エンジン"ホット100"ランキング、選考委員が選んだ20年間の集大成! プラットフォームを完全に一新し、EVの未来とはどうあるべきかを世に問うた意欲作、Iペイスが電気自動車の最上位を獲得!
近代的なエクステリア・デザインに「あのジャガーが?」と誰もが驚いた現行型XJの登場は2009年のこと。そして約10年を経て、ふたたび「あのジャガーが?」と世間を驚かせる意欲作が現れました。それが今回のエンジン・ホット100で、唯一電気自動車としてトップ10 に入ったIペイスです。つまりジャガーは21世紀最初の20年で、2度大きく舵を切ったことになります。
基本、電気自動車は床下にバッテリーを配置しますから、背の高いSUVと相性がいい。でもジャガーは既存のSUVを電気化せず、専用プラットフォームを立ち上げ、しかもただのSUVにはしませんでした。ホイールベースを長く取って電気自動車として最適化しつつ、それでいて背はやや低めで流麗な、現行ジャガー・デザインの流れを汲んだ独自の立ち位置としたのです。振り返れば、XK120もEタイプも、歴代のジャガーは同年代のクルマから比べたらそうとう画期的なカタチでした。日下部保雄さんのいう「出自が滲み出た」Iペイスのスタイリングは、革新的かつ美しい、ジャガーの伝統から生まれたのです。
そして、その美しさとともに伝統としてきたのが速さ。大谷達也さんが「走りの性能とスタイリングの美しさを追求した点もジャガーらしい」という通り、ジャガーは常にスポーティでなければなりません。
前後に2つのモーターを配置し、4輪を協調制御するIペイスの速さは、手練れの松田秀士さんのお墨付き。なんと「(BMWの)M2コンペティションとハンドリング比較。4WDの前後コントロールが素晴らしくコーナリングも負けなかった」そうですし、藤野太一さんも電気自動車ならではの低い重心のおかげで「旋回性能はFタイプをも凌ぐ」とコメントしています。
しかも、Iペイスは単純に速いだけじゃありません。「電気化しても自動車には楽しさがあることを教えてくれる1台です」という小川フミオさんは、その理由をこう続けています。「スポーツカーの楽しさとはなにかを熟知しているメーカーだから、これ、作れたのでしょう」と。
まとめますと、私、本誌ウエダとしては、Iペイスには「流麗なスタイルと緻密な駆動制御と絶妙な脚さばき。“ジャガー”というブランドに求められるものがすべてある」のだと思うのです。
■ジャガーIペイス
全長×全幅×全高=4695×1895×1565mm、
ホイールベース=2990mm、車両重量=2240kg。
最高出力=400ps/4250-5000rpm、最大トルク71kgm/1000-4000rpmの
2基のモーターを前後軸上に配し、4輪を駆動する。
文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=山田真人(走り、内装)/望月浩彦(リア)
(ENGINE2020年9・10月合併号)
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