複雑に機能する時計のムーブメントは、もはや小宇宙といっても過言ではない。スーパースポーツカーにとってエンジンが大切なように、時計選びもエンジン=ムーブメントがキモなのだ!
世界トップクラスのテニスプレーヤー、ラファエル・ナダルとの10年にわたるパートナーシップを記念した最新作が登場した。ストラップを含めて30gという軽量設計と驚異的な耐久性を両立させた「RM 27-04」は、ケース内にラケットのガットを模した1本のスティールケーブルのメッシュを張り巡らし、そこにトゥールビヨンムーブメントを吊り下げるという、時計製造の世界では前例のない構造がまたしても意表を突く。さらに独自素材TitaCarbⓇを採用したケースも革新的。1億円を超える価格も含め、すべてが常識をはるかに超える。
腕時計との長い付き合いの中で現実感から最も遠いのがリシャール・ミル。超高価なのはさておき、予想もしないハイテクや見たことのない素材に驚くばかりで、つねに既存の知識をはるかに超えてくるから困惑する。なので、宇宙から飛来した謎のオブジェではなかろうかと思うようにしている。実はこの非現実が魅力なのかも。
2020年も全仏オープンを制覇したラファエル・ナダル。赤土の王者の手元に輝く新作は、手巻きムーブメントがテニスラケットのストリングを彷彿とさせるスティールケーブルに固定されており、その大胆な発想から生まれた構造は圧巻だ。また、それでいてテニスのハードなプレー中も正確に時を刻み続けるという耐久性にはただただ驚かされる。
文=菅原 茂/前田清輝(ENGINE編集部)
(ENGINE2021年1月号)
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