今回紹介するのは、2月28日(日)オープンのエルメス表参道店。これまで店舗のなかった表参道への初出店とあって、おおいに注目を集めている。オープンに先駆け、ノナカ(ライター)とコバヤシ(編集部)がその全貌をいち早くお伝えします!
ノナカ● “日本のシャンゼリゼ” ともいわれる表参道は、明治神宮への参道として1920年に整備された。当時は森と池の広がる自然豊かな場所だったそう。表参道を作るために小高い丘を切り崩し、土砂崩れを防ぐために石垣を設けたんだって。
コバヤシ● なるほど! そんな歴史があったんだ。表参道を歩いたことのある人ならだれでも知っていると思うけど、今でも表参道ヒルズの向かいあたりに、その立派な石垣が残っている。今回、エルメス表参道店がオープンしたのは、まさにその石垣がある建物です。
ノナカ● こうして見ると、ファサードは石垣をそのまま残しつつ、その周囲を竹林に見立てたコッパーカラーのステンレス柵で取り囲んでいる。背面に間接照明が設けられていて、夜になると石垣とともに、その柵が浮かびあがる仕組みというわけ。
コバヤシ● 幻想的だね。この店舗設計を担当したのは、パリの建築設計事務所RDAI(レナ・デュマ・アルシテクチュール・アンテリユール社)。表参道周辺の豊かな自然や和のテイストを、デザインの随所に取り込んだのだそう。
コバヤシ● 店内は明るい! 木調の明るい空間に、色とりどりの商品が並びます。右手にはエルメスの代名詞といえるシルクのコーナー、奥には香水のコーナーが! また、4月よりエルメスのビューティも展開予定だそう。
ノナカ● 中央には、これも非常にエルメスらしい馬具とバッグ、レザーグッズなどが並び、左手にホームコレクションやメンズのシルクコーナーといった配置になっている。どこを見ても楽しいから、目移りしちゃって困る(笑)。とりあえず店内をグルッとひとまわりしてから、気になったものに戻って、じっくり吟味するのがいいかも。なんだか美術館や博物館のような雰囲気だ。
コバヤシ● 床を見ると、淡いグリーンの床石が上品。日本の畳をイメージしているそうだけど、あまり和のテイストが強すぎなくて、エルメスの世界観にもよく合っていると思うな。そこに森の苔をイメージした濃いグリーンのラグを敷いているんだけど、昔このあたりに森が広がっていたことへのオマージュでもあるのかな。
ノナカ● 歴史や伝統への深い洞察がエルメスの奥深い魅力になっているよね。壁面も羽目板が“曲げわっぱ”のように緩やかにカーブしていたり、竹の寄木細工になっていたりして、伝統工芸との自然な調和が取り入れられている。見どころ満載というより、どこもかしこも見どころという感じ。
コバヤシ● そして、やっぱりエルメスといえばカレ(シルクのスカーフ)。この表参道店では入ってすぐのところにディスプレイされているね。京森康平さんのデザインによるカレ『デュオ・コスミック』が大きく飾られていて、よく見ると“OMOTESANDO”の文字も入っている。表参道店の限定アイテムなんだね。
ノナカ● 京森さんは同じテーマでウインドウ・ディスプレイも手がけているから、店の外と中がうまく連動している。あと、フロアの中心あたりに馬具コーナーがあるのもエルメスらしいね。乗馬をしなければ、鞍や飼い葉桶を買う機会がないんだけど、ちょっと欲しくなってしまうから不思議。
ノナカ● こちらは買い物の合間にひと息つけるスペース。ゆったりとしたテーブルを配置していて、ダイニングルームのような気取らない雰囲気で、すごくリラックスできる。
コバヤシ● ここにはアート関連を中心にした書籍がいくつか置いてあって、自由に読むことができる。そしてその上にはフランスのアーティスト、フランソワ・ウータン氏によるドローイングも飾られている。近隣で活動しているクリエイターたちが、小一時間ほどディスカッション……なんて場面が似合いそうなスペースだね。もちろん常連になってからだけど。
コバヤシ● 知らないと見逃してしまいそうだけど、階段の手すりや什器などになんとレザーが巻かれている! エルメスの職人が手がけていて、バッグなどにも応用されるノウハウがここにも生かされているそうだよ。これはちょっと真似できないクオリティ。
ノナカ● 何年も経つうちに味が出てきて、それが店の歴史になっていくというわけだ。やっぱりレザーというのは使ってナンボで、ともに過ごすことで魅力が増す特別な素材。サステナブルが叫ばれる時代だけど、世代を超えて使えるレザーは十分にサステナブルだと思う。
コバヤシ●エルメスはレザーの仕立てに自信があるから、こんな贅沢に使うことができる。ぜひ間近で見て、触れてみてほしい。
ノナカ● 店内のあちこちにアートや工芸品が飾られているのも楽しいね。フォーブル・サントノーレ店の階上にミュゼ(美術館)と呼ばれる空間「エミール・エルメス コレクション」があるんだけど、そこに収蔵されている作品のなかから表参道店に合うものをキュレーションしているそうだよ。
コバヤシ● アンティークと現代作家の作品が共存しているのが面白い。ここで紹介している写真作品は、ヤン・ドゥラクールという作家のものなんだって。生命力あふれる道端の雑草を撮っているのだけど、どこかストリートの空気感があって、裏原宿と連結した表参道という場所にぴったり。
ノナカ● アンティークの方は、シャルル10世の戴冠式に使われた四輪馬車の模型で、19世紀に作られたものだそう。精巧な細工が施されていて、見事な出来だね。他にもいろいろな作品が飾られているから、それらを観るだけでも足を運ぶ価値があるよ。
もちろんエルメス表参道店だけのスペシャルアイテムも多数用意されている。今回はそのなかから、エルメスのスペシャル・オーダー部門にあたる「オリゾン」が手がけた2つのアイテムをご紹介。
ヤン・バイトリク氏が手がけたカレ『シュヴァル・ドゥ・フェット』柄のサーフボード。1950〜70年代に活躍したポーランド派の映画ポスターへのオマージュで、同柄のカレなども登場している。L280×W60×H14cm。268万円。
木製のコンパクトな自転車。レモンイエローの爽やかなカラーリングが、春らしいウキウキした気分にしてくれる。サドルはレザー貼りで、大きめのカゴが前後に付いている。発売は21AWからで今回は展示のみ。1546×580×1004mm。241万円(参考価格)。
住所/東京都渋谷区神宮前5丁目7-20
営業時間/11:00〜19:00
定休日/水曜日
オープン/2021年2月28日
問い合わせ/エルメスジャポン Tel.03-3569-3300
www.hermes.com/jp/ja/
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取材・文=野中邦彦/撮影=中村大輝(植野製作所)/構成=小林尚史(ENGINE編集部)
(ENGINE WEBオリジナル記事)
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