2021.08.16

CARS

フィオラノ・ラップタイムが物語るフェラーリ296GTBの驚くべき実力

6気筒エンジンを積んだフェラーリのロードカーがついにその全貌を現した。それはディーノの復活でもない、大方の予想を超えた高性能モデルだった。

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フェラーリのバッジをつけた初のV6市販モデル

マラネッロの伝統に則って車名を解読すれば、2.9リッターの6気筒エンジンを積んだグラン・トゥーリズモ・ベルリネッタ。そう、名前だけを見ればあの名馬を思い出す。ディーノ206&246GT……。

ここ数年マラネッロが6気筒モデルを開発していることは公然の秘密であった。それゆえディーノ復活で新たなエントリー・シリーズ登場、という噂もあった。しかし新型296GTBはディーノの復活でもエントリー・モデルでもない。跳ね馬エンブレムをつけた初めての6気筒ロードカーは予想を大きく上回る高性能モデルとして誕生したのだ。

内装デザインはSF90譲り。モダン・ラグジュアリー路線で、最新のインフォテイメントなども備える。

跳ね馬のスポーツモデル・ヒエラルキーを理解する手っ取り早い方法は、マラネッロが公式に発表するフィオラノのラップタイムをランキングにしてみることだ。ちなみにスポーツモデルとは完全2シーター・クーペのことで、4シーターやローマ、ポルトフィーノM、そして一部スパイダー仕様も含まない。フィオラノとは一周約3キロの専用サーキット名だ。

296のラップタイムは1分21秒。812スーパーファストやF8トリビュート、さらには488ピスタも凌駕する。これより速い現行型は812コンペティツィオーネとSF90ストラダーレのみ。

これで296の立ち位置がはっきりした。マラネッロは全く新しいレンジというが、将来的には3モーター・ハイブリッドとなってトップ・オブ・レンジへと昇格したV8ミドの代わりに、ブランドの大黒柱的存在になるだろう。

新開発F163エンジンは教科書通りに最もコンパクト(特にエンジン長)な設計となるバンク角120度を採用。谷間にターボチャージャー2機を挟むホットVターボだ。このV6と8DCTとの間に電気モーターを挟む。

コンパクトな設計のエンジン

バンク角120度のV6を新開発。バンク内にタービンをレイアウトするいわゆるホットVターボとし、できるだけ短くコンパクトに、しかも重心を低くした。単体の最高出力は663ps。リッターあたり221psは跳ね馬のロードカー史上最強。SF90と同様8速DCTとエンジンとの間にアキシャルフラックス式電気モーターを挟み、後輪を駆動する(SF90はフロントも駆動)。リアモーターの出力は167psと強大で、これに限って言えばSF90用の一割増し。

EV航続距離25km、電動最高速度135km/hは7.45kWhという比較的大きなバッテリーの恩恵だ。電動システムによる重量増は150kg前後とみられ、それを相殺するためにも大きな出力のモーターが必要だった。

軽量でさらに高性能なミシュランタイヤを履くアセット・フィオラノパッケージも用意。

注目すべきは短いエンジンを積んだことによってホイールベースをF8より50mm短くできたこと。最新のシャシー制御技術も含めて、その走りには俄然、期待が膨らむ。もっともその凄さもまたフィオラノ・ラップタイムが物語っていると言えるのだけれど。



文=西川淳 写真=フェラーリ

(ENGINE2021年9・10月号)

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