2021.08.22

CARS

1000馬力のフェラーリSF90ストラダーレに試乗!  まったくの新感覚、けれど紛れもなくフェラーリだ!!

スクーデリア・フェラーリ創立90年を讃えた名称を持つ新型フェラーリは、V8エンジン+3基の電気モーターで武装し、システム最高出力1000psというレーシング・カー顔負けの高性能を誇る。その走りを試す時がようやくやってきた。

軽量化されたアセット・フィオラノ


そのモンスター・マシンは東京・六本木にある高層ビルの地下深くに、真っ赤なカバーをかけられて眠っていた。約束の時間に訪ねると、フェラーリの広報車両担当者がまるで新型車のローンチのようにスルスルとそのカバーを取り除いていく。と、現れたのはヴェルデ(緑)・ブリティッシュのボディにシルバーの巨大な矢印のアクセント・ラインが入れられたSF90ストラダーレ・アセット・フィオラノ。その雄姿を見て、私は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

思い切りワイド&ローなボディには、見るからにエアロダイナミクスと冷却に効果を発揮するであろう大きな穴が口を開けている。リアのエンジンフードは樹脂製で、リア・スポイラーはカーボン・ファイバー製。よりスポーティ指向の強いドライバーのためのアセット・フィオラノの特別装備だ。ほかにアルミ製のダンパーやチタン製のスプリングとエグゾースト・ライン、カーボン製のドア・パネルやアンダーボディで武装したこの仕様は、標準モデルより40kgの軽量化が図られているという。



ストラダーレという名前がつけられているけれど、こりゃまるでレーシング・カーじゃないか。果たしてシステム最高出力が1000psもあるこんなクルマを普通に走らせることができるのだろうか。押し寄せる不安を振り払いながら、これまたフルカーボン製のバケットシートに腰を降ろす。真横からの写真を見てもらえばわかるように、着座位置はこれまでのミドシップ・モデルよりさらに前に出て、かつ思い切り低い。

と、ここまでは最新フェラーリに乗る時にはいつも感じる期待と緊張に包まれていたのだが、ここから先はまったく勝手が違っていたのだ。

ドライバーが視線を動かすことなく運転に集中できるようにデザインされたインテリア。ステアリング・ホイール上のタッチ式スイッチを操作して必要な情報を液晶メーターに呼び出せる。





フェラーリ初のFFモデル!?

というのも、ステアリング・ホイール上のスタート・ボタンをクリックして背後に搭載されたエンジンに火を入れた、つもりだったのに、聞こえてきたのはV8ツインターボの咆哮ならぬ、“ヒューン”という電子音。ハイブリッド・モードがデフォルトのSF90は、ドライブにシフトしてアクセレレーターを踏んでいくと、“シュルシュルシュル”という音を出しながらまったく静かに、1000psのモンスター・マシンとは思えない“立つ鳥跡を濁さず”ならぬ“跳ね馬跡を濁さず”のマナーの良さで駐車場を後にしたのだった。

そこから地上まで螺旋状のスロープを上がって行く途中、勾配がきつくなったところで右足の力を強めたら、ブォンという雄叫びとともにV8ツインターボが目を覚ました。誰が聞いても紛れもなくフェラーリと判じられる迫力のある音が響き渡り、オッと思わず声を上げてしまった。

でも、せっかくだから行けるところまでEVで走ろうと思って右足を緩めると、再びEV走行に入る。この時点で、メーターパネル内のインジケーターにはEVでの最大走行可能距離である25kmが表示されていた。

シートはフルカーボンにレザー張り。

フロントの荷室はミニマムだ。

地上に出て一般道を走り始めてもずっとEVのままだから、姿が視界に入らない限り、道行く人たちが振り返ることもない。たまたま目撃した人は、無音で走り抜けるレーシング・カーみたいなフェラーリに却ってギョッとしてる感じが見て取れる。

それにしても驚くのは、想像していたよりもずっと乗り心地が良く、呆れるほどスムーズにスルスルと走ることだ。考えてみれば、EV走行時には前にあるふたつの電気モーターで前輪を駆動しているのだから、フェラーリ初のFFモデルに乗っていることになる。まったくの新感覚に、エーッ、ホントかよ、と思ってしまうが、これが現実なのだ。まさかFFのフェラーリに乗る日が来るとは思ってもいなかった。

やがて霞が関ランプから首都高に乗り、3号線に入っていつもの箱根を目指す。時速100kmを超えても特別な加速を要求しない限り、まったくエンジンはかからない。時速135kmまでEVで出せるらしい。結局、多摩川を越え、東京料金所の手前までEV走行してしまった。

F8の3.9リッターから4.0リッターに拡大されるとともに大幅に進化したV8ユニット。

エンジン始動時はほぼ後輪駆動

さて、ここからがお楽しみの時間だ。F8トリブートの3.9リッターからボアを88mmに拡げて4.0リッターになり、シリンダーヘッドも全交換されたV8ツインターボはプラス60psの780psのパワーを発揮する。その一方で素材の見直しなどで25kgの軽量化を図るとともに、両バンクの外側に置かれたタービンの位置を下げるなどして重心も下げてあるという。

また、小型化と10kgの軽量化が図られた新しい8段ギアボックスもF8より15mm低い位置に装着されており、クルマ全体として重心が下がっているのが走っていると感じられる。

パワーフロー・インジケーターを見ていると、エンジンが始動している時にはほとんど後輪駆動で走っていて、急加速を要求した時にのみ後ろの1基のモーターと、さらに必要なら前輪のふたつのモーターが加勢する。しかしそんな時でも、1000psを御しているという感覚はまったくなく、あくまでもイージーにスルスルと加速していく躾の良さに呆気に取られてしまうほどだった。



箱根の山道では、エンジンが停止しないパフォーマンス・モードや、さらにサーキット走行向きのクオリファイ・モードも試してみたが、なるほどコーナリング時には前輪のモーターも加勢してくるから、トルク・ベクタリングで左右の速さを変えて曲がりやすくしているのかも知れない。しかし公道で走っている範囲内では、どんなコーナーでもただただスムーズに駆け抜けてしまうだけで、特別にモーターの介入を感じることはなかった。とにかく驚くほど速く、呆気ないほどにスムーズで、どのモードでも想像以上に乗り心地がいい。けれどエンジンがかかっている時の音や操縦感覚は紛れもないフェラーリのもので、F8トリブートの走りを一気に洗練させたらこうなるのかな、という感じの乗り味と言うのが一番近いかも知れない。



一方、ハイブリッド・モードで走っていると、隙あらば充電してやろうとクルマが身構えていて、少しでも電気がたまってきたら即座にEV走行に入る。高速ランプの螺旋状に曲がった道をEV走行していた時、最初はアンダーステアを感じ(フェラーリなのに!)、アクセレレーターを踏み足していると内側にノーズが入っていく気がすることがあった。そういう微妙な領域でやや違和感を感じたことも付け加えておこう。

半日で237km走り、使ったガソリンは25.25リッター。燃費は9.4km/リッターだ。1000psのフェラーリとしては驚異的な数字と言うべきだろう。

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文=村上 政(ENGINE編集長) 写真=柏田芳敬

■フェラーリSF90ストラダーレ・アセット・フィオラノ
駆動方式 エンジン・ミドシップ縦置き+前後モーター4WD
全長×全幅×全高 4710×1972×1186mm
ホイールベース 2650mm
車両重量(車検証) 1800kg(前軸800kg、後軸1000kg)
エンジン形式 V型8気筒DOHCツインターボ
排気量 3990cc
最高出力&最大トルク 780ps/7500rpm、800Nm/6000rpm
電気モーター(前) 135ps/85Nm×2
電気モーター(後) 204ps/266Nm×1
システム最高出力 1000ps
トランスミッション デュアルクラッチ式8段自動MT
サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル
サスペンション(後) マルチリンク/コイル
ブレーキ(前後) 通気冷却式カーボンセラミック・ディスク
タイヤ(前) 255/35ZR20
タイヤ(後) 315/30ZR20
車両本体価格(税込) 5340万円(標準モデル)+631万4000円

(ENGINE2021年9・10月号)

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