BMWをベースによりラグジュアリーに、そしてさらにスポーティなクルマへと進化させるアルピナ。とくに3シリーズをベースにしたB3はその優れた性能をさることながら、ボディ・サイズや価格の面から日本でも高い人気を博す。今回は、2019年の東京モーター・ショーで世界初公開された最新型のB3リムジンに藤野太一氏が試乗した。
2020年に創立55周年を迎えたアルピナ。正式名称はアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社(ALPINA Burkard Bovensiepen GmbH + Co. KG)である。BMW公認のチューナーとして始まったファミリー企業はレース活動を経て、完成車を手がける自動車メーカーへと変貌を遂げていく。現在はBMWの協力のもと、ホワイト・ボディや主要コンポーネントを譲り受け、1台1台ハンドビルドしていく独立した自動車メーカーとして歴史を重ねている。
フェラーリの年間生産台数が1万台を超えるいまの時代にあっても、この数年間の年間生産台数は約1700台を維持しており、無理に増産体制を敷くようなことはしないという。あくまでこれまで培ってきたアルピナとしての品質と味わいにこだわり続けている。
2020-2021の日本カー・オブ・ザ・イヤーにはちょっとした事件が起きた。10ベスト・カーになんとアルピナB3が選出されたのだ。従来、ノミネート車には「年間販売台数500台以上」という基準が設けられていたが、それが今回から削除されたことで、少量生産の高級車やスポーツカーなども対象になったというわけだ。そして、このアルピナB3が見事にパフォーマンス・カーオブ・ザ・イヤーを受賞した。
新型B3のエクステリアは、3シリーズ・セダンとデコラインのみで差別化を図ったようなアンダーステイトメントさだ。実際には“形態は機能に従う”というアルピナの哲学に従って、フロント・バンパーやリア・デフューザーの形状を最適化し、空力性能や冷却性能を高めている。新型M3とM4が縦長で大型のキドニーグリルになったこともあり、価格的な競合車であるMモデルとの差別化はより明確になった。
そして心臓部にはM社謹製S58型の3.0リッター直6ツインターボ・エンジンを搭載する。このS58ユニットは新型M4では、最高出力480ps、最大トルク550Nmを、新型M3 とM4のコンペティションでは最高出力510ps、最大トルク650Nmを発揮する。一方で、このB3は最高出力462psと控えめだが、700Nmの最大トルクを2500rpmから発生させるトルク重視型へと仕立てている。これはターボチャージャーと冷却システムなどを独自チューニングすることによって実現したものだ。
乗れば即座に感じるのが、アクセレレーターの動きに呼応するかのようにトルクが波々と溢れ出してくること。そしてアルピナ伝統の20本スポーク・デザイン・ホイールに組み合わせた大径のピレリPゼロをこともなげに履きこなし、少々荒れた路面が平らなのかと勘違いさせられるようなウルトラスムーズな乗り味をみせた。バリアブル・ダンパー・コントロールの設定には、「コンフォート・プラス」、「コンフォート」、「スポーツ」の3つの走行モードが用意されているのだが、街乗りではこの「コンフォート・プラス」の味付けが絶妙だ。
駆動方式は4WDである。これもトルクを前後のアクスルに可変配分するBMW・xドライブをベースに、独自のチューニングが施されており、リア寄りの駆動力配分となっている。Mモデルがサーキット志向であるのに対して、アルピナが目指しているのは、いつの時代も公道でラグジュアリーかつ安心快適でそして速い、リムジンである。
通な人はその仕立てを“アルピナマジック”と呼ぶというが、なるほど3シリーズ・セダンをこれほど上質なラグジュアリー・スポーツサルーンに変貌させるのだから、やはりアルピナには秘伝のレシピがあるに違いない。これまで世界中のグルメを堪能してきた美食家たちもうなる1台だ。
文=藤野太一
■アルピナB3リムジン
駆動方式 フロント縦置きエンジン4輪駆動
全長×全幅×全高 4720×1825×1445mm
ホイールベース 2850mm
トレッド(前/後) 1575/1570mm
車両重量 1840kg
エンジン形式 直列6気筒DOHC24V直噴ツインターボ
総排気量 2993cc
ボア×ストローク 84.0×90.0mm
エンジン最高出力 462ps/5500-7000rpm
エンジン最大トルク 700Nm/2500-4500rpm
変速機 8段AT
サスペンション形式 前/後 ストラット式/マルチリンク式
ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク
タイヤ(前/後) 255/35ZR19/265/35ZR19
車両価格(税込) 1229万円
(ENGINEWEBオリジナル)
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