電鋳手法によるモノトーンの砂地模様が自動巻きでは珍しい2針スモールセコンドのダイアルを強く印象づける。
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シチズンの理念を追求したフラッグシップといえば、その名も誇り高い「ザ・シチズン」である。機械式としては2010年に約30年ぶりに開発した自動巻きムーブメントを搭載したモデルが思い出されるが、2021年発表の最新作は、ひと味もふた味も異なる、見どころ満載の注目モデルだ。
The CITIZEN(ザ・シチズン)/メカニカルモデル Caliber 0200
「ザ・シチズン」の意志を表すイーグルマークをあしらったダイアルは、電鋳手法で砂地模様を描くマットなブラック(右)と、サンレイパターンに塗膜研磨を施した美しいブルー(左)の2種類がラインナップ。シチズン自社製キャリバー0200。自動巻き(+手巻き)。パワーリザーブ約60時間(最大巻き上げ時)。ステンレススティール、ケース直径40㎜(設計値)、5気圧防水。各60万5000円。8月発売予定。
このモデルに搭載された新しい自社製ムーブメントのキャリバー0200の成り立ちがメカ好きにとっては非常に興味深いのだ。これは、シチズン傘下で、スイス時計産業の中心地のひとつとして有名なラ・ショー・ド・フォンに構える ムーブメント専業のラ・ジュー・ペレ社と協業で作り上げた、いわば日本とスイスの合作によるオリジナル。設計や部品製造、組み立てをシチズン、審美的な装飾仕上げをラ・ジュー・ペレ社が主に担当し、それぞれのワザを存分に投入したという渾身の作である。
ラグのない面構成のケースに連続するブレスレットは、スティール無垢の質感を生かす粗めのヘアラインとミラー仕上げで立体感と快適な装着感を実現。
クロノメーター基準を上回る抜群の高精度とともに、見せることにこだわった審美的な仕上げが通の愛好家を魅了する。
性能面の特色は、数秒単位の調整が可能で経年変化や衝撃に強いフリースプラング方式のテンプ、ケース入れした完成品状態でクロノメーター規格を上回る平均日差 -3~+5秒の精度、あるいは最大約60時間のパワーリザーブなどにあり、さらには、ムーブメント自体が美しく見えることにも注意を払い、部品のレイアウトと合わせてひとつひとつの仕上げにもこだわったというから意気込みはただものではない。
実際にケースバックから見えるムーブメントは、サティナージュと呼ばれる繊細なヘアライン仕上げや、これとは対照的に艶が際立つダイヤカット、あるいは伝統的な模様のペルラージュなどが随所に施され、目の肥えた機械式愛好家をも喜ばせる精緻な機能美が隅々まで展開する。
従来のクラシカルでオーセンティックな「ザ・シチズン」のイメージを塗り替える、ステンレススティール無垢のスポーティなデザインも実に新鮮だ。ケースとブレスレットが一体になって連続するエッジのきいた面構成のデザインや、コントラストを効果的に演出する粗めのストレートなヘアラインと、見る角度でキラリと輝くポリッシュの仕上げは高級感あふれる洗練された味わい。
さらに見逃せないのは、コンテンポラリーな外装と絶妙にマッチするダイアルだ。2針スモールセコンドの表示スタイルは、現代のスポーティな自動巻き腕時計としては珍しい。このダイアル仕様と機能美は、1924年に作られたシチズン第一号の懐中時計に通じ、革新と同時に伝統にも敬意を表しているのは明らか。時計に精通する者ほど発見の多い、紛れもなく魅力的な逸品だ。
◇『The CITIZEN メカニカルモデル Caliber 0200』スペシャルサイトへ
問い合わせ=シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807
文=菅原 茂 写真=近藤正一
(ENGINE 2021年8月号)
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