2021.08.10

CARS

賢さが売り! マイルド・ハイブリッドの新型アウディA3スポーツバックに試乗!!

A3シリーズのエントリー・モデルとなるのが30TFSI。
1リッター直3ターボに48Vのマイルドハイブリッド・システムを組み合わせる。そのスポーツバック1stエディションに乗った。

セールス・ポイントはカッコよさ

S3セダンから乗り換えたのは、新型A3シリーズのベース・モデルとなる30TFSIスポーツバック。ただし、375台の限定車となるファースト・エディションだった。車両本体価格が310万円のスタンダード、346万円のアドバンスト、389万円のSラインの3モデルが用意されるうちのアドバンストをベースに装備を大幅充実させた特別仕様で、なんと453万円のプライス・タグをつけている。110psのリッター・カーの価格としては、ずいぶんと高い気もするが、それだけに見た目はS3にも見劣りしないくらいにスタイリッシュだ。18インチのホイールやルーフレールといった専用装備品が効いているのか。いや、そうじゃない。それらを除いても、押し出しの強いシングルフレーム・グリルといい、張り出した前後フェンダーといい、新型A3のそもそものデザイン自体が、飛び抜けてスタイリッシュに進化しているのだと、よくよく観察して悟らされた。新型A3のセールス・ポイントは何よりもまずこのカッコよさにあるのは間違いないだろう。

1stエディションはアドバンストをベースに装備を充実した限定モデル。

そして、もうひとつの売りが、賢さである。すなわち、この30TFSIには1リッターの直3ターボに、これまでは上級車にしか設定されていなかったベルト駆動式オルタネータースターターと48Vリチウムイオン・バッテリーを用いたマイルドハイブリッド・システムを組み合わせている。それによって、低燃費化を図るとともに、加速時にはモーターによるアシストによって走行性能を高めているというのだが、果たしてその走りはどうなのか。かなり期待して乗り込んだ次第である。

専用デザインの18インチ・アルミホイールやルーフレールが装着されるほか、インテリアでは鮮やかなブルーの差し色を施したシートやダーク・アルミニウム・スペクトラムのデコラティブ・パネルを採用。さらに、ナビゲーションやドライバー・アシスタンス・システムが装着される。

モワッとしたレスポンス

インテリアも、S3から乗り換えてもまったく見劣りしないくらいスタイリッシュだった。巨大なディスプレイを持つセンターコンソールが少し運転席側に傾いたドライバー・オリエンテッドな空間になっているのも、デジタル化が一気に進んでいるのもS3と同じで、メーターはすべて液晶パネルに表示され、シフトはクリック式のスイッチでするようになっている。





S3と比べてちょっと残念だと思ったのは、見た目ではこちらもかなりスタイリッシュな布製シートが装着されていたのだが、その座り心地やホールド感が、S3のそれに比べるとハッキリと落ちることだった。むろん、S3のシートが特別に素晴しかったのであって、こちらがこのクラスのクルマのシートとしてライバルと比較して見劣りするというわけではないのかも知れない。とはいえ、やっぱり、S3のシートを体験したあとでは、これはちょっと……と思わざるを得なかったのだ。

110psの1リッター直3ターボには48Vのマイルドハイブリッドが組み合わされる。

それは、走りについても同様である。1リッター直3ターボは、110psという数字から想像される以上によく走る、と書きたいところだが、S3のあの胸のすくような気持ちの良い走りを体験した直後に乗った限りではとてもそうは思えなかった、と正直に告白しておこう。200psの差がどうこうという以前に、アクセレレーターを踏みこんでいった時のレスポンスが、モワッとしていてつかみどころがないのである。48Vのマイルドハイブリッド・システムがついて、加速時にはモーターがアシストするというけれど、その恩恵が受けられているようには思えない。むしろ、全体的にダイレクト感に欠ける原因になってしまっているのではないかとさえ勘繰ってしまった。



足回りのセッティングも気になった。こちらにはS3と違ってダンピング・コントロール付きサスペンションは装備されておらず、一発決めのものだったが、それが決して特別に硬いわけではないのに、妙にゴツゴツと路面の振動を伝えてくる、あまり快適とは言い難いチューニングになっていたのである。ひょっとすると、高速道路などに乗ってかなりの速度を出すとピタッとピントが合って素晴しい乗り心地になるのかも知れないが、箱根の山道を走っている限りで言うと、硬いのか柔らかいのか中途半端な感じが否めなかった。

全体として、私には見た目のカッコよさに走りが追いついているとは思えなかったのだ。S3があまりにも素晴しいデキ映えだっただけに、その落差がとても大きく感じられた。

文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬

■アウディA3スポーツバック1stエディション 
駆動方式 エンジン・フロント横置き前輪駆動
全長×全幅×全高 4345×1815×1450mm
ホイールベース 2635mm
車両重量 1320kg(前軸810kg:後軸510kg)
エンジン形式 直噴直列3気筒DOHCターボ
排気量 999cc
ボア×ストローク 74.5×76.4mm
最高出力 110ps/5500rpm
最大トルク 200Nm/2000-3000rpm
トランスミッション デュアルクラッチ式7段自動MT
サスペンション(前) マクファーソン式ストラット/コイル
サスペンション(後) トレーリングアーム/コイル
ブレーキ(前後) ディスク
タイヤ(前後) 225/40R18
車両本体価格(税込み) 453万円

(ENGINE2021年8月号)

無料メールマガジン会員に登録すると、
続きをお読みいただけます。

無料のメールマガジン会員に登録すると、
すべての記事が制限なく閲覧でき、記事の保存機能などがご利用いただけます。

いますぐ登録

タグ:

advertisement

PICK UP



RELATED

advertisement