリングの違いに加えて印象的だったのは、エンジン・サウンドもSの方がより大きく、ワイルドに感じられたことだ。走り出した瞬間から違うと思ったが、それがさらに際立つのは高回転域まで踏んで行った時だ。パワーバンドが拡がっているので、当然ながら一番上までしっかり使うことになり、その際の伸びやかな加速とサウンドをしっかり味わうことができるのだ。


より俊敏なハンドリングはもちろんだが、合わせて高速走行時の加速の気持ち良さが、このクルマのキモなのだと感じた。この日の試乗ではわからなかったが、Sはリア・サスにトーインを付けるなどして、直進安定性の向上が図られているという。


実は、ノーマルのリネージでは、高速で少し車体が浮いて横風に弱い感じを受けたことがあるので、その点が改善されているのなら朗報である。


というわけで、どっちがイイか、と問われれば、ウーンと唸らざるを得ない。しなやかで優しい方がいいか、ピキピキして激しい方がいいか、これはもう好みの問題でしょう。


■アルピーヌA110S


駆動方式 ミドシップ横置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4205×1800×1250㎜
ホイールベース 2420㎜
トレッド(前/後) 1555/1550㎜
車両重量 1110㎏(前480㎏/後630㎏)
エンジン形式 直列4気筒DOHC16V 直噴ターボ
排気量 1798cc
ボア×ストローク 79.7×90.1㎜
最高出力 292ps/6420rpm
最大トルク 32.6kgm/2000rpm
トランスミッション 湿式デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション(前後) ダブルウィッシュボーン/コイル
ブレーキ (前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 215/40ZR18 / 245/40ZR18
車両本体価格(税込み) 899万円


文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬


(ENGINE2020年5月号)

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