12カ月点検を受けることになった89号車。これ幸いと、EVにまつわる整備の話を聞いてきました。広報車として登録されてから丸2年。89号車は1年点検を受けに、ジャガー・ランドローバー横浜のサービスセンターへ向かった。1週間後、戻ってきた89号車の整備明細書は、ごくごくシンプルなものだった。まず、以前ご報告したWiFiホットスポット不調の理由は、なんともお恥ずかしいことに単純に容量制限を超えたため。おそらく車内にあったタブレットが自動でデータ同期をしたのが原因で、SIMカードの交換で解決した。それ以外の交換&補充品は(1)ブレーキ・フルード(2)空調フィルター(3)ワイパー・ブレード(4)ウインドウ・ウォッシャー液のみ。Iペイスには“ジャガートータルケア5”というEV専用のサービス・プログラムがある。登録から5年間、走行距離の関係なく受けられ、1、2、4年目に1年点検を行うことと、前述の(1)(2)(3)(4)に加え、(5)ブレーキホースが消耗状態に応じて無償交換される。
回生ブレーキを多用できるEVはブレーキ・パッドの摩耗が少ないから対象外なのだろうか。サービスアドバイザーの横山太一さんによれば、施工例が少なく、乗り方にもよるので摩耗の詳細なデータはないとのこと。ただ、同時期に登録された走行1.6万kmほどの別のIペイスは、パッド残量は前輪12mm、後輪7mmと、2.4万km走った89号車の前輪11mm、後輪7mmという数値と大差なかった。89号車は基本、回生ブレーキを弱めにし、1ペダル・ドライブではなく機械式ブレーキを踏み2ペダル・ドライブをしているが、いっぽうで高速道路の使用も多い。ここは単純に減りが少ないと喜ぶより、内燃機関車から乗り換えても、ごく自然なクリープ感や減速感を産み出していることと、フィーリングが良く、きっちり確実に停まるブレーキ性能を喜ぶべきだろう。
横山さんによれば、将来的に差が出るのはブレーキより油脂類のようだ。内燃機関車には“ジャガー・プレミアムケア”というプログラムがあり、3年間はエンジンやデフのオイル、プラグ、燃料フィルターなどに加え、ブレーキパッドも消耗の状態に応じて無償交換される。ただし4、5年目は有償プログラムだ。試しに3年目時点の作業コストを3リッターのFペイスを例に比較したところ、Fペイスの工賃&部品代はなんとIペイスの4倍! ジャガーのエンジン・オイルは3000~4000円/リッターで、V6やV8は6.5リッターを要するのがデカイようだ。ただしIペイスの整備はパーティションで仕切ったスペースを設けなければならず、自動車整備経験が3年以上で、低圧電気取扱業務講習証明書を所持し、さらにジャガーのトレーニング(作業により4段階ある)を受けた専任者でなければ触れない。当然入庫時間も長い。EVは色々な意味で世界を変えているが、横山さんは整備に関わる人にとっても「売り上げなど、大きく変わる時代が来るかもしれない」という。さて、定期点検を終えて絶好調となった89号車。整備の現場に続いて、今度は販売の現場を覗いてみるつもりである。文=上田純一郎(ENGINE編集部) 写真=茂呂幸正 協力=ジャガー横浜/ランドローバー横浜■89号車/ジャガーIペイスHSEJAGUAR I-PACE HSE新車価格 1183万円(OP込1365万9000円)導入時期 2020年6月走行距離 2万4154km(スタート時1万809km)(ENGINE2021年5月号)
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