2021.09.27

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思わずひと目惚れする時計「ユリス・ナルダン」篇 モザイク構造を採り入れたブラックセラミックスのケースに注目!

なぜ? と聞かれてもうまく言えないが、一瞬で好きになってしまうことがある。人も時計も。相手が人ならともかく、一体時計のどこに我々はこれほどまでに惹かれるのだろう。容姿端麗なデザインか、才色兼備のメカニズムか、はたまた運命の糸がそうさせるのか。そんな恋の始まりを予感させる、今回は、ユリス・ナルダンのアヴァンギャルドな注目モデルを取り上げ、その魅力を時計ジャーナリストの鈴木裕之氏が解説する。

エクストリーム系のデザインに惚れる、ブランド初の自動巻きトゥールビヨン

多くのブランドが新作発表を差し控えた2020年。この年にユリス・ナルダンが発表した唯一の完全新作が「ブラスト」だ。ブシュロンなどで腕を振るった社内デザイナーのジャン・クリストフ・サヴァティエが手掛けた外装は、エクストリーム系のデザインに注力する近年のユリス・ナルダンを象徴的に表している。ベゼルとミドルケースの間に挟み込まれている、ラグとリュウズガードを一体化させたプレートには、“モザイク構造”と呼ばれる複雑なファセットが盛り込まれている。“折れ”を多用したデザインは、黎明期のステルス戦闘機のような雰囲気だが、驚くべきことに隣り合う面同士で仕上げが変えられているのだ。面の組み合わせが“谷折り”になる方向では、ポリッシュもサティナージュも非常に困難だ。同社初の自動巻きトゥールビヨンとなったUN172は、手巻きトゥールビヨンのUN171がベース。タンデム配置のダブルバレルをシングルバレルに改め、空いたスペースにマイクロローターを重ねている。パワーリザーブ自体は減少しているが、自動巻きであることを考えれば、利便性は向上している。同社の先進性を象徴する「X」のスケルトンブリッジも非常にアイコニックだ。





ブラストの「ココに胸キュン!」

Xモチーフ以上に圧巻なのが、モザイク構造を採り入れたプレート。“折れ”の部分を磨き上げた仕上げ技術がスゴイ! さらにオリジナルのUN171では、ダイアル上部にもうひとつの香箱が収まっていたが、そこにマイクロローターをぴったり重ねる発想にも胸キュンだ。

モザイク構造を採り入れたケースをブラックセラミックスで成形した「ブラック ブラスト」。サテン仕上げが施されたベゼルの他、複雑なファセットにも複数の仕上げが盛り込まれた。虹色に輝くシリシウムパーツに加え、PVDで赤く染め上げられたテンワもメカニカルな魅力を放つ。自動巻き。ブラックセラミックス、ケース直径45mm、50m防水。611万6000円。

文=鈴木裕之 写真=近藤正一

(ENGINE2021年8月号)

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