欧州の中でもとりわけ新型コロナウイルスの被害が甚大なイタリア。 この未曽有の危機に対応すべく、地元の自動車業界も積極的な支援を行っている。
新型コロナウイルスを取り巻くイタリアの状況は、未だ予断を許さない。4月第3週に入ってからも毎日約2000人が回復する傍らで、ほぼ同数が新たな感染者として記録されている死者数も一時より減少したが、なお一進一退が続く。
筆者が住む中部トスカーナ州は北部4州に次いで被害が大きい。拙宅の近隣にも既に救急車が2回到着し、防護服を着たチームが住民を搬送した。本稿執筆中にも上空にはドクターヘリが飛ぶ。
そんな緊急事態に対応すべく、自動車メーカーや関連団体が支援策に乗り出している。対応が早かったのが、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)グループだ。
3月17日、創業一族のアニェッリ家は、救急救命組織「市民保護局」などへ1000万ユーロ(約11億6000万円)の寄付を表明。FCA本体は、フェラーリと共に人工呼吸器150台の寄贈を決めた。
さらにFCAのエンジニア20名が、イタリアの医療機器メーカー「シアーレ」と組んで、呼吸器用電気バルブの組立工程と供給フローの改善に着手。FCAの工場から電気バルブを供給することにより、呼吸器の生産時間を30~50%短縮することに貢献した。
一方、ランボルギーニは、内装とカスタマイズ部門でサージカル・マスクの、コンポジット素材部門で3Dプリンターを駆使した医療保護バイザーの生産を開始している。
クルマのイベント・オーガナイザーも積極的だ。たとえば通常の5月開催を10月に延期した「ミッレミリア」は、ブレシアの総合診療所に50平方メートルの巨大医療用テントを寄贈した。ブレシアは同イベントの伝統的スタート&ゴール地点であり、イタリア北部で最も感染被害が深刻な都市のひとつである。
新型コロナ対策の要である罰則付き外出制限は2度にわたって延長され、目下5月3日までとされている。食品・薬品・文房具・書籍の購入、通院、生産許可業種の通勤等を除き、屋外歩行や運転は禁止されている。
そうした中、FCAがキャンペーン「停まっていよう。君は止まることはないから」を開始した。「停まっていよう」の部分のイタリア語はparcheggiati(君を駐車しよう)で、クルマの使用を控えることを促している。
そのほか、プジョーは「家にいよう。確信と希望を抱いて未来へのドライブは続けよう」、アウディは「家にいてください」、同じくVWグループ系のシュコダも家人がくつろぐ写真とともに「おのおのが家で」と訴える。「クルマに乗るな」とメーカーがアピールするのは、130年以上続く自動車の歴史の中でも初めてのことだろう。
この危機を境に、自動車のありかたはどう変わっていくのだろうか? イタリアの3月の新車登録台数は前年同月比のマイナス86%という恐るべき結果となった。
国民の収入が減少することは必至で、そうなると最新の技術を搭載した高級車よりも、修理が安価かつ簡単な、よりプリミティヴなクルマを求める人が増えるかもしれない。
かつて建築家ミース・ファン・デル・ローエが唱えた「Less is more」(単純は豊かだ)を実現できる企業のみが生き残れる時代が迫ろうとしている。全土封鎖から1カ月が過ぎた今、そのように考えるのである。
文=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA 写真=FCA Group、Ferrari、Automobili Lamborghini、ŠKODA
(ENGINE2020年6月号)
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