2021.07.19

CARS

この世に3台しかない超ラグジュアリー・オープン ロールス・ロイスの特注モデル、ボートテイルが姿を現す

ロールス・ロイスが新たに設立したコーチビルド部門によってつくられた初のモデル、ボートテイルが公開された。ロールス・ロイスが持つプラットフォームやパワートレインに、ボートテイルのためにだけに作られたオリジナル・ボディを組み合わせたオーダーメイド・モデルで、3台のみがつくられる。

開発には4年の歳月費やす

内外装のカスタマイズ、いわゆるビスポークに留まらず、コンセプトやデザインなど車体そのものをカスタマーとともにイチからつくり上げるのが「ロールス・ロイス・コーチビルド」だ。ロールス・ロイスはかつてパワートレインを組み込んだローリング・シャシーを製造し、これに車体を架装する専門のコーチビルダーたちが顧客の望む通りに様々な豪華絢爛なボディを手がけてきた。年代が進むにつれ自動車製造が複雑化し、さらにモノコック・シャシーが一般化したためこの伝統は途絶えてしまったが、真にラグジュアリーでパーソナルなモデルを生み出すため、ロールス・ロイスはコーチビルディング部門を新設。その第1作目がボートテイルである。毎年イタリアで開かれるクラシックカー・イベントのヴィラデステ・コンクール・デレガンスで2017年にお披露目した2座の2ドア・クーペ、「スウェップテイル」が非常に好評だったことを受けて開発がスタートしたもので、3人のカスタマーとロールス・ロイスが4年間を費やした。









1813個のオリジナル・パーツを使用

究極のオープンカーと呼べるボートテイルはロールス・ロイスが用いるアルミ製のスペースフレーム・シャシーを使用する。これは様々なボディ・サイズと形状に対応することが可能なシャシーで、現行のファントムを皮切りに、カリナンや新型ゴーストも採用している。

新たなデザインを持つ車体の再構成に8ヶ月を、車体後部の「ホスティング・スイート」と呼ばれる可動式のデッキと、その下にシャンパンなどを収める冷蔵庫とナイフやフォークといったカトラリーの収納庫のための電子制御ユニットと専用ハーネスの開発に9ヶ月を要したという。最終的に完成までに1813個のまったく新しいパーツがつくられた。
 
ボートテイルのイメージ・スケッチに記された数値によると、全長が5760mm、全幅が2059mm。現行のファントムよりも10mm短く、39mm幅広い。フロント・セクションは凹型のLEDヘッドライトや、上面の膨らみ部分を廃し、極めてシンプルになったパルテノン・グリルなどをのぞき、スウェップテイルと比較的共通性のあるデザインを採用している。


ロールス・ロイス・ボートテイル


ロールス・ロイス・スウェップテイル


ロールス・ロイス・ボートテイル


ロールス・ロイス・スウェップテイル

帆船のウッドデッキを彷彿

いっぽうリア・セクションは三角形の巨大なリア・ガラスを持つクーペのスウェップテイルとは大きく異なる。屋根がなくなっているだけでなく、後席後方からテールエンドに向かう低くなだらかな、通常のクルマであればトランク・フードに相当する面には、まるで帆船のウッドデッキのように大量の木材が貼られている。これは1910〜30年代につくられたロールス・ロイスの、まるで本物の船尾のようにウッドで構築されたスタイリングの現代的な解釈だという。ちなみに先代ファントムをベースとするドロップヘッド・クーペもチーク材を用いたリア・フード・カバーが採用されていたが、その面積は比較にならないほど広い。

このデッキ部分はバタフライ式に開き、前3分の2のスペースは左側が食前酒用、右側が料理用の保存収納庫となっている。デッキを開き上面から覗くと、カスタマーの1人のコレクションであるヴィンテージのシャンパンや、それを味わうためのグラス、パリのクリストフル社製のボートテイル・ロゴ入りカトラリーを見ることができる。なお、後ろの3分の1は上面部分が回転式のカクテル・テーブルとなり、その下にはロールス・ロイスがデザインし、イタリアの家具メーカー、プロメモリア社が製作した折りたたみ式のスツールが収められている。また現代のロールス・ロイスはドア内部に傘を収納しているが、ボートテイルはリア・デッキの中央にパラソルを収納している。
 
ボートテイルはホモロゲーションを取得した公道走行が可能な車両であり、3人のカスタマーたちは受け取ったらすぐに運転したい、と完成を心待ちにしているという。価格は公表されていないが、スウェップテイルが1300万ドル(1ドル=110円換算で14億3000万円)であることを考えると、同等かそれ以上と予想される。











文=上田純一郎(ENGINE編集部)

(ENGINE WEBオリジナル)

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