ジャーナリスト39人とENGINE編集部員6名、計45人が、雑誌が創刊した2000年からの20年間で「一度は手に入れたい」クルマ20台を選び順位をつけた。選んだ20台についてと、「20年間のクルマをどう見てきて、この1台はどういう基準で選んだのか?」というテーマに答えてもらった。
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創刊20周年、おめでとうございます。創刊号の表紙写真、あのインパクトはすごかった……。この20年を遡ってクルマの変遷をみるに、電子制御技術の高度化によってあり得ないほどの速さを民主的に体験できるようになったのが最大の進化かもしれません。それとはちょっと逆張りで、速い遅いだけではない普遍の価値を供してくれたクルマたちを過去のものを中心に振り返りつつ選びました。
アメリカ車の中でも最大級の排気量、7L V8過給器なしの内燃機がもつ生の迫力を、3ペダルと遅すぎる電子デバイス介入で味わわせてくれる。往年のマッスルカーを彷彿とさせながら、一線級の運動性能を備えるところも素敵だった。
個人的にはエンジンの初代長期テスト車両でもある前期型996GT3がベストだが、年次的にそれが選択できないので、第二候補の前期型997GT3をチョイス。絶妙にアナログなGT1系ユニットのフィーリングが堪らない。
アウディが生み出した初の市販スーパー・スポーツは同門のランボルギーニとの技術共有という条件がありながら、彼ららしい精緻さと斬新さに満ちあふれていた。この20年で扱ったMT車の操作フィールでは、これの右に出るものなし。
近年のフェラーリにおいては間違いなくベスト12気筒であるF140系を、可能な限り無着色で味わえるのも今のうちかも。
乗ればウラカンの方が気持ちいいとか、そもそも数が増えすぎたとか、色々あれどやっぱり12気筒のこれこそがザ・ランボルギーニだと思う。
アストンの系譜としては最も理想的なパッケージのFRスポーツゆえ、シリーズとして投票。個人的にはN430とV12ヴァンテージが白眉。
今日的なカーボンセルのシャシー構造も先取りし、そこに独創のサス・システムを組み合わせた躊躇ない前衛っぷりで再び業界に衝撃を与えた。
イギリスだからこそ成立するプロダクト。世を見回しても、工業製品である以前に工芸品であると言わしめる最後のクルマではないかと思う。
美味なる内燃機関のお歴々に間違いなくその名を残すS54系直6ユニット。その絶頂期を担ったM3も普通に買える機会は徐々に減りつつある。
我々世代の思い描くピニンファリーナ系ジャガー・ルックの面影を色濃く残す最後のモデル。乗り味も往年のジャガーらしさを伝えてくれる。
当初は速さの価格的価値をねじ曲げるKY的な存在だったが、年次熟成と共にいいモノ感がしっかりと伴ってきた。その味わいは今だ衰えず。
個人的にはサイズ感やパワー、シャシー・キャパシティも含めて、今も一番丁度いいメルセデス。C63の絶妙なパッケージも忘れがたし。
バリエーションがどんどんマッシブに尖っていく中、エリーゼは淡々と我が道を行く。いつの時代も一番非力なモデルが一番清らかで楽しい。
ギリギリの危うさと紙一重の気持ちよさを味わわせてくれる、今や数少ないイタリア車。唯一無二にして空前絶後の存在になることは確実。
RX-7をも上回るベストパッケージのRE車。動きの超絶なリニアさは今だ比類するものなし。
ルポGTIのスタビリティとハンドリングのバランス感は別格。VWの底力を思い知る1台。
自然吸気の大排気量V8を街中からサーキットまで気持ちよく楽しめる秀逸なパッケージ。
ともあれシャシーの味付けが絶妙。ミドシップにして素直で懐深いハンドリングを楽しめる。
この車格にしてこれほど本格的なハンドリング・マシンも他にない。MTのフィールも抜群。
某車の二番煎じには終わらずFFで4人乗りパッケージを捻り出した執念。ハンドリングも痛快。
文=渡辺敏史(モータージャーナリスト)
(ENGINE2020年9・10月合併号)
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