2021.06.28

CARS

「クーペ王国」ドイツの注目車、メルセデス・ベンツE300クーペとカブリオレを比較試乗! 一番ラグジュアリーなEクラス!!

メルセデス・ベンツEクラスがベースのクーペとオープン。2ドアのクルマばかり乗り継いでいる渡辺敏史が、メルセデス・ベンツE300クーペとカブリオレの2台をテストした。

クーペには華がある


中庸なセダンをベースに作られた2ドア・クーペ、その歴史は想像以上に長い。が、得てして昔のそれは「ドアわざわざ4枚切るより2枚の方が安くできるじゃん」的なビジネス仕様、いってみれば体裁抜きのワンプレート・ランチみたいな身も蓋もない動機でそうなっていた。


そこに華という付加価値が乗ったのは第2次世界大戦後、50年代前後からだ。アメリカでいえば工業デザインの大家、レイモンド・ローウィのハウスデザインによるスチュードベーカー・スターライトクーペは飛行機のキャノピーを思わせるラップアラウンド・リア・ウインドウをリア・セクションに採用。クーペゆえの存在感を強調し、その後、クローム&フィンと称されるアメリカ車の全盛期へとバトンを繋ぐこととなった。

E300クーペ・スポーツは往年のクーペ・モデルのようにピラーレスでリア・ガラスが下までちゃんと下がる(ただし惜しいことにわずかにリア・クォーターガラスが残ってしまう)。

その後60~80年代と、その手のクルマは自動車メーカーのポートフォリオにおいて無視できない存在となる。日本でいえば70年前後、モータリゼーションが多くの人の生活に波及してきた頃合いに、他人とはちょっと異なる暮らし向きを匂わせるべく、2ドア・クーペは持て囃されていたように思う。クラウンやセドグロ、スカイラインやコロナなどに設定されたそれは、快活なエンジンや凝ったウインドウ・グラフィックなどが与えられ、明らかにセダンとは異なる世界観を示すものだった。何よりそこには、ユーザーのクルマに対するアツい期待があった。



が、時は流れ自家用車は普及する一方でバブルは弾け、室内空間の広さや使い勝手の良さの側に興味の対象が移るや、その対極たる2ドア・クーペは居場所を失う。ある者は討ち死に、ある者は存続を賭して過剰過激化し、いつしか日々の生活の中で普通に接することのできる、でもそこに一輪ながらも華があるというクーペは日本車のラインナップから姿を消してしまった。

Eクラス・クーペの日本仕様のラインナップは、E200クーペ・スポーツ(BSG)、E300クーペ・スポーツ(試乗車)、E450 4マティック・クーペ・スポーツ(ISG)のほか、メルセデスAMG E45 4マティック+クーペ(ISG)の計4モデルで、これはボディ違いのカブリオレも共通となっている。

クーペと言えばドイツ


いま、そういう2ドア・クーペを探してみれば並んでいるのはドイツ車ばかりだ。メルセデスならC・E・Sクラス、BMWなら2・4・8シリーズ、アウディならA5といったところがそれにあたるだろう。とりわけメルセデスはSクラス・クーペの源流が50年代の220にまで遡るという点で、このカテゴリーをリードしてきたと言っても過言ではない。

Eクラス・クーペの歴史もまた同様で厳密に辿り始めると戦前まで遡る勢いだが、一般的な感覚でいえばその始点は60年代後半のW114系からになるだろう。その後、90年代後半にはCクラスの車台をベースにコンパクト化が図られるが、そのCクラス自体にもクーペ・ボディが用意されたこともあり、現世代ではEクラスの車台をベースにホイールベースを短縮化、セダンとは一線を画する流麗なプロポーションに加えて、見せどころである内装も専用の設えが選べるようになっている。

そのクーペ・ボディをベースとしたカブリオレは、耐候性に優れ風合いに長けたジャーマン・トップをボタン1つで開閉することが可能だ。全行程は約20秒で、50km/h以下であれば走行時でも操作ができる。ことクルマの屋根を開け閉めする話になればドイツ系サプライヤーの優位は無視できないが、背景にはこういったメーカー側からの定常的な需要と進化の要求、そして隙あらば陽を浴びるというドイツ人の太陽に対する執念があるのだろう。







屋根ごと異なるそのカブリオレならともかく、クーペの側はなんとも押しが弱く、横から後ろへと回り込んでみない限りはベースのセダンと大して差異が見いだせない。

でも、それがいい。そうであって欲しい。そういうお客さんがEクラス・クーペを支持し続けてきたことをメルセデスはよく知っている。明らかな差別化をもって優位に立ちたい人のクルマは自銘他銘問わず他にもあるわけで、Eクラス・クーペは努めて普通に、悪目立ちせず受け流される程度のアピアランスがあればもう充分なわけだ。

そのぶん、見せどころである横姿は奮っている。安全に対するコミットは並ならぬメルセデスが執念強く作り続けるBピラーレスのグリーンハウスはCクラス・クーペには備わらず、EクラスとSクラスのクーペのみに与えられる特徴的なディテールだ。この佇まいの繊細さだけでも、カブリオレではなく敢えてクーペを選びたいという気にさせてくれる。

加えて、クーペには大人4人でもまずまず座れる後席のユーティリティ、そして405リッターの容量を確保したトランクが備わる。対すればカブリオレは幌屋根の取り回しの関係上、それらがクーペには見劣りする。







が、当然ながら得られる気持ちよさはそれらを相殺して余りあるものだ。振り返れば後席の向こうへと長く続くキャビンは、大きな湯船に伸び伸びと浸っているような穏やかな心持ちにしてくれる。それは背後がバルクヘッドの2シーター・オープンカーとは一線を画する開放感だ。

一方で4シーター・オープンカーの弱点といえば、速度が増すごとに風の巻き込みが増えること。後席側から前席へと還流する風はそこに陣取る婦女子の髪を容赦なくかき回す。

Eクラス・カブリオレにはフロントウインドウ上縁がせり上がるエア・キャップと後席背後のドラフト・ストッパーを用意、これまたボタン1つで風の巻き込みをしっかり減らしてくれる。座席の首元から温風が吹き出すエア・スカーフも併用すれば、オープン・ドライブが最高に気持ちいい冬場の快適性も劇的に向上する。でも、エア・キャップとドラフト・ストッパーを効かせた状態の見栄えがちょっと防風に必死過ぎてガチのワークマン風情になってしまう辺りは生真面目なドイツ車らしいご愛嬌と捉えてあげたい。街中で衆目を意識するような場面なら、これらは引っ込めて婦女子には真知子巻きでもかましていただいた方が粋だろう。

シートの仕立てはオプションやカラーリング、装備によっても異なるが、基本的な構造はクーペとカブリオレは共通。乗車定員も4名で同じ。フロント・ガラスと後席後方の電動昇降式ディフレクターは見栄えこそ今一歩だが、風の巻き込みは的確に減らす優れもの。試乗車のE300カブリオレ・スポーツ&クーペ・スポーツはともにスティッチ入りの本革レザー・シートを含むエクスクルーシブ・パッケージ(91万4000円)とメタリック・ペイント(9万7000円)を装備していた。



こういった洒落ごとをSクラスでやると手練れに過ぎて引かれるし、Cクラスでやると向上心を剥き出しにしているようにみえてしまう……というところで、Eクラスの存在感はやはり丁度いいのだと思う。ハレとケの配分が絶妙というか、カジュアルとエレガンスのどちらにも転べる真ん中ならではの美味しさがある。

結構差がある


今回の取材車はクーペ、カブリオレ共にE300スポーツで、足まわり等の条件差はない。異なるのは剛性差と車重くらいのものだろう。エンジンは258ps/37.7kgmを発揮する2リッター4気筒だが、9段ATのワイドレシオぶりもあって、70kg重いカブリオレの側でも動力性能に不満はなかった。とはいえ、クルマ好きの気持ちとしてはやはりこの位の車格ならマルチシリンダーで乗りたいところで、予算が許せば直6+4WDという選択肢も用意されている。

2リッターの直列4気筒ターボ・エンジンは9段ATを介して後輪を駆動する。

後席は分割可倒式。荷室容量は405リッター。


基本的には同質のセットアップがなされているはずだが、両車の乗り味には結構な差があって、クーペの側がはっきりと硬質でスポーティだ。ワインディングをハイペース気味に走るような場面での身のこなしはキビキビとしていて気持ちがいい。さりとてカブリオレの剛性感が劣り応答性が鈍くなったというほどの印象はなく、屋根が抜けたぶんのしなやかさは乗り心地に前向きに現れている。バンピーな路面でのロード・ホールディング性などはむしろクーペより優れているようにも感じられるほどで、重しが効いたフラットなライド感と相まっての、メルセデスらしいまったりとしたいいモノ感という点でみればカブリオレの方が上というのが個人的な印象だ。まぁいずれもランフラットタイヤの縦バネ感の強さが時折り乗り心地を濁すのが、なんとも惜しいところではある。

ともあれEクラス・クーペ、そしてカブリオレの美点は、ベタベタの日常ととびきりの非日常とを距離感も落差もなくとことんシームレスに繋いでくれることだと思う。



クーペの後席が40:20:40の3分割式になるのに対し、コンバーチブルは50:50の分割可倒式。後席へ続く開口部も狭い。容量は幌を上げた状態で360リッター、下げた状態で285リッター。幌のカラーは試乗車のダーク・レッドのほか、ブラック、ブラウン、ダーク・ブルーの計4色が用意されている。

毎日の移動を切り盛りするに鬱陶しくないギリギリの車格。普段は手荷物の居場所であっても、いざ人を座らせればまずまず優しい後席。スポーツカーほど硬くもうるさくもなく、会話や音楽を楽しむに邪魔にもならないメカものの存在感……と、実生活との親和性の高さを備えていながら、その佇まいには心を躍らせる美しさがある。

そしていつもは街を這いずるその鼻先を郊外に向ければ、いつでも非日常への扉を開けることができる。いや、なんとあらば何を身構えるでもなく、通勤に使う朝晩の首都高や幹線道路でさえ、窓や屋根を開け放てばグランド・ツーリングに変えてしまうだろう。GTとは生活に縛られた心をバーンと解き放つもの。この2台は、その表裏をワンタッチで鮮やかに行き来することができる。

文=渡辺敏史 写真=望月浩彦



■メルセデス・ベンツE300クーペ・スポーツ
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4865×1860×1430mm
ホイールベース 2875mm
トレッド(前/後) 1600/1590mm
車両重量(前後重量配分) 1800kg(960kg:840kg)
エンジン形式 水冷直列4気筒DOHCターボ
排気量 1991cc
最高出力 258ps/5800-6100rpm
最大トルク 37.7Kgm/1800-4000rpm
トランスミッション 9段AT
サスペンション(前) マルチリンク
サスペンション(後) マルチリンク
ブレーキ(前後) ベンチレーテッド・ディスク
タイヤ(前後) 275/35R19
車両本体価格 919万円

■メルセデス・ベンツE300カブリオレ・スポーツ
駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動
全長×全幅×全高 4845×1860×1430mm
ホイールベース 2875mm
トレッド(前/後) 1600/1590mm
車両重量(前後重量配分) 1870kg(970kg:900kg)
エンジン形式 水冷直列4気筒DOHCターボ
排気量 1991cc
最高出力 258ps/5800-6100rpm
最大トルク 37.7Kgm/1800-4000rpm
トランスミッション 9段AT
サスペンション(前) マルチリンク
サスペンション(後) マルチリンク
ブレーキ(前後) ベンチレーテッド・ディスク
タイヤ(前後) 275/35R19
車両本体価格 956万円

(ENGINE2021年6月号)

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