いま着けたいのは、“物語” のある時計--。その興味深いストーリーを知るほどに魅力は深まるばかり。ここに現代の名品たちを主役にした珠玉の短編集を編んでみた。
昨年秋、東京でオーデマ ピゲの大々的なエキシビションが開催された。名作アーカイブから新作まで150本以上が一堂に並んだスケールと内容もさることながら、アートとコラボした体験型の展示は従来の概念を超えるものだった。〈時計以上の何か〉。そう名づけられたイベント名がそのままブランドの印象として強く残ったのだ。
来日したベナミアスCEOにそう話すと、わが意を得たりとニヤリ。「来年にはミュージアムをオープンし、それに合わせて新作を出すよ」と言ったのだった。その言葉通り、今年ミュゼ アトリエというミュージアムを本社に開設し、これを記念し、500本の限定モデルを発表した。それが「リマスター01」だ。範としたのは1943年にわずか3本しか作られなかったクロノグラフの1533であり、コンビカラーのケース やティアドロップ型のラグといった古典的な意匠はそれに倣う。
だがこれをただの復刻と捉えるのは早計だ。そこには過去と現代をつなぎ、未来を創るという強い意思が窺える。新しいミュージアムがアトリエを中心に据え、歴史の中から次なる時計を生み出すことを意図したのと同様に、リマスターのネーミングは音楽や映画のリマスタリングからイメージしたという。01ではけっして終わらない。
文=柴田 充
(ENGINE2020年9・10月合併号)
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