2021.05.05

CARS

まるで「マッドマックス」の世界! 砂漠に集まった“異形のクルマたち”

アレキサンドラ・リアの写真集、『ミュータント・ヴィークルズ』の表紙に選ばれたのは、1977年型キャデラックを全長12mのロケット・カーに作り替えたデビッド・ベストの作品。彼はバーニング・マンの最終日に燃やす寺院なども製作したアーティスト。

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毎年夏にネバダ州の砂漠で開催されているアートなお祭り、バーニング・マン。そこに集結したのは、映画から飛び出したような不思議なクルマたちだ。


まるで映画「スター・ウォーズ」や「マッド・マックス」に登場するようなこれらの乗り物。アメリカの奇祭バーニング・マンにやってきた「ミュータント・ヴィークル(改造車)」、あるいは「アート・カー」と呼ばれるクルマだ。


バーニング・マンは、自動車の最高速のトライアルも行われるネバダ州の砂漠で、毎年夏の1週間、催されてきたお祭りである。普段は誰も住んでいない場所だが、祭りの期間は数万人が集まり、人々はテントやキャンピングカーで寝起きをする。しかも参加者は、ただ単に催しを見物するだけではない。自己表現しながら他者と交流し、相手に金銭を求めることなく何かを施すことを推奨されているのだ。そして祭りの最後は、会場に作られていたモニュメントが燃やされ、後には何も残らず、人々は普段の生活に帰っていく少々変わったお祭りである。


長さ8mを超える、フォード・コヨーテの5リッター V8を使ったマッド・マックス風のアート・カー。シャシーやエンジンは変えず、鉄パイプでできた異なるボディを被せて繰り返し参加している。

実は走るアート作品

参加者は自己表現として、彫刻を飾ったりパフォーマンスをしたりと、アート活動を行う人が多い。ミュータント・ヴィークルもそうした一ジャンルで、観ても楽しい運転できるアート作品の位置づけだ。参加車両には厳しいルールがあって、どんなクルマをベースにしているかを明らかにしたうえ、オリジナルのクルマとは似ていない、自動車とは違う乗り物に変えないといけない。よく目にするのは、宇宙船や動物に形を変えたミュータント・ヴィークルだ。さらに事前にコンセプトの創造性と安全面のチェックが主催者からある。そんなこともあって数百台にのぼる参加車は、レベルの高い「作品」が多い。


こうした魅力的なクルマを、ドイツの写真家アレキサンドラ・リアが写真集として出版することになった。アメリカのマッスルカーの魅力に憑りつかれ、アメリカ独自の自動車文化を伝えてきた彼女は、長年このお祭りに通っている。曰く、「参加車のクリエイティビティと、背景となる砂漠が作り出すSF映画のような世界は唯一無二」。抜けるような青い空の下、あるいは砂埃の中、強いストロボで浮かび上がる異形のクルマは、かの地で実物を観たくなる独自の魅力を持っている。この創造性豊かなクルマのイベントの存在を、是非多くの人に知ってもらいたいものだ。


白鳥の姿をした動くオブジェは、ゴルフ場で使う電動カートを改造したもの。写真のようにコスプレをしている参加者も多い。
サイのアート・カーは、シボレーのピックアップトラックを改造したもの。角から炎が出る。
アメリカの独立戦争時に活躍した戦艦を小さくした船の乗り物は、シボレー・キャラバンのシャシーを使ったもの。船もサイもナンバープレートが付いており、自走してやってきた。
写真家のアレキサンドラ・リアはアメ車好き。
アレキサンドラ・リアの写真集『MUTANT VEHICLES - Art on Wheels at Burning Man』は今夏発売。詳細はホームページまで。https://www.alexandralier.com/

文=ジョー スズキ(デザイン・プロデューサー)


(ENGINE2021年6月号)


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