2965万円というプライス・タグを付けて日本へやってきたマクラーレンの新しいプラグイン・ハイブリッド・スポーツ、アルトゥーラ。V6のエンジンも、8段自動MTのトランスミッションも、カーボン製のシャシーも、何もかもが新しくなったアルトゥーラとはいかなるクルマなのか。大谷達也氏が開発者の言葉を交えて解説する。




ひと目見ただけでマクラーレンとわかるのは、シンプルなミドシップ・スポーツカーのフォルムに、必要最低限の構成要素を機能的にレイアウトしているからだろう。その意味では、いかにもマクラーレンらしい思想に裏打ちされたスタイリングだ。
チーフ・デザイナーのロブ・メルヴィルはアルトゥーラのデザイン・コンセプトについて「従来のマクラーレン同様、自然界に存在する美しさを採り入れました」と語る。「ボディ・サイドのエア・インテークは風が形作った砂丘にヒントを得てデザインしました。また、ボディにはスーパーフォーミング加工のアルミ・パネルを多用することでシャットラインを減らし、洗練した美しさを表現するとともに軽量化にも役立てました」



アルトゥーラの特徴は、車両の主要コンポーネントをすべて刷新した完全なニュー・モデルであることが一点。そしてもう一点は、パワートレインにプラグイン・ハイブリッドを採用していることにある。
「アルトゥーラはマクラーレンという物語の第二章が始まったことを告げるモデルです」マクラーレン・オートモーティブのジェンス・ルードマンCOOは誇らしげに語り始めた。「過去10年間、私たちはカーボン・モノコックを用いたスーパー・スポーツカーを作り続けてきました。その間にハイブリッド・モデルを生み出したこともあります。このアルトゥーラには、そうした私たちの経験がすべて息づいているのです」







「モノコックも完全な新設計です」。そう説明するのはチーフ・エンジニアのジェフ・グローズ。「モールディングを用いた一体成型である点は従来と変わりませんが、構造に関係するプロセスの一部を見直しています。これにより理想的な断面構造を作り出すことに成功しました」。新しいモノコックにはマクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー(MCLA)が採用されており、重量はバッテリー・コンパートメント、Bピラー、ドア・ヒンジ用部品などを含んだ状態で82kgしかない。
エンジンも従来のV8ではなく新開発のV6が採用された。「新しいエンジンは従来型よりもコンパクトかつ軽量です。またバンク角を120度とすることで低重心化も達成しました」とグローズは語る。排気量3リッターの新エンジンは585ps/7500rpmならびに585Nm/2250-7000rpmと十分なパフォーマンスを誇るが、その重量は従来のV8より50kgも軽い160kgに過ぎないという。
これまでよりもギアが1段増えて8段とされたデュアルクラッチ式自動MT(DCT)も完全な新設計。ハイブリッド用モーターを逆回転させることでリバース・ギアを不要にするなどの効率設計により、8段でありながらその全長は従来の7段ギアボックスより短いとマクラーレンは主張する。




ハイブリッド・システムもゼロから開発し直されており、そのモーターはP1用に比べて出力密度が33%も向上。95psの最高出力と225Nmの最大トルクを生み出す。バッテリー容量は7.4kWhで30kmのEV航続距離を実現。エンジンと組み合わせたシステム出力は680psで、最大トルクは720Nmに達するというから、720Sの720ps/770Nmに迫るパフォーマンスだ。。0-100km /h加速は3.0秒、最高速度はリミッターで330km /hに制限される。
容量7.4kWhのバッテリーは88kgでモノコックのフロア部分に搭載。15.4kgのモーターはギアボックスのベルハウジング内に収納される。ハイブリッド・システムの総重量は130kgに達するが、これを新開発のV6エンジンや軽量モノコックで相殺することで1498kgの車両重量を実現したという

文=大谷達也
(ENGINE 2021年5月号)
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