バブル期前に登場した我が国の名作家具が、国内よりも海外で高く評価されている。家具の歴史のない国のデザインが国際的な評価を得るため、独自性を追求した結果生まれた、どこか日本を感じさせる個性が魅力なのだろう。世界中のマニアが参加するオークションを見れば、その人気の度合いが分かる。
昨年のロンドンで取引された坂倉準三の低座イス。昭和後期に生産された2脚に、なんと200万円を超える値段がついた。現在も生産の続いている椅子が、新品の15倍近い評価を受けるとは驚きだ。
去年の別のオークションでは、柳宗理のアームチェアも、新品があるにもかかわらず、昭和期に作られた1脚に70万円がついている。
こうした名作家具も、日本国内であれば、中古品として安い値がついてしまうケースが殆ど。国際市場で、ヴィンテージとして高く評価されているのとは対照的だ。
しかも、オークション価格を知る海外のファンからすると、日本の名作家具の新品は、驚くほど安く感じるようで、「本物」と信じてもらえないケースもあったとか。
剣持勇の通称Hacoソファには、世界的に知られる某ファッション・ブランドが銀座の店舗を改装する際、特注のオーダーが入った。さほど知られていないこのソファを選ぶとは、目が肥えている。贅をつくした特注の費用は、新品の数倍だったはず。それでも欧米の高級ソファの標準的な価格でしかない。
倉俣史朗の照明、通称"オバQ"も。実は、ここ何年か生産されていなかった。その間オークションで、50万円近い価格がついたことも。こうした海外での人気も後押ししたのだろう。
この度生産が再開され、6月より販売されることになった。長い事据え置かれていた価格は、原料アップもあり7割増だが、これで世界的評価に相応しい価格に少し近づいた。
そして忘れてはいけないのが、これらは国産ならではのクオリティで生産されていること。登場時と比べ、製造技術が格段に上がっているものもある。デザイン、品質、価格と三拍子揃っているのだ。日本の名作家具は、もっと注目すべき存在である。
文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー)
(ENGINE2020年6月号)
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