そもそもが走りに定評のあるBMWをベースに、さらに性能を磨き上げたアルピナ。近年では、そのアルピナにもディーゼル・エンジン搭載モデルが増えている。SUVとふたつのセダン、アルピナ・ディーゼル・モデル3台にイッキ乗りした。
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実のところ、こういう仕事をやっていても、アルピナのような特別なクルマに乗る機会というのは、そうそう訪れるものではない。昨年、パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞して評判の新型B3にも、今月号の特集で扱うまで乗ったことがなかった。そのアルピナの最新ディーゼル・モデルを集めた試乗会が富士・山中湖で開かれると聞いて、先月号の校了翌日、おっとり刀で駆けつけた。用意されていた試乗車はBMW・X4シリーズ・ベースのXD4と3シリーズ・ベースのD3S、そして、5シリーズ・ベースのD5Sの3台。昨年、日本上陸したXD4を除いては、いずれも上陸したてのホット・モデルである。
正直に言って、アルピナと言えば、どうしたってガソリン・モデルの印象が強い。とりわけ私には、2000年代前半に乗ったB10V8やB3の、えも言われぬほど滑らかな乗り味の衝撃が強烈で、今も記憶の泉に鮮明に残っている。脚の動きもステアリング・フィールもエンジンの吹け上がりも、すべてがしっとりと柔らかな感触で、こんなクルマが世の中にあるのかと驚かされた。それに比べてしまうと、この数年に登場したディーゼル・モデルは、アルピナ度が薄まったように感じていたことを告白しておこう。果たして、最新アルピナ・ディーゼルはどうなのか。
1台目のXD4で走り出し、ステアリングを切り込んだ瞬間、あっ、これはアルピナの滑らかさだ、と思わず声に出しそうになった。そもそも、アルピナが独自のレザーで仕立て直したステアリング・ホイールの手触り自体が、しっとりとした感触を手のひらに残す独特のものだ。それに加えて、切り込んでいった時の滑らかさが、私の記憶の泉にあるものと重なっていたのだ。
ところが、少し走ってみると、オプションで履いている22インチ・タイヤのゴツゴツ感がかなり伝わってきて、ちょっと違う、と思わざるを得なかった。エンジンもディーゼルっぽい音が大きく、アルピナにしてはややがさつな印象を受ける。
山道や自動車専用道などいろいろなシーンを走ってわかったのは、ある程度の速度以上で巡航すると、驚くほど気持ちのいいアルピナ・ライドになっていくことだった。焦点がそのあたりに絞られているらしく、その時の気持ち良さは記憶の泉のそれを甦らせてくれるものだった。その点に不満はない。しかし、街中をゆっくり走っても極上な感触が味わえたかつてのアルピナとは少し違っているのが、私には残念だった。
次に乗ったD3Sは、これまで私が持っていたアルピナのイメージとはかなり違っており、衝撃を受けた。まず、ステアリング・ホイールの径の小ささとリムの太さに面食らう。大きな径のホイールの細めのリムに手のひらをそっと載せて、繊細な感触を味わいながら回すのがアルピナ流ではなかったか。今では機能満載となったこれを自由に交換するわけにはいかないというのが理由らしいが、あの繊細な感触は甦らない。
乗り味も全体的に驚くほど重厚な味付けになっており、いかにも4WDのディーゼル・モデルということを強調しているかのようだった。むろん、アルピナならではのしなやかな脚の動きや、飛ばすほどにフラット感を増して路面に吸いついていくような感覚は健在で、走りに関して非の打ち所はない。でも、これがアルピナだと思うと、さらにその上に繊細な気持ち良さを求めてしまうのだ。ジャーナリストの一人が、「これなら東京から軽井沢まで、顔色変えずにズバッと行って、あっと言う間に着いちゃうよ」と言っていたけれど、ゆったりと繊細さを味わうより、そういう使い方こそが似合うクルマだと思わざるを得なかった。
果たして、私のアルピナ観は時代遅れになりつつあるのだろうか。いや、そんなことはない。最後に乗ったD5Sが、それまでのモヤモヤした気持ちをいっぺんに吹き飛ばしてくれた。運転席に着いた時、ステアリング・ホイールが大きくて細いのにホッとした。手のひらに伝わる感触が泉の中のそれにピッタリ。走り出して数十メートルも行かない内に、これよコレコレ、と叫び出しそうになっていた。しっとりとしたステアリング・フィール、遠くでトーントーンと柔らかに路面の荒れをいなしているような脚さばき、巡航時にはまったく大人しいのに、わずかに右足に力を入れただけで、塊のようなトルクが湧きだしてきて、顔色も変えずにスムーズに加速していくエンジン。これぞアルピナの乗り味だ。
山道でのハンドリングの良さも特筆ものだった。決してロールしないわけではない。自然で気持ちの良い動きだから、クルマとの一体感を感じながらコーナリングできるのだ。ラグジュアリーとスポーティがこれほどまでにバランスよく融合したクルマは、最近乗った中では、ロールス・ロイス・ゴーストと新型メルセデスSクラスしかない。そういえばゴーストもSクラスも4WDだったし、さらにSはディーゼルだった。4駆ディーゼル恐るべし。それはともかく、アルピナはやっぱり、磨き上げた繊細な感触を特定の人にだけ届けるクルマでいて欲しい。今回、D5Sに乗れて本当に良かった。
文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬
■BMW アルピナXD4
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高 4760×1940×1620mm
ホイールベース 2865mm
車両重量 2120kg
エンジン形式 直噴直列6気筒DOHCクアッド・ターボ
排気量 2992cc
ボア×ストローク 84.0×90.0mm
最高出力 388ps/4000-5000rpm
最大トルク 770Nm/1750-3000rpm
トランスミッション ZF製8段AT
サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク
タイヤ (前)255/45ZR20、(後)285/40ZR20
車両本体価格(税込み) 1385万円
■BMWアルピナD3S
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高 4719×1827×1440mm
ホイールベース 2851mm
車両重量 1950kg
エンジン形式 直噴直列6気筒DOHCツインターボ
排気量 2993cc
ボア×ストローク 84.0×90.0mm
最高出力 355ps/4000-4200rpm
最大トルク 730Nm/1750-2750rpm
トランスミッション ZF製8段AT
サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク
タイヤ (前)255/35ZR19、(後)265/35ZR19
車両本体価格(税込み) 1078万円
■BMW アルピナD5S
駆動方式 エンジン・フロント縦置き4WD
全長×全幅×全高 4978×1868×1466mm
ホイールベース 2975mm
車両重量 2020kg
エンジン形式 直噴直列6気筒DOHCツインターボ
排気量 2993cc
ボア×ストローク 84.0×90.0mm
最高出力 347ps/4000-4200rpm
最大トルク 730Nm/1750-2750rpm
トランスミッション ZF製8段AT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ 通気冷却式ディスク
タイヤ (前)255/35ZR20、(後)295/30ZR20
車両本体価格(税込み) 1358万円
(ENGINE2021年5月号)
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